【遠藤照明】蛍光灯廃止でどうなる?|今後の成長性をわかりやすく解説の話

このタイミングで照明関連株を考えるなら、まず押さえておきたいのが「蛍光灯の終了」です。

すでにニュースなどで見た人もいると思いますが、日本では一般照明用の蛍光ランプが段階的に廃止され、2028年1月1日以降は製造も輸出入も全面的に禁止されます。背景にあるのは、2023年の水俣条約COP5。環境規制としてはかなりインパクトのある決定です。

ただし、ここで誤解しやすいのが「急に蛍光灯が使えなくなるわけではない」という点です。すでに使っているものはそのまま使えますし、在庫の販売や購入もすぐに禁止されるわけではありません。

じゃあ何が起きるのか。
ポイントは、「これから先、蛍光灯が手に入りにくくなる」という事実です。

この“将来不安”によって、企業や施設の更新判断は一気に前倒しされやすくなります。つまり、ゆっくり進んでいたLED化が、ここから加速しやすい環境に入るわけです。

しかも、その対象はまだかなり残っています。業界推計では、日本国内の照明器具は約18.1億台。そのうちLED化されているのは約65%で、残り約6億台以上が蛍光灯などのままです。

ここに電気代の上昇や省エネニーズ、ZEB・ウェルビーイングといった流れが重なると、単なる「LEDへの置き換え」ではなく、照明そのものを見直す動きに変わっていきます。

そして、この変化の真ん中にいるのが遠藤照明です。では、そんな銘柄が最近どんな業績で、どんな戦略を思い描いているかに興味がわきませんか?今回は、そうした背景を踏まえて遠藤照明を分析・整理していきます。

目次

会社概要|遠藤照明のビジネスモデル

遠藤照明は、1967年創業・1972年設立の照明専業メーカーです。
現在は「照明器具の製造販売」を軸に、「省エネ機器のレンタル」や「インテリア家具販売」まで手がけており、単なるメーカーにとどまらない事業展開をしています。直近の2025年3月期は、売上高537億円規模、従業員数は約1,600名。東証スタンダードに上場する中堅の照明企業です。

同社の特徴は、照明業界の変化に合わせて事業を進化させてきた点にあります。
もともとは照明器具の製造からスタートしましたが、その後は店舗照明へと領域を広げ、海外展開も早い段階から進めてきました。

さらに、LED化の流れにもいち早く対応し、2009年にLED照明ブランド「LEDZ」を投入。その後は、無線制御システム「Smart LEDZ」や調光調色シリーズ「Synca」などを展開し、単なる“照明器具”から“空間をコントロールする技術”へと進化しています。

また、理念面でもこの方向性は一貫しています。
同社は「ありがとう創造企業」を掲げ、「エシカルソリューションNo.1リーディングカンパニー」を長期ビジョンとしています。単に明るくするだけでなく、人の健康や感情、空間の価値にまで踏み込む「光の提案」を重視しており、調光・調色や無線制御といった技術は、この思想の延長線上にあります。

つまり遠藤照明は、単なる照明メーカーではなく、「光で空間価値をつくる企業」へと進化してきた会社です。

過去5年の業績と株主還元|業績は回復基調?

以下は、2026年4月26日時点で確認できる最新の本決算である2025年3月期を起点に、過去5年分の連結業績と期末指標を整理したものです。売上高・経常利益・自己資本比率は各期の決算短信、ROE・PBR・PERはIRBANKの期末データを用いています。 

年度 売上高
(億円)
経常利益
(億円)
自己資本比率(%) ROE(%) PBR(倍) PER(倍)
2021年3月期 354.1 19.5 46.6 5.43 0.43 7.9
2022年3月期 406.4 42.5 50.8 11.8 0.49 4.2
2023年3月期 457.3 36.3 55.0 9.4 0.44 4.7
2024年3月期 517.0 57.2 61.5 12.1 0.59 4.9
2025年3月期 537.4 54.1 65.1 10.9 0.46 4.2

