普段、道路を走っていると、舗装の表面はどれも同じように見えませんか。しかし実際には、交通量や気候、傷み方に合わせて材料と工法が選ばれているそうです。最近そんなニュースを見たので、道路の銘柄を少し調べていてニチレキグループ(5011)に興味を持ちました。ニチレキは、道路舗装を材料、施工、調査診断の三つから支える会社です。
業績面を軽くみると、2026年3月期は売上高がほぼ横ばいだった一方、営業利益とROEは低下しました。財務は厚く、配当利回りも目に留まりますが、低PBRだけで評価するより、道路維持補修の需要を利益率と資本効率の改善へつなげられるかが気になります。
この記事では2026年7月18日時点の公式資料を基に、同社を見る中心は、安定需要の有無ではなく、材料と施工の強みを継続的な利益へ変えられるかだと考え、業績、配当、事業、競合、中期経営計画、株価シナリオを順に整理します。
会社概要|道路舗装を材料と施工の両面から支える会社
ニチレキグループは、道路舗装材料やアスファルト応用加工製品を中心に、道路の舗装、補修、維持管理に関わる事業を展開しています。会社名だけを見ると、素材メーカーのように感じるかもしれませんが、実際には材料の供給だけでなく、施工、調査、診断、維持補修まで関わる会社です。
道路舗装の世界では、単にアスファルトを売れば終わりではありません。
道路の使われ方、交通量、気候、損傷の状態、工事の制約、材料の性能、施工品質までが関係します。舗装は完成した瞬間がゴールではなく、使われながら傷み、補修され、また使われるインフラです。そのため、材料を知っていることと、現場を知っていることの両方が価値になります。
同社の特徴は、道路材料と施工の接点にいることです。材料だけを売る会社なら価格競争に巻き込まれやすく、施工だけの会社なら人手や工事採算に強く左右されます。
ニチレキグループはその間にいて、アスファルト乳剤、改質アスファルト、補修材料、舗装工事、調査診断を組み合わせることで、道路維持管理の中で役割を持っています。
もう一つの見方は、社会インフラの更新需要です。日本では高度成長期に整備された道路や橋梁などが老朽化し、自治体や国の維持補修負担が増えています。新しい道路を作る需要だけでなく、既存道路を長く使う需要が重要になっています。ニチレキグループを読むときは、新設需要よりも維持補修需要の質を見た方が、会社の実態に近づけます。
ただし、インフラ関連だから安定と決めつけるのは早いです。道路工事は公共投資、原材料価格、人件費、外注費、天候、工期、自治体予算に影響されます。舗装材料も、原油やアスファルト関連コストの影響を受けます。したがって、数字を見るときは、売上高だけでなく、営業利益率、ROE、自己資本比率、配当の持続性を並べて見る必要があります。
過去5年の業績推移|売上は横ばい圏、利益率とROEを確認する
2022年3月期から2026年3月期までの売上高、営業利益、経常利益、自己資本比率、ROE、PBR、PERを整理したものです。ROEは各決算期の実績値、PBRとPERはIR BANKの期末取引日に対応する値を使っています。2026年3月期のPBRとPERの基準日は2026年3月31日です。現在値のPBRや予想PERとは区別しています。
| 年度 | 売上高 (億円) |
営業利益 (億円) |
経常利益 (億円) |
自己資本比率 (%) |
ROE(%) | PBR(倍) | PER(倍) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 780.01 | 85.66 | 93.11 | 77.0 | 10.01 | 0.55 | 5.54 |
| 2023/03 | 783.97 | 75.66 | 81.04 | 79.2 | 8.67 | 0.62 | 7.23 |
| 2024/03 | 738.32 | 60.19 | 63.90 | 78.7 | 6.00 | 0.97 | 16.18 |
| 2025/03 | 757.45 | 62.68 | 70.47 | 68.8 | 6.27 | 0.83 | 13.22 |
| 2026/03 | 758.53 | 59.20 | 60.77 | 64.9 | 5.39 | 0.75 | 14.06 |
