*追記 最新の決算は下にまとめてあります。
本屋で資産バリュー投資の本を眺めていたとき、低PBRの企業として目に留まったのが丸藤シートパイルでした。会社名にある「シートパイルとは?」と何に使うかわからない所からこの銘柄を調べることは始まりました。
調べてみると、シートパイルは地下工事や河川工事などで土や水を支える鋼矢板のことでした。そうなんだという感じですよね。完成した建物からは見えなくなりますが、工事を安全に進めるために欠かせない資材です。販売するだけでなく、貸し出し、修理し、必要に応じて施工まで行うところに、この会社の特徴があります。
元の記事を公開してから時間が立ち、丸藤シートパイルは2026年3月期に過去最高水準の売上と利益を計上し、創業100周年を迎えました。新しい中期経営計画、5分割、増配、自己株式取得も発表され、単に「資産が多い低PBR企業」と見るだけでは足りなくなっています。
そこで今回は2026年7月18日時点の資料を使い、重仮設という事業の稼ぎ方、資産の中身、利益率の改善、還元方針、次の成長条件を改めて整理して記事を最新の状態にアップデートしました。低PBRの理由を考えながら、会社が掲げるROE8%へどのように近づくのかを見ていきます。
会社概要|そもそもどんな企業?
丸藤シートパイルは1926年創業の重仮設資材会社です。鋼矢板、H形鋼、鋼製山留め材、路面覆工板などを扱い、販売、賃貸、修理加工、施工を組み合わせて建設現場を支えています。東証スタンダード上場で、決算期は3月です。
重仮設とは、工事を進める間だけ必要になる仮設構造物のうち、鋼材を使うものを指します。例えば地下を掘るとき、周囲の土が崩れたり地下水が流れ込んだりしないよう、鋼矢板やH形鋼で壁を作ります。
道路を掘削する工事では、路面覆工板を載せて車や人が通れる状態を保つこともあります。
完成後に撤去して別の現場へ回せる資材が多いため、丸藤シートパイルにとって在庫は単なる売れ残りではありません。何度も貸し出して収益を生む賃貸資産という面があります。ただし、保有量が多すぎたり需要地と保管場所がずれたりすると、資産効率は下がります。資産の多さを強みと見るには、稼働率や利益率も一緒に確認する必要があります。
連結子会社には運送を担うフジ運輸と、工事関連のディ・ケイ・コムがあります。資材を調達し、工場で修理・加工し、現場へ運び、施工する流れをグループ内でつなげられることが特徴です。会社は会計上の事業を単一セグメントとしているため、販売、賃貸、工事ごとの売上や利益を正確に分けて開示してはいません。
過去5年の業績推移|利益率の改善を確認
2022年3月期から2026年3月期までの連結実績です。金額は億円。ROEはIR BANKの対象期実績、PBRとPERは各3月期の最終取引日終値に対応する期末値を使っています。2026年4月1日に1株を5株へ分割していますが、倍率自体への影響はありません。
| 年度 | 売上高 (億円) | 営業利益 (億円) | 経常利益 (億円) | 自己資本比率 (%) | ROE (%) | PBR (倍) | PER (倍) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年3月期 | 318.76 | 5.59 | 9.65 | 63.4 | 2.73 | 0.25 | 9.25 |
| 2023年3月期 | 351.04 | 10.64 | 15.48 | 64.5 | 3.68 | 0.26 | 7.12 |
| 2024年3月期 | 345.43 | 14.10 | 19.26 | 68.8 | 4.60 | 0.36 | 7.80 |
| 2025年3月期 | 355.85 | 15.79 | 20.77 | 70.3 | 4.96 | 0.32 | 6.51 |
| 2026年3月期 | 403.40 | 21.10 | 26.63 | 71.2 | 6.00 | 0.54 | 9.20 |
売上高は5年で318.76億円から403.40億円へ増えました。より注目したいのは営業利益で、5.59億円から21.10億円へ約3.8倍になっています。2022年3月期の営業利益率1.8%に対し、2026年3月期は5.2%です。売上規模の拡大だけでなく、単価改善、採算を重視した受注、工事・加工の伸長が利益率に表れています。