年間推移の解説

2021年3月期

2021年3月期は、5年比較のなかで最も低い水準でした。売上高354.1億円、経常利益19.5億円、ROE5.4%と、その後の回復局面の出発点となる年度です。それでも自己資本比率は46.6%を維持しており、厳しい環境下でも財務基盤は一定の安定性を保っていました。

2022年3月期

2022年3月期は回復が鮮明となりました。売上高は406.4億円で前期比約14.8%増、経常利益は42.5億円で同約118.0%増と大きく伸長しています。自己資本比率も50.8%へ改善し、収益・財務の両面で立て直しが進みました。
当期はコロナ影響や部材不足が残るなかでも、既存照明の更新需要の取り込みや大型施設案件、海外(特に英国市場)の拡大が業績を押し上げたと考えられます。

2023年3月期

2023年3月期は、売上高が457.3億円まで伸びた一方で、利益はやや調整局面に入りました。経常利益は36.3億円で前期比約14.6%減、ROEも9.4%へ低下しています。
売上は拡大しているため需要自体は堅調ですが、コスト増や事業構成の変化により利益率が一時的に低下したと見られます。この年度は、次の成長に向けた“踊り場”と捉えるのが適切です。

2024年3月期

2024年3月期は再加速の年となりました。売上高は517.0億円と過去最高を更新し、経常利益は57.2億円で前期比約57.6%増と大幅な増益となっています。ROEも12.1%まで回復し、収益性は大きく改善しました。
背景には、価格改定の浸透や原価低減、販管費の効率化に加え、商業施設やオフィス、大型施設向け需要の拡大があります。また、無線照明制御や高付加価値製品の拡販も利益押し上げに寄与したと考えられます。

2025年3月期

2025年3月期は、売上高が537.4億円まで伸び、引き続き過去最高を更新しました。一方で、経常利益は54.1億円と前期比約5.4%減となり、利益はやや調整しています。ROEも10.9%へ低下しており、利益成長は一服した形です。
ただし、売上は着実に伸びており、事業自体は拡大を続けています。照明器具関連の販売増や環境関連分野の利益拡大、家具事業の黒字化なども確認でき、内容としては安定した成長基調を維持しています。

5年の配当推移

配当についても、過去5年で段階的な引き上げが確認できます。以下は1株当たり年間配当金と連結配当性向です。 

年度 年間配当金(円) 配当性向(%)
2021年3月期 15.0 17.4
2022年3月期 22.5 10.0
2023年3月期 30.0 15.0
2024年3月期 40.0 12.7
2025年3月期 50.0 15.4

この推移から見ると、配当は着実に増えています、配当性向はまだ低めです。
実際、新中期経営計画では連結配当性向30%を目安に、安定的かつ継続的な配当額の向上を目指す方針が明示されており、2026年3月期予想の年間配当は84円まで引き上げられています。

利益成長に加え、株主還元の考え方そのものが一段変わりつつあると見てよいでしょう。 

事業内容|収益構造をわかりやすく解説

遠藤照明グループは、親会社と連結子会社11社で構成されており、事業は大きく3つに分かれています。
「照明器具関連事業」「環境関連事業」「インテリア家具事業」の3本柱です。

この構成を見ると分かる通り、同社は単なる照明メーカーではなく、照明・省エネ・家具まで含めて“空間全体”を扱う企業へと進化しています。

照明器具関連事業(中核)

中核となるのが照明器具関連事業です。

高効率LED器具の開発・製造に加え、無線制御の「Smart LEDZ」調光調色の「Tunable LEDZ」、さらに次世代シリーズの「Synca」などを展開しています。
単に明るくするだけでなく、光の色や強さをコントロールし、空間そのものを演出できる点が特徴です。