売上高は2022年3月期の780.01億円から、2026年3月期は758.53億円です。5年間で見ると大きく伸びているというより、700億円台後半で横ばい圏にあります。2024年3月期に738.32億円へ下がり、2025年3月期と2026年3月期で少し戻した形です。
営業利益は2022年3月期の85.66億円から、2026年3月期は59.20億円へ下がっています。売上高より利益の落ち方が大きいため、ここは読み飛ばせません。道路関連は需要が急に消える業種ではありませんが、原材料費、人件費、外注費、工事採算、製品構成によって利益率が変わります。2026年3月期の営業利益率は7.8%で、絶対水準としては悪くありませんが、2022年3月期の10.98%からは低下しています。
自己資本比率は2022年3月期77.0%、2023年3月期79.2%、2024年3月期78.7%と高い水準でした。2025年3月期は68.8%、2026年3月期は64.9%まで下がっています。それでも64.9%という数字は財務が薄いという印象ではありません。むしろ、これだけ自己資本が厚いからこそ、資本効率がどう見えるかが問題になります。
ROEは2022年3月期10.01%から、2026年3月期5.39%まで下がっています。ここが低PBRの理由を考えるうえで重要です。PBR0.75倍という数字だけを見ると割安に見えますが、ROEが下がると、市場は自己資本を十分に稼げていない会社として評価しやすくなります。この会社の焦点は、財務の安全性ではなく、厚い自己資本をどれだけ利益に変えられるかです。
PERは2026年3月期末で14.06倍です。2022年3月期や2023年3月期のような一桁PERではありません。現在の予想PERは13.87倍で15倍未満ですが、過去に比べて極端に低いとは言い切れません。したがって、この記事では「安いから注目」ではなく、「低PBRだがROE低下をどう見るか」という整理をします。
配当推移と株主優待|利回りは高いが利益とのバランスを見る
ニチレキグループは配当利回りの面でも目に留まります。2026年7月18日時点のIR BANK表示では、予想配当利回りは4.06%です。2026年3月期の実績配当は80円、2027年3月期の予想配当は85円です。
| 年度 | 年間1株配当(円) | 配当性向(%) |
|---|---|---|
| 2022/03 | 42 | 18.8 |
| 2023/03 | 50 | 24.3 |
| 2024/03 | 70 | 45.8 |
| 2025/03 | 75 | 45.5 |
| 2026/03 | 80 | 53.4 |
配当は2022年3月期の42円から2026年3月期の80円まで増えています。売上が大きく伸びていない中で配当が増えているため、株主還元姿勢は見えます。一方で、利益の伸びと配当の伸びが完全に連動しているわけではありません。2026年3月期の当期利益は42.9億円で、2025年3月期の48.5億円から減っています。配当を見るときは、利回りだけでなく、利益水準、キャッシュフロー、自己資本の使い方を合わせて確認したいところです。
高配当株として見るなら、減配リスクの確認が必要です。道路舗装関連は景気敏感な製造業ほど急激に需要が消えるわけではありませんが、公共投資や工事採算の変化を受けます。原材料価格が上がり、価格転嫁が遅れ、工事採算が悪化すれば、利益が下がります。利益が下がっても配当を維持できるかは、財務余力と経営方針に左右されます。
それでも、自己資本比率64.9%という財務余力があるため、短期的に配当が危うい会社という印象ではありません。問題は、配当だけで投資家の評価を支えられるかです。株価が持続的に見直されるには、配当利回りに加えて、ROE改善や成長投資の成果が必要になります。
決算内容とリスク|利益の質と資本効率を見る
決算で良かった点
2026年3月期で良かった点は、売上が大きく崩れていないことです。2025年3月期の757億円から2026年3月期は759億円へ小幅増となりました。営業利益は減りましたが、営業利益率7.8%を維持しています。道路材料や施工関連で、売上が横ばいでも利益を一定程度残せている点は確認できます。