2024年3月期は売上高が減った一方、営業利益は増えました。数量だけを追わず採算を改善できたことが分かります。2026年3月期は売上高が前期比13.4%増、営業利益が33.6%増となり、増収率を上回る利益成長でした。売上を増やしながら営業利益率も上げたことが、直近5年で最も大きな変化です。
財務も安定しています。自己資本比率は63.4%から71.2%へ上昇し、2026年3月期末の純資産は327.33億円でした。借入に強く依存せず投資と還元を進められる余地があります。ただし、財務が厚いほど「その資本でどれだけ利益を生むか」が問われます。
ROEは2.73%から6.00%へ改善しましたが、新中計の目標は8%以上です。PBRは2026年3月末でも0.54倍でした。低PBRの背景には資産価値に対する割安さと、資本効率がまだ目標に届かないことの両方があります。「純資産より時価総額が小さい」という一点だけではなく、ROEの改善が続くかを見る必要があります。
1株当たり純資産は、5分割を過年度に反映した基準で2022年3月期の1,533.95円から2026年3月期の1,898.46円へ増えています。利益を積み上げたことに加え、保有有価証券や退職給付に関する評価差額も純資産を押し上げました。帳簿上の純資産が増えても、すべてが現金として自由に使えるわけではない点には注意が必要です。
土地、賃貸資材、投資有価証券を持つ会社では、BPSの増加だけでなく、それぞれの資産が営業利益とキャッシュフローへどれだけ貢献したかを確認することが重要です。資産を売却すれば一時的に利益や現金は増えますが、本業の収益力が改善したとは限りません。継続的な利益率改善と資産入れ替えを分けて評価します。
配当推移と株主優待|累進配当へ方針変更
1株配当は2026年4月1日の1対5株式分割を過年度にも反映した比較値です。2026年3月期の実際の期末配当は分割前200円で、分割調整後は40円になります。
| 年度 | 年間1株配当 (円) | 配当性向 (%) |
|---|---|---|
| 2022年3月期 | 16 | 38.2 |
| 2023年3月期 | 18 | 31.0 |
| 2024年3月期 | 22 | 28.7 |
| 2025年3月期 | 26 | 30.3 |
| 2026年3月期 | 40 | 36.2 |
配当は5期連続で増え、2026年3月期は記念配当を含めて40円になりました。同じ期には8.98億円の自己株式取得も実施し、配当と合わせた総還元額は13.63億円、総還元性向は81.9%です。これは毎年続く水準ではなく、創業100周年と自己株式取得が重なった点を分けて考えます。
2027年3月期からは、配当性向35%以上、分割後1株38円を基軸とする累進配当へ変更しました。累進配当は原則として減配せず、維持または増配を目指す考え方です。2027年3月期予想は38円で、記念配当を含む前期40円から表面上は2円減りますが、普通配当部分と比べると会社が基準を引き上げたことが分かります。
株式分割も見方を変える材料です。2026年4月1日に1株を5株へ分割したことで、理論上の最低投資金額は5分の1になりました。分割だけで会社の価値やPBRが変わるわけではありませんが、個人投資家が参加しやすくなり、売買の流動性や情報への関心が高まる可能性があります。記事内の配当とEPSは、分割前後を混同しないよう調整後の数値を基本にしています。
分割、累進配当、自己株式取得は別々の施策ではなく、投資単位を下げながら還元方針を明確にし、資本市場からの評価を高めようとする一連の資本政策として読む必要があります。その効果は出来高だけでなく、PBR、株主構成、ROEの変化で確認します。
利益成長、累進配当、機動的な自己株式取得を組み合わせる方針は、低PBR改善に向けた重要な変化です。ただし、還元を増やすだけではROEは持続的に上がりません。成長投資で営業利益を増やせるかも同時に確認したいところです。
株主優待
2026年7月18日時点で株主優待制度はありません。還元は配当と自己株式取得が中心です。優待の有無ではなく、38円を基軸とした累進配当が利益水準に無理なく支えられるかを見ます。
決算内容とリスク|好調な利益と資産効率を見る
決算で良かった点