提案先も幅広く、商業施設やオフィスに加え、医療・福祉、教育、公共施設までカバーしています。
特に店舗・商業施設向けでは国内トップクラスのシェアを持ち、無線制御照明でも高い競争力を維持しています。
2025年3月期は、売上約480億円・利益約53億円と、グループ全体をけん引する主力事業です。

環境関連事業(ストック型ビジネス)

次に環境関連事業です。ここを担うのが子会社のイーシームズです。

この事業の特徴は、「売り切りではない」点にあります。
LED照明や太陽光発電設備をレンタル形式で提供し、さらに遠隔制御や電力管理、故障検知といったサービスまで一体で提供しています。

つまり、初期投資を抑えながら省エネ化を進めたい企業に対して、設備+金融+運用をまとめて提案できるビジネスモデルです。2025年3月期は売上約102億円、利益約9.6億円と、安定収益源として機能しています。

インテリア家具事業(空間提案の補完)

インテリア家具事業では、「AbitaStyle」ブランドを通じて、ホテルオフィス商業施設向け家具を提供しています。規模としてはまだ小さく、2025年3月期は売上約14億円ですが、前期の赤字から黒字へと転換しました。

この事業のポイントは単体の収益規模よりも、照明と組み合わせた“空間トータル提案”にあります。
照明と家具を一体で提案できることで、より付加価値の高い案件につながりやすくなります。

いま注目したいポイント

足元で特に重要なのは、同社が「照明器具の販売」から一歩進み、ソリューション型ビジネスへ軸足を移している点です。実際に、AIカメラや音響機器と照明を連携させる「SmartLEDZ Connect」、快適性・健康・省エネを組み合わせたオフィス提案、医療向け照明、さらにはレンタル型サービスなど、提案内容は大きく広がっています。

蛍光灯規制によってLEDへの置き換え需要は確実に発生しますが、本当に業績に効いてくるのは、その先にある「制御・演出・省エネを含めた高付加価値提案」の部分です。

業界の環境、将来性|LED化の次に来るものとは

業界環境

現在の照明業界は、ひとことで言えば「新設中心のLED普及期」から「既設更新中心の時代」へ移りつつあります。
かつては蛍光灯や白熱灯からLEDへ置き換わること自体が大きなテーマでしたが、今はすでにLED化がかなり進んでおり、単純な普及拡大だけで市場全体が大きく伸びる段階ではなくなってきています。

しかし、照明市場が終わったわけではありません
むしろ今後の焦点は、すでに設置されている古い照明設備をどう更新していくかに移っています。オフィス、店舗、工場、公共施設などでは、まだ蛍光灯を含む旧来型の設備が多く残っており、これらをいつ、どのような形で入れ替えるかが次のテーマになっています。

ここで大きな転換点になるのが、一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入禁止です。
これによって、蛍光灯が直ちに使えなくなるわけではないものの、将来的な調達不安がはっきりしたことで、更新の検討を先送りしにくくなります。単なるランプ交換ではなく、器具そのものの更新や、照明制御も含めた見直しが進みやすくなる環境に入っていると考えられます。

つまり、いまの照明業界は「LED化が一巡した成熟市場」ではなく、既設更新を軸に次の需要が立ち上がろうとしている過渡期にあると言えます。

業界の将来性とリスク

照明業界の将来性を考えるうえでは、単純なLED器具の販売だけでは足りません。
これから伸びしろが大きいのは、照明を単なる設備ではなく、制御・省エネ・空間演出まで含めたソリューションとして提供する領域です。

背景にはいくつもの追い風があります。
電気料金の上昇脱炭素の流れZEBグリーンビルディングへの対応、健康経営やウェルビーイングへの関心の高まり、さらに建物のスマート化やIoT・AIとの連携です。こうした流れの中では、「明るければよい照明」ではなく、「省エネで、快適で、空間価値を高める照明」が求められるようになります。