もう一つは、財務がなお厚いことです。自己資本比率は低下しているとはいえ64.9%です。道路関連の会社は、工事、在庫、売掛金、設備、研究開発、拠点維持に資金が必要です。その中で自己資本が厚いことは、景気や公共投資の波を受ける局面で安心材料になります。
決算で気になった点
気になる点は、ROEの低下です。2022年3月期の10.01%から2026年3月期は5.39%まで下がっています。
自己資本が厚いことは安全性に寄与しますが、利益が伸びないまま自己資本が積み上がると、ROEは下がりやすくなります。PBRが低い背景には、この資本効率への見方が含まれている可能性があります。
営業利益も2022年3月期の85.7億円から2026年3月期は59.2億円へ下がりました。
売上が横ばいなのに利益が下がると、採算が悪くなっているのか、製品構成が変わっているのか、原材料費や人件費が効いているのかを確認する必要があります。次の決算では、売上の量だけでなく、営業利益率の戻りを見ることが大切です。
有価証券報告書やリスク面で見たい点
リスク面では、公共投資の動向、原材料価格、人件費、外注費、工事採算、災害復旧需要の変動、天候要因、競争環境を確認したいところです。道路舗装関連は、社会に必要な事業である一方、利益率がいつも安定するとは限りません。特に工事を伴う事業は、受注価格と実際のコストのズレが利益に出ます。
また、アスファルト関連材料は原材料価格の影響を受けます。価格転嫁が進む時期と、コスト上昇が先に来る時期では、利益率の見え方が変わります。道路維持補修の需要があるから強い、で終わらせず、材料価格と施工採算を確認する必要があります。
事業内容|舗装材料、施工、診断を分けて見る
舗装材料とアスファルト応用加工製品
ニチレキグループの基盤は、アスファルト乳剤や改質アスファルトなどの道路舗装材料です。道路は、交通量、気温、雨、雪、凍結、重車両の影響を受けます。そのため、舗装材料には、耐久性、施工性、補修性、環境対応が求められます。
舗装材料は、一般消費者から見える商品ではありません。しかし、道路の寿命、補修頻度、工事時間、維持管理コストに関わります。高機能な材料を使うことで、補修回数を減らしたり、施工時間を短くしたりできれば、顧客側の価値になります。ここが、単純な素材販売と違う部分です。
道路舗装・維持補修工事
材料を持つ会社が施工にも関わると、現場の課題を製品開発に戻しやすくなります。道路のひび割れ、わだち掘れ、段差、雨水、騒音、施工時間の制約など、現場で起きる問題は多様です。施工を通じて得た知見が、材料や工法の改善につながるなら、会社の差別化要因になります。
一方で、施工は採算管理が難しい分野でもあります。人件費、外注費、資材費、工期、天候、現場条件によって利益が変わります。したがって、施工があることは強みでもあり、同時にリスクでもあります。投資家としては、売上が増えたかどうかだけでなく、営業利益率が改善しているかを見たいところです。
調査診断と道路維持管理
道路を長く使うには、壊れてから直すだけでなく、状態を把握し、優先順位を決め、適切な工法を選ぶ必要があります。調査診断は、道路維持管理の入口に近い役割です。ここに関われる会社は、単発の材料販売だけでなく、顧客の課題を早い段階で把握できます。
老朽化インフラの時代には、道路を新しく作るよりも、今ある道路をどう延命するかが重要になります。ニチレキグループのような会社を見るときは、製品そのものだけでなく、診断、補修、施工、維持管理の流れ全体でどれだけ関われるかを確認したいです。
業界の将来性|道路は減らないが、採算は自動で良くならない
業界環境
道路舗装関連の需要は、人口減少社会でも消えるものではありません。物流、通勤、観光、防災、救急、災害復旧など、道路は社会の基礎です。新設道路の需要が伸び続けるとは限りませんが、既存道路の維持補修需要は続きます。
一方で、公共投資は予算に左右されます。道路の老朽化が進んでも、自治体の財政が厳しければ、必要な補修が先送りされることもあります。また、工事の発注時期や地域差もあります。需要が社会的に必要であることと、企業の利益が安定して伸びることは別です。
将来性とリスク