2026年3月期は売上高403.40億円、営業利益21.10億円、経常利益26.63億円、親会社株主に帰属する当期純利益19.65億円でした。前期比ではそれぞれ13.4%増、33.6%増、28.2%増、28.1%増です。前中計の最終目標だった売上高400億円、経常利益20億円を前倒しで達成しました。
売上総利益率は前期の18.2%から19.4%へ上昇し、営業利益率も4.4%から5.2%へ改善しました。鋼材や外注費が上がりやすい環境で利益率を伸ばせたことから、単価改善と採算管理が数字に出ています。営業キャッシュフローも14.47億円から22.55億円へ増えました。
決算で気になった点
2027年3月期の会社予想は売上高410億円、営業利益20億円、経常利益26億円、純利益17.5億円です。売上は増える一方、各利益は減益を見込んでいます。人件費、外注費、設備投資、IT投資などを織り込んだ慎重な計画ですが、直近の利益率改善がいったん止まる想定です。
もう一つは資産の大きさです。2026年3月期末の建設資材は141.42億円で、総資産459.55億円の約31%を占めます。賃貸で繰り返し使える資産だからこそ保有する意味がありますが、需要が弱まると稼働率が落ち、保管、修理、運送のコストが重くなります。在庫金額と売上だけでなく、営業利益率と営業キャッシュフローを一組で見ます。
有価証券報告書やリスク面で見たい点
有価証券報告書は、国内建設市場への依存、鋼材価格や労務費など建設コストの変動、安全・品質、法令順守、人材確保を主なリスクとして挙げています。公共投資や都市再開発が続いても、工期の遅れや建設会社の受注姿勢によって資材需要の時期は変わります。
工場や現場での事故は、人的被害だけでなく工事停止、補償、信用低下につながります。会社が「安全・安心を守る」を最重要課題に置くのは、理念だけではなく事業継続の前提だからです。協力会社を含む手順順守、設備点検、教育の実効性を確認します。
また、2026年3月期は投資活動による支出が15.95億円へ増えました。工場設備、自動化、システム投資は将来の生産性を高める一方、効果が出るまで減価償却費が先に増えることがあります。投資額の大きさではなく、加工能力、稼働率、利益率へどう結びついたかを追う必要があります。
投資有価証券は2026年3月期末に21.93億円で、前期の12.90億円から増えました。時価上昇による評価差額は純資産を押し上げますが、本業で使う資産とは性格が違います。取引関係の維持に必要な保有か、資本効率を下げる政策保有かを会社が毎年検証し、不要な保有を成長投資や還元へ回せるかもPBR改善の論点です。
低PBR企業の分析では、含み益の存在を期待するだけでなく、会社が資産を保有し続ける理由、売却の基準、売却資金の使い道まで確認して初めて、資産価値が株主価値へつながるかを判断できます。新中計のキャッシュアロケーション開示が具体化するかを追います。
事業内容|販売・賃貸・工事をつなげる
丸藤シートパイルは単一セグメントのため、以下は開示された事業説明に沿った収益源の整理です。部門別利益を推測せず、どの機能が顧客価値と資産効率に関わるかを見ます。
重仮設資材の販売
鋼矢板、H形鋼、鋼製山留め材、路面覆工板などを建設会社へ販売します。大型案件では必要な規格、数量、納期をそろえる調達力が重要です。鋼材価格が上がったときに販売価格へ転嫁できるか、仕入れの時期と数量を適切に管理できるかが利益率を左右します。
賃貸と修理加工
仮設資材は工事が終われば返却され、点検・修理して次の現場へ貸し出せます。一つの資材から複数回の賃貸収入を得られる点がストック型に近い強みです。自社工場で修理加工できれば、品質を保ちながら再利用回数を増やせます。
一方、需要のある地域へ資材を運ぶ費用や、稼働していない期間の保管費もかかります。多く持つことより、必要な場所で高い回転率を維持することが大切です。新中計が需要地へのリソース投入と材料の量・価格管理を掲げるのは、この資産効率を改善するためです。
工事・高付加価値加工
資材を供給するだけでなく、山留めや鋼構造物工事の設計・施工、特殊加工も行います。工事まで請け負えば売上機会が広がり、顧客が調達先と施工会社を別々に手配する負担を減らせます。新中計では高付加価値工法、特殊加工、適切な原価管理を伸ばす方針です。
工事は人と技術への依存度が高く、施工能力、安全管理、外注単価がボトルネックになります。売上を増やしても採算管理が弱ければ利益は残りません。受注高だけでなく、営業利益率と工事損失引当金、安全実績を確認します。