そのため、今後の成長テーマは、LED器具そのものの数量増よりも、無線制御、調光調色、空間演出、エネルギーマネジメントといった高付加価値分野に移っていく可能性が高いです。照明業界は成熟産業と見られやすい一方で、こうした分野ではまだ拡大余地があります。

ただし、楽観しすぎるのも危険です。
まず、照明需要は非住宅投資や建設投資の影響を受けやすく、景気や設備投資の流れ次第で案件の動きが鈍ることがあります。さらに、原材料価格や為替の変動は利益率に直接響きやすく、売上が伸びても利益が思ったほど残らない局面も起こりえます。

もうひとつ重要なのは、高付加価値分野の立ち上がり速度です。
市場の方向性自体は間違っていなくても、制御やソリューション提案が想定通りのペースで浸透するとは限りません。企業側が期待するほど早く普及しなければ、成長シナリオにズレが生じる可能性もあります。

つまり照明業界は、安定した更新需要が期待できる一方で、次の成長の本命である高付加価値分野の伸び方には不確実性もある業界だと考えられます。

遠藤照明の立ち位置

こうした業界環境を踏まえると、遠藤照明の立ち位置はかなり分かりやすくなります。
同社は、単にLED器具を売る会社というより、業務用・商業施設向けを中心に、照明器具、制御、演出、省エネ提案までを一体で提供できる数少ない専業上場メーカーです。

特に強みがあるのは、更新需要をただの「入れ替え案件」で終わらせず、より付加価値の高い提案に変えやすい点です。蛍光灯規制によって今後は更新案件そのものが増えやすくなりますが、本当に差がつくのは、その更新をどこまで制御や演出、省エネ、快適性の提案につなげられるかです。遠藤照明は、まさにそこを狙っている会社です。

実際、同社はこれまでにもLED化や無線制御、調光調色といった変化を早い段階から取り込み、単なる器具販売から一歩先に進もうとしてきました。この積み重ねがあるからこそ、今の業界変化にも比較的うまく乗りやすいポジションにあります。

もちろん、更新需要があるだけで自動的に勝てるわけではありません。高付加価値提案がどこまで広がるか、価格競争を避けながら利益を確保できるか、といった課題は残ります。それでも、照明業界の次のテーマが「既設更新」と「ソリューション化」にあるのだとすれば、遠藤照明はその中心に比較的近い場所にいる企業だと言えるでしょう。

こう考えると、遠藤照明は成熟した照明市場の中で、更新需要を高付加価値需要へ変換することで成長を目指す会社と言えます。業界全体が大きく伸びるというより、変化の中で取り分を広げられるかが重要であり、その意味で同社は注目しやすいポジションにあります。

競合比較

遠藤照明を競合比較しようとすると、選定に少し悩みます。
というのも、簡単に調べた限りでは上場企業の中に「業務用照明を主力とする国内専業メーカー」で、きれいに横並びで比べられる会社があまり多くないからです。競合が少ないとも言えますし、市場規模が限られているとも言えます。

そこで今回は、事業が完全に同じ会社だけではなく、光や照明に強みを持つ上場企業の中から、比較対象として見やすい企業を選びました。
売上高 、経常利益 、自己資本比率 、は決算短信を参考に作っています。ROE 、PBR 、PER はIRBANKの期末データを参考に作っています。単位は、売上高・経常利益が「億円」、自己資本比率・ROEが「%」、PBR・PERが「倍」です。

企業 売上高
(億円)
経常利益
(億円)
営業利益
増減率(%)
ROE(%) PBR(倍) PER(倍)
遠藤照明 537.4 54.1 -5.3 10.9 0.46 4.2
星和電機 253.9 17.4 -7.0 6.5 0.56 8.6
小糸製作所 9167.1 491.4 -19.8 7.4 0.83 11.8

星和電機(6748)