将来性としては、老朽化インフラ、災害復旧、長寿命化、環境対応、施工省力化がテーマになります。舗装材料の高機能化や、短時間施工、リサイクル材料の活用は、顧客側の課題と結びつきやすいです。人手不足が続くほど、施工の効率化や品質の安定化は重要になります。
リスクは、利益率の低下です。道路需要があっても、価格競争が強まり、原材料費が上がり、人件費が上がれば、利益は圧迫されます。特にニチレキグループは、売上が横ばい圏で利益が下がってきたため、今後は需要の有無だけでなく、採算改善の実現度が焦点になります。
その中での立ち位置
ニチレキグループは、売上規模では東亜道路工業や世紀東急工業より小さいですが、道路材料と維持補修に軸足を持つ点に特徴があります。大規模な総合建設会社を見るのとは違い、道路の維持補修という比較的絞られたテーマで見やすい会社です。
ただし、比較表を見ると、ROEは競合より低めです。財務が厚く、PBRが低く、配当利回りが高いという魅力はありますが、資本効率を上げられなければ評価は上がりにくいです。ここが、ニチレキグループを見るうえでの一番大きな論点です。
競合比較|道路舗装関連の中でどこが違うか
比較対象は、道路舗装・道路材料に近い上場企業として、東亜道路工業(1882)と世紀東急工業(1898)を選びました。表は2026年3月期でそろえ、PBRとPERは2026年3月31日のIR BANK期末値、ROEは2026年3月期実績を使っています。
| 企業 | 対象期 | 売上高 (億円) |
営業利益 (億円) |
営業利益増減率 (%) |
ROE (%) |
PBR (倍) |
PER (倍) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ニチレキグループ | 2026年3月期 | 758.53 | 59.20 | ▲5.5 | 5.39 | 0.75 | 14.06 |
| 東亜道路工業 | 2026年3月期 | 1,213.27 | 57.88 | +15.4 | 6.39 | 1.47 | 23.03 |
| 世紀東急工業 | 2026年3月期 | 952.59 | 64.17 | +9.9 | 10.9 | 1.24 | 11.77 |
企業紹介
・ニチレキグループ
道路舗装材料、アスファルト応用加工製品、施工、調査診断を手がけます。売上規模は比較対象より小さめですが、自己資本比率が64.9%と高く、PBR0.75倍が目立ちます。一方でROEは5.39%で、資本効率は改善余地があります。
・東亜道路工業
道路建設、舗装工事、道路材料を手がける企業です。路舗装を中心に、道路の新設や補修、スポーツ施設・公園などの整備を行っています。長年培ってきた舗装技術を活かし、安全で快適な交通インフラづくりに貢献しており、環境に配慮した工法や製品の研究・開発にも力を入れています。
・世紀東急工業
世紀東急工業株式会社は、道路建設のパイオニアとして発展してきた東急グループの建設会社です。「技術第一主義」を掲げ、道路舗装を中心に、アスファルト合材の製造・販売や土木、水利・スポーツ・景観整備など幅広い事業を展開しています。培ってきた高い技術力を活かし、機能性舗装や環境に配慮した工法にも取り組みながら、地域の生活基盤を支えています。
比較
比較すると、ニチレキグループは財務の厚さと低PBRが目立ちます。自己資本比率64.9%は3社の中で最も高く、PBR0.75倍は最も低いです。ただし、ROE5.39%も最も低いです。つまり、財務が厚いから安心という見方はできますが、その資本を使ってどれだけ利益を出せているかでは見劣りします。
世紀東急工業はROE10.9%で、営業利益は64.17億円です。売上はニチレキグループの約1.3倍、営業利益は約1.1倍です。資本効率も高く、PERは11.77倍です。市場が資本効率を重視するなら、PBRが1倍を超えていても説明しやすい会社です。
東亜道路工業は売上規模が大きい一方で、営業利益は57.88億円です。ROEは6.39%で、ニチレキグループよりやや高い程度ですが、PBRは1.47倍、PERは23.03倍です。比較すると、ニチレキグループの低PBRは財務の厚さだけでなく、ROEの低さが織り込まれている可能性があります。