運送と周辺機能
重く長い鋼材を現場へ届け、返却品を工場へ戻す物流は事業の一部です。連結子会社のフジ運輸を持つことで、資材の手配と運送をつなげられます。ただし、ドライバー不足、燃料費、働き方規制の影響を受けます。新しい運送システムで配車と積載を効率化できるかが、利益と協力会社の負担の両方に関わります。
業界の将来性|更新需要と担い手不足を考える
業界環境
重仮設資材の需要は、公共土木、都市再開発、物流施設、工場、鉄道、河川、港湾など幅広い建設投資から生まれます。工事の最終用途が違っても、地下を掘る、土を支える、仮設道路を作る工程では鋼矢板やH形鋼が必要になります。
日本では橋、道路、上下水道など高度成長期に整備したインフラの更新が続きます。災害の激甚化に備える国土強靱化も長期テーマです。都市部では建物の建て替えや大型再開発が進み、限られた敷地で安全に地下工事を行う技術が求められます。
将来性とリスク
需要面には追い風がありますが、建設業界は人手不足、資材高、工期の長期化に直面しています。案件があっても、技術者や協力会社、運送能力が足りなければ施工できません。鋼材価格が急上昇し、価格転嫁が遅れれば利益率も下がります。
一方で、人手不足は自動化やBIM/CIM、標準化への投資を促します。丸藤シートパイルは工場自動化、新基幹システム、運送システム、作図業務の高度化を計画しています。需要の増加だけでなく、少ない人数で安全に処理できる能力が将来の競争力になります。
重仮設資材を回収して修理し、次の現場で再利用する仕組みは、資源循環の観点でも意味があります。新品鋼材の製造量を抑えられれば、顧客の環境負荷低減にもつながります。ただし、再利用回数やCO2削減量を具体的に示さなければ、環境面の強みを業績へ結びつけて評価しにくいのも事実です。
今後、資材ごとの再利用回数、稼働率、廃棄削減、輸送効率などのKPIが開示されれば、環境対応と資産効率が同じ方向へ進んでいるかを投資家も検証しやすくなります。循環型の事業モデルを、理念ではなく数値で示せるかに注目します。
その中での立ち位置
丸藤シートパイルはジェコスより売上規模が小さい一方、創業100年の顧客基盤、全国の支店と工場、販売・賃貸・加工・施工・運送を一体で扱う体制があります。規模だけで正面から競うのではなく、地域ごとの資材配置、対応速度、高付加価値工事で選ばれる必要があります。
財務余力は大きく、自己資本比率71.2%です。新中計では5年間100億円程度の投資を掲げています。守りの強さを維持したまま、資産効率と利益率を上げられるかが現在の立ち位置を決めます。
競合比較|同業他社と比べる
直接競合のジェコス、圧入工法と杭打機を持つ技研製作所、橋梁・インフラ構造物の横河ブリッジHDと比べます。業績とROEは2026年3月31日時点で確認できる最新通期実績を基本とし、技研製作所だけ2025年8月期です。PBR・PERは全社2026年3月31日終値対応値です。
| 企業 | 対象期 | 売上高 (億円) | 営業利益 (億円) | 営業利益 増減率(%) | ROE (%) | PBR (倍) | PER (倍) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 丸藤シート パイル | 2026年3月期 | 403.40 | 21.10 | +33.6 | 6.00 | 0.54 | 9.20 |
| ジェコス | 2026年3月期 | 1,156.80 | 80.12 | +16.9 | 8.50 | 0.82 | 10.00 |
| 技研製作所 | 2025年8月期 | 263.37 | 25.66 | ▲22.8 | 3.69 | 1.26 | 22.41 |
| 横河ブリッジ HD | 2026年3月期 | 1,439 | 135 | 約▲19.2 | 6.45 | 0.87 | 13.58 |
企業紹介
・丸藤シートパイル
重仮設資材の販売、賃貸、修理加工、施工を扱います。4社で最もPBRが低く、自己資本比率は高い一方、ROEはジェコスを下回ります。
・ジェコス
重仮設資材と工事を中心とする直接競合です。売上規模は丸藤の約2.9倍で、2026年3月期ROEは8.5%。国内重仮設のほか建設機械、海外、鉄構加工・橋梁へ領域を広げています。