星和電機は、道路情報板などの情報表示システム、道路・トンネル照明、産業用照明、ノイズ対策製品、配線保護機材などを手がける電機メーカーです。特に、道路・トンネル・河川などインフラ向けの表示・照明に強みがあり、「防災」「交通安全」「インフラ維持管理」と関係の深い企業です。

小糸製作所(7276)

小糸製作所は、自動車用ヘッドランプを中心とする自動車照明の大手メーカーです。事業内容は、自動車照明器、航空機部品、電子装置・部品などの製造・販売で、グローバルに自動車メーカー向けへ展開しています。自動車の電動化・高度化が進むなかで、ライトは単なる照明ではなく、安全性やデザイン、先進運転支援にも関わる重要部品になっています。

中期経営計画と成長戦略

中期経営計画

遠藤照明は、2026年3月期を初年度とする3カ年の中期経営計画を公表しています。計画期間は2025年度から2027年度で、最終年度は2028年3月期です。

今回の中計の方向性は、長期ビジョンである「エシカルソリューション No.1 リーディングカンパニー」の実現です。その柱として「高付加価値空間創造」「グローバル競争力強化」「事業領域拡大」の3つを掲げ、サステナビリティ経営と企業価値向上で支える構造になっています。

この計画を一言で言うと、照明器具メーカーから、光を軸に空間価値を提供する企業へ進化する取り組みです。単なるLED販売ではなく、調光調色や無線制御、IoT、センシングなどを組み合わせた高付加価値なソリューションの拡大を目指しています。

数値目標は、2028年3月期に売上高610億円営業利益70億円ROE10%以上、SmartLEDZ売上構成比3分の2超、配当性向30%目安です。2025年3月期実績(売上537億円、営業利益49億円)と比べると、売上以上に利益の伸びを重視した計画になっています。

事業面では、国内照明事業が引き続き中心です。
売上は225億円から250億円へ拡大を目指し、SmartLEDZを軸とした調光調色市場の拡張や高付加価値製品の強化、他システムとの連携が進められます。

海外では、英国とアジアが重点地域です。英国では電材卸市場の強化に加え、4LiteによるDIY事業や欧州展開を進めます。アジアでは「sync」や「Synca」を活用し、高付加価値市場の開拓を狙います。

環境関連では、「レンタルプラス」を軸に、遠隔制御や省エネサービス、メンテナンスなどを組み合わせたサービス型ビジネスを拡大します。あわせて、太陽光や省エネ関連商材の強化も進める方針です。

また、今回の中計では資本効率の改善重視されています。PBR1倍割れを課題とし、収益力強化在庫適正化を進めます。具体的には、内製化や部品共通化、海外生産の効率化、AI検査や需要予測による在庫管理の高度化などが挙げられています。

成長戦略の分析

今回の中期経営計画で最も重要なのは、売上規模の拡大よりも、利益率を高める方向に会社が動いている点です。

2025年3月期の実績と比較すると売上は約13%増ですが、営業利益は約43%増を目指す形になります。会社の方針としては、単純な数量拡大ではなく、より利益の出る製品・サービスへの転換のように思えます。

その中心にあるのがSmartLEDZです。SmartLEDZは、照明を無線で制御し、明るさや色を調整できるシステムです。遠藤照明は、これを単なる便利機能ではなく、省エネ、快適性、健康性、空間演出をまとめて提案できる高付加価値商品として位置づけています。

中計でSmartLEDZ売上構成比を57.2%から3分の2超へ引き上げる目標を掲げているのは、会社全体の収益性を高めるための重要な施策だと考えられます。

注目したいのは、遠藤照明が「照明器具を売る会社」から「空間を設計する会社」へ移ろうとしている点です。
たとえば、オフィスでは働きやすさや健康性、商業施設では演出効果や購買体験、ホテルや住宅では居心地の良さが重要になります。単に明るくするだけの照明では価格競争になりやすいですが、空間価値まで提案できれば、利益率を高めやすくなります。