・技研製作所
杭を地中へ静かに押し込む圧入工法と機械を持ち、技術・知財型の色が強い会社です。営業利益率は丸藤より高いものの、2025年8月期は減収減益となり、ROEも3.69%へ低下しました。
・横河ブリッジHD
橋梁、鉄骨、インフラ構造物を手掛けます。重仮設の直接競合ではありませんが、国土強靱化とインフラ更新という同じ需要テーマを持ち、規模と利益率の差を確認しやすい比較対象です。
比較
丸藤シートパイルの営業利益率は5.2%で、ジェコスの6.9%、技研製作所の9.7%、横河ブリッジHDの9.4%を下回ります。事業構成が違うため単純比較はできませんが、資産を多く持つ会社として、利益率と資産回転をもう一段高める余地があります。
PBRは丸藤0.54倍、ジェコス0.82倍、技研製作所1.26倍、横河ブリッジHD0.87倍です。丸藤は最も低く、ROE6.0%もジェコス8.5%を下回ります。低PBRの修正には、利益成長だけでなくROE8%へ向かう具体的な進捗が必要です。
技研製作所は利益が減った期でもPBR1倍を超えています。独自工法や海外展開への成長期待が評価に含まれていると考えられます。丸藤も重仮設周辺の新規事業や高付加価値工法を収益の柱に育てられれば、資産価値だけではない評価につながります。
中期経営計画と成長戦略|ROE8%への道筋
中期経営計画
- 2031年3月期売上高470億円
- 営業利益30億円
- ROE8%以上
- 5年間で100億円程度の成長投資
- 配当性向35%以上、38円基軸の累進配当
前中計は2026年度の売上高400億円、経常利益20億円を目標としていましたが、2026年3月期に売上高403.40億円、経常利益26.63億円を達成しました。会社は前中計を前倒しで終え、2027年3月期から5年間の新計画へ移っています。
売上高470億円は2026年3月期から年平均約3%の成長で届く水準です。一方、営業利益30億円には年平均約7%の成長が必要で、売上以上に利益率を上げなければなりません。営業利益率は5.2%から約6.4%へ引き上げる計算です。
ROE8%は、利益を増やすことと資本を適切に配分することの両方で目指します。累進配当と自己株式取得は分母となる自己資本の膨張を抑え、設備・IT・新規事業への投資は分子となる利益を増やす役割です。還元だけに頼らず、営業利益30億円を実現できるかが計画の質を決めます。
成長戦略
価格と資材配置を磨く
会社は適切な単価改善、需要地へのリソース投入、材料の量と価格の管理を続けます。これは派手な新規事業ではありませんが、現在の資産をより高い利益率で回す基本施策です。地域別の需要予測を資材配置と営業活動へ反映できれば、運送距離、遊休期間、緊急調達を減らせます。
工事・加工の付加価値を上げる
高付加価値工法や特殊加工は、単純な鋼材販売より技術とノウハウが利益に反映されやすい分野です。インフラ更新、国土強靱化、BIM/CIMに対象を絞り、営業体制と施工体制を強化します。自社ブランドの工法が定着すれば、価格だけで比較されにくくなります。
工場・物流・ITへ投資する
工場では加工整備能力と効率を高め、自動化で担い手不足へ対応します。新基幹システム、運送システム、作図業務の高度化も計画しています。投資は5年で100億円程度と大きく、2026年3月期総資産の約22%に相当します。
投資判断では、設備が増えたかではなく、1人当たり売上、加工時間、資材回転、運送効率、安全実績が改善したかを見たいところです。投資先と効果の開示が増えれば、中計の進捗を評価しやすくなります。
四半期ごとの確認では、売上高と営業利益だけでなく、建設資材残高、自己資本比率、営業キャッシュフローの変化を並べます。繁忙期や大型案件の進捗で一時的に売上債権と在庫が増えることはありますが、それが長期化すれば現金回収が遅れます。利益が伸びても営業CFが弱い状態が続く場合は、成長の質を再点検します。
新しい決算短信が出るたびに、利益率、資材残高、営業CF、投資額、還元額を同じ順番で確認すれば、中計の進捗を売上目標だけに偏らず追跡できます。週末リライトでも、この四半期ごとの変化を更新対象にします。
強みと弱み|投資前に見たいポイント
強み
創業100年の重仮設ネットワーク
丸藤シートパイルは1926年から重仮設に関わり、全国の支店、工場、顧客、協力会社との関係を築いてきました。資材は規格品でも、必要な数量を期日までに現場へ届け、使用後に回収して再整備する運用力には経験差が出ます。販売、賃貸、加工、施工、運送をつなぐことで、顧客の手配負担を減らし、複数の収益機会を持てる点が強みです。
高い財務安定性
2026年3月期の自己資本比率は71.2%、純資産は327.33億円です。景気や案件時期で需要が揺れ、資材在庫を多く持つ事業では、財務の厚さが不況耐性になります。新中計の100億円投資、累進配当、自己株式取得を同時に考えられるのも、この財務基盤があるためです。ただし、現金をためるだけではROEが下がるため、成長投資と還元の配分が重要です。
長期のインフラ需要との接点
重仮設資材は建物完成後に目立ちませんが、地下工事、河川、道路、橋梁、上下水道、再開発の初期工程で使われます。国土強靱化と老朽インフラ更新は数年で終わるテーマではありません。一つの用途に依存せず、幅広い建設投資の足元を支えることが需要面の強みです。
弱み
資産が多くROEが上がりにくい
豊富な資材と土地は供給力と財務安全性を支えますが、利益を生まない期間は資本効率を下げます。2026年3月期ROEは6.0%まで改善したものの、中計目標8%、直接競合ジェコス8.5%には届きません。需要予測、地域配置、売却・入れ替えを通じて遊休資産を減らし、利益成長と還元を組み合わせる必要があります。
鋼材・外注・物流コストの影響
鋼矢板やH形鋼は市況価格の影響を受け、工事と運送は人件費、燃料費、外注単価に左右されます。価格転嫁が遅れれば、受注が増えても利益率は下がります。会社は単価改善を進めていますが、2027年3月期は増収減益予想です。次の四半期では売上進捗より、売上総利益率と営業利益率を優先して見ます。
人材と安全が成長上限になる
工場、施工、運送はいずれも人が必要です。大型案件が増えても技術者、作業員、ドライバーが足りなければ売上へつながりません。無理な稼働は事故リスクも高めます。自動化、IT、人事制度、協力会社との共生を進め、安全を落とさず処理能力を増やせるかが成長の条件です。
株価シナリオ|見直される条件を考える
良いシナリオ
国土強靱化、再開発、インフラ更新の需要が続き、単価改善と高付加価値工事で営業利益率が上がるシナリオです。設備・IT投資により資材回転と生産性が改善し、2031年3月期の営業利益30億円、ROE8%へ近づけば、PBR0.5倍台に残る慎重な評価が見直される可能性があります。累進配当と自己株式取得が資本政策への信頼を補強します。
中立シナリオ
建設需要は堅調で売上は伸びるものの、人件費、外注費、鋼材、設備投資も増え、営業利益率は5%前後で横ばいとなるシナリオです。配当は維持されますがROEの改善は緩やかで、PBRは低いまま推移します。安定配当は評価されても、成長期待が十分に乗らない状態です。
悪いシナリオ
民間建設投資の減速や大型案件の遅延で資材稼働率が落ち、鋼材・外注・物流コストの上昇を価格へ転嫁できないシナリオです。設備投資後に需要が弱まれば減価償却負担も重くなります。営業利益とキャッシュフローが減少し、累進配当の余力が狭まれば、低PBRが長期化する可能性があります。重大事故や品質問題も業績と信用へ直接影響します。
全体まとめ|調べて感じたこと
最初に丸藤シートパイルを知ったきっかけは、資産バリュー投資の本で見た低PBRでした。今回あらためて調べると、資産の多さだけでなく、その資材を何度も貸し出し、加工し、施工までつなげる運用力が会社の本質だと感じます。
2026年3月期は売上高403.40億円、営業利益21.10億円となり、前中計の目標を前倒しで達成しました。営業利益率、ROE、配当も5年前より改善しています。創業100周年に合わせた5分割、増配、自己株式取得、新中計によって、株主還元と資本効率を意識する姿勢も以前より明確です。
一方、PBR0.54倍を「資産があるから安い」とだけ見るのは危険です。建設資材は稼働して初めて収益を生み、自己資本が厚いほどROEを高める難易度は上がります。低PBRが見直される鍵は、資産を利益へ変える速度です。
新中計は2031年3月期に売上高470億円、営業利益30億円、ROE8%以上を目指します。売上目標より、営業利益率を約6.4%へ上げることと、5年間100億円の投資効果を示すことが重要です。累進配当だけでなく、工事・加工、自動化、IT、新規事業が利益を生むかを確認します。