一方で、この戦略には実行面の難しさもあります。
高付加価値照明は、製品力だけでなく、提案力、設計力、施工対応力、導入後のサポートも必要になります。そのため、営業や技術者のスキル、顧客への説明力、導入実績の積み上げが重要です。中計でソリューション人材やDX、データ活用を重視しているのは、この課題を会社も認識しているためだと思います。

海外戦略については、成長余地はありますが、リスクもあります。
イギリスでは既存の販売基盤を活かしつつ、DIYや欧州大陸へ広げる方針です。アジアではハイエンド建築向けにブランドを浸透させる狙いがあります。

ただし、海外は為替、景気、競合、販売チャネルの影響を受けやすく、国内よりも計画通りに進みにくい面があります。特に遠藤照明の場合、過去にも円安や原材料高が利益を圧迫しているため、海外拡大が売上増につながっても、利益として残せるかが重要になります。

環境関連事業は、中長期では面白い分野です。照明レンタルに遠隔操作や省エネサービスを組み合わせることで、売り切り型ではなく、継続的なサービス収益に近い形を作れる可能性があります。これは、照明器具の販売だけに依存しないビジネスモデルへの一歩です。ただし、現時点では主力はあくまで照明器具関連事業であり、環境関連がどこまで利益成長の柱になるかは、今後の実績確認が必要です。

今回の中計で注目したいのは、「PBR1倍割れの改善」をかなり意識しているように見える点です。
配当性向30%目安を掲げたことは、これまでより株主還元を明確にした点で評価できます。また、在庫適正化や収益力強化に踏み込んでいるため、単なる売上拡大計画ではなく、資本効率を改善しようとする姿勢も見えます。

ただし、注意点もあります。2025年3月期時点でROEはすでに11.6%あり、中計目標の10%以上は一見すると高いハードルではありません。むしろ市場が見るべきなのは、ROE10%を守れるかではなく、営業利益70億円を本当に達成できるか、SmartLEDZ構成比を3分の2超まで引き上げられるか、そして配当性向30%目安を継続できるかです。

中計で掲げた、SmartLEDZやSyncaをどれだけ高付加価値商品として広げられるか。海外で売上を伸ばしながら利益を残せるか。在庫やコストを管理して営業利益率を高められるか。この3点が、今後の評価を左右するポイントになります。

企業の強み弱み

強み

業界転換の中心にいるポジション

蛍光灯規制によって照明の更新需要が発生するのは業界全体にとって追い風ですが、重要なのは「その需要をどう取り込むか」です。

遠藤照明は、単なるLED器具の供給にとどまらず、調光調色や無線制御、さらには快適性や省エネといった付加価値提案まで一体で提供できます。
これは、同じ更新案件でも価格競争に陥りやすい単純置き換えではなく、単価・利益率の高い案件へ引き上げやすい構造になっているということです。

また、商業施設や店舗照明での実績が厚く、「空間演出」が求められる領域に強い点もポイントです。単なる設備更新ではなく、“売上や体験価値に直結する照明”として提案できるため、顧客側の投資判断にも入り込みやすい立場にあります。

器具販売に依存しない収益モデルへの進化

もう一つの強みは、ビジネスモデルそのものの広がりです。

同社は照明器具メーカーでありながら、Smart LEDZやSyncaといった制御技術、さらにレンタルやエネルギー管理サービスまで展開しています。
環境関連事業では、初期投資を抑えたい顧客に対して、設備導入から運用まで一体で提供できるため、単発の売り切りではなく継続収益(ストック型収益)を取り込める構造になっています。

さらに家具事業を含めることで、照明単体ではなく「空間全体」での提案が可能になっており、案件単価の拡大や他社との差別化にもつながります。

加えて、自己資本比率60%台・ROE10%台まで改善してきた実績からも分かる通り、こうした構造転換を進めながら財務と収益性を同時に改善してきた点は、単なる理想論ではなく実行力の裏付けがある強みと言えます。