次の2027年3月期第1四半期では、売上高の進捗よりも、営業利益率、価格改善、建設資材在庫、営業キャッシュフローを見たいです。2027年3月期は会社が増収減益を予想しているため、コスト増をどこまで吸収できるかが最初の確認点になります。
丸藤シートパイルは、目立たない場所で工事の安全を支える会社です。安定した財務と長期需要を土台に、資本効率を上げられるかを四半期ごとに追いたい企業だと考えてい見直される日を信じて、じっくり付き合うのも悪くないかもしれません。
2026年3月期 通期決算アップデート
対象期間:2025年4月1日~2026年3月31日。2026年5月14日発表の連結決算です。
2026決算ハイライト
売上高は403億40百万円(前期比13.4%増)、営業利益は21億10百万円(33.6%増)となり、増収増益でした。採算重視の営業、適正な価格改善、高付加価値工法の提案が利益拡大につながっています。
| 主要指標 | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 40,340百万円 | +13.4% |
| 営業利益 | 2,110百万円 | +33.6% |
| 経常利益 | 2,663百万円 | +28.2% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 1,965百万円 | +28.1% |
| 自己資本比率 | 71.2% | +0.9ポイント |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 2,255百万円 | 前期は1,447百万円 |
通期予想と進捗
2027年3月期の会社予想は、売上高410億円(前期比1.6%増)、営業利益20億円(5.2%減)、経常利益26億円(2.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益17億50百万円(11.0%減)です。売上は小幅増収を見込む一方、資機材・労務費の上昇や人手不足などを踏まえ、利益は慎重な見通しです。
配当・株主還元
2026年3月期の期末配当は、株式分割前ベースで1株200円(うち創業100周年記念配当10円)です。2026年4月1日に1株を5株へ分割しており、2027年3月期の年間配当予想は分割後ベースで1株38円、予想配当性向は38.6%です。2026年3月期には自己株式取得へ8億98百万円を支出しました。
業績背景
公共投資や民間設備投資が底堅く推移する中、採算重視の営業活動、適正価格の確保、高付加価値工法の提案を強化しました。茨城工場では覆工板の自動整備ラインが2025年12月に本格稼働し、整備能力と生産性の向上を進めています。一方、建設コストの上昇や人手不足、工事の着工・進捗遅れは引き続き確認点です。
セグメント別動向
同社グループは、建設基礎工事用の鋼製重仮設資材などの販売・賃貸と、工事・加工・運送を一体で提供する単一セグメントです。そのため推測による事業別利益は作らず、販売・賃貸・付帯工事を含む全社実績として確認します。
決算まとめ
2026年3月期は売上・各利益とも前期を上回り、旧中期経営計画の売上高400億円、経常利益20億円という目標を前倒しで達成しました。次期は増収ながら減益予想のため、新しい中期経営計画の投資が将来の収益力につながるか、価格改善を続けながらコスト上昇を吸収できるかが確認点です。
公式資料:2026年3月期 決算短信 / 会社公式IRライブラリ
前回の決算
2026年3月期 第2四半期(中間期、2025年4月1日~2025年9月30日)
売上高185億86百万円(前年同期比11.1%増)、営業利益8億33百万円(31.4%増)、経常利益11億15百万円(29.0%増)、親会社株主に帰属する中間純利益7億56百万円(33.3%増)でした。自己資本比率は71.8%です。
採算重視の営業、適正価格の確保、高付加価値工法の提案により、売上高以上に利益が伸びました。会社は当時、通期予想を据え置いていました。
公式資料:2026年3月期 第2四半期決算短信


投資は自己責任でおねがいします。

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