弱み

高付加価値化の実行難易度

同社の成長戦略は明確で、「器具販売からソリューションへ」の転換です。
ただし、この戦略は方向性としては正しい一方で、実行難易度が高い領域でもあります。

制御や調光調色、エネルギー管理といった提案は、顧客にとって導入効果の理解や投資判断に時間がかかりやすく、普及スピードが読みづらい特徴があります。
実際に前中期計画では、無線制御関連の売上比率が目標に届かなかったことからも、市場の立ち上がりは想定より緩やかになりやすいことが確認されています。

つまり、同社の成長は「やるべきことは分かっているが、それをどれだけ早く実現できるか」に大きく依存しており、時間軸のブレが株価や業績に影響しやすい構造です。

景気・コスト環境に左右されやすい収益構造

もう一つの弱みは、外部環境への感応度の高さです。
主力の業務用照明は、オフィスや店舗、工場などの設備投資と密接に連動しており、景気後退局面では案件の延期や縮小が起こりやすい分野です。
また、為替や原材料価格の影響も受けやすく、特に円安局面では仕入コストの上昇が利益を圧迫しやすい構造になっています。

さらに株価面でも、足元ではPBR1倍を下回る水準にとどまっており、市場は同社の利益成長の持続性や高付加価値戦略の実現性を慎重に見ています。

これは裏を返せば評価余地とも言えますが、現状では「実績で成長を証明し続けない限り、評価が上がりにくいフェーズにある」という見方もできます。

まとめ|結局どう見る?

ここまで見てきて思うのは、遠藤照明はこれまでの照明の常識を変えていくことに取り組む会社だという点です。

蛍光灯規制は確かに分かりやすい追い風ですが、それだけで終わる話ではありません。
本当に重要なのは、その更新需要をただのLED交換で終わらせるのか、それとも制御や調光調色、省エネといった「付加価値のある提案」につなげられるかです。

実際、前の中期計画でも売上や利益は伸びていますが、高付加価値分野の広がりは想定よりゆっくりでした。これは、会社の方向性が間違っているというより、新しい市場を広げること自体の難しさをそのまま表しています。

今回の中計は、まさにその延長線上にあります。
売上を大きく伸ばすというよりも、利益をしっかり伸ばす設計になっていて、「どれだけ質の高い案件を増やせるか」がテーマになっています。

今後の注目ポイントとしては、まず蛍光灯の更新需要がどのタイミングでどれくらい動き出すのか。
そして、その中で遠藤照明がどれだけSmartLEDZやSyncaといった高機能案件に結びつけられるかです。

さらに、環境関連事業や海外展開がどこまで広がっていくのかもポイントになります。ここが育ってくると、照明単体の会社から一段階上のビジネスに見え方が変わってきます。

単なる更新需要で終わるのか、それとも照明の価値を広げる会社へ進化できるのか。この変化の進み方が、今後を考えるうえで一番の見どころになりそうです。

投資は自己責任でお願いします。

出典・参考資料

・株式会社遠藤照明「有価証券報告書(2025年3月期)」
・株式会社遠藤照明「決算短信(2025年3月期)」
・株式会社遠藤照明「中期経営計画(2026年3月期〜2028年3月期)」
・株式会社遠藤照明「決算説明資料・IRプレゼンテーション」
・株式会社遠藤照明 公式ホームページ(企業情報・事業内容)
・IR BANK(遠藤照明 財務データ・指標)
・各証券会社・金融情報サイト(株価、指標データ)
・日本照明工業会 公表資料(照明器具ストック・LED化率など)
・環境省「水俣条約COP5関連資料」
・水俣条約(蛍光ランプ規制内容)
・照明市場調査レポート(富士経済など)※中計資料引用ベース

■ 補足
※数値は各期末時点ベースで整理
※複数資料を突き合わせて作成しており、最新情報は各公式資料をご確認ください

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