したがって、ニチレキグループを評価するときは、単純に「PBR0.75倍だから安い」と見るより、低いPBRを正当化している要因が、ROE低下なのか、一時的な採算悪化なのかを分けて考える必要があります。
中期経営計画と成長戦略|売上800億円台とROE改善を見たい
中期経営計画
ニチレキグループは2026年5月12日に中期経営計画の策定をニチレキグループ「のびやか2030」を開示しています。
2030年度の財務目標として、以下の方針を打ち出しています。
- 売上高860億円
- 営業利益68億円
- EBITDA113億円
- EBITDAマージン13.1%
- ROE6.0%
- 配当性向は50%程度
2026年3月期の売上高759億円から見ると、まずは800億円台に戻せるかが焦点です。
2027年度中には生産・物流拠点「つくばビッグシップ」を稼働させ、生産設備の自動化や高付加価値製品の製造、物流の効率化を推進します。原材料の調達から製造、販売、施工、機材管理に至るまで、サプライチェーン全体でICT・DXを活用し、生産性・品質・安全性の向上にも取り組みます。
投資面では、成長投資に約140億円、既存設備などへの通常投資に約120億円、株主還元に約130億円を配分し、持続的な成長と株主還元、財務健全性の両立を図ります。加えて、人的資本経営を強化し、2030年度までに対象従業員全員が年間付与日数の7割以上の有給休暇を取得することを目標としています。
成長戦略
ニチレキグループの成長戦略は、道路インフラの維持補修、高機能な舗装材料、施工効率化、調査・診断、海外展開が軸です。国内では道路の老朽化が進んでおり、維持補修需要は今後も長期的に続くと考えられます。新設道路などの大型工事だけに依存せず、継続的なメンテナンス需要を取り込める点は、事業の安定材料です。
2027年度中に稼働予定の「つくばビッグシップ」では、生産設備の自動化や高付加価値製品の製造、物流の効率化を進めます。さらに、原材料の調達から製造、販売、施工までICT・DXを活用し、生産性の向上やコスト削減、品質・安全性の強化につなげる方針です。
一方、売上が安定しているだけでは株価の再評価にはつながりにくく、市場では利益率やROE、資本政策が重視されます。ニチレキグループでは、大規模な新規事業よりも、高機能材料の拡大、施工の省人化、価格転嫁、在庫・物流管理の改善によって、既存事業の採算を着実に高める戦略が現実的です。
今後は、設備投資や研究開発の成果が営業利益率とROEの改善に結び付くかが焦点となります。
強みと弱み|投資前に見たいポイント
強み
道路インフラ維持補修に関わる事業基盤
道路は社会に不可欠なインフラです。物流、通勤、救急、防災、観光のすべてに関係します。ニチレキグループは、その道路を維持する材料と施工に関わります。景気が良いときだけ需要が生まれる事業ではなく、道路が使われ続ける限り、維持補修需要が残る点は強みです。
材料と施工を組み合わせられること
材料だけ、施工だけではなく、両方を理解している点は差別化要因です。現場の課題を材料開発に戻し、材料の特性を施工提案に生かせるなら、単純な価格競争から離れやすくなります。道路維持管理は、顧客の課題に応じた提案力が重要になる分野です。
自己資本比率の高さ
2026年3月期の自己資本比率は64.9%です。過去5年では低下していますが、依然として厚い水準です。公共投資や原材料価格の波を受ける事業では、財務余力があることは安心材料になります。配当を維持するうえでも、財務の厚さは一定の支えになります。
弱み
ROEの低下
最大の弱みはROEの低下です。2022年3月期10.01%から2026年3月期5.39%まで下がっています。PBRが低い理由を考えるとき、ここは避けられません。財務が厚いことは良い面ですが、利益が伸びなければ資本効率は下がります。
売上の成長感が強くない
売上高は2022年3月期780億円、2026年3月期759億円で、5年で大きく伸びていません。道路維持補修需要があるとしても、それがそのまま会社の成長に直結しているわけではありません。成長株としてではなく、採算改善と還元を確認する銘柄として見る方が自然です。
公共投資と原材料価格に左右される
道路関連事業は、公共投資、自治体予算、原材料価格、人件費、外注費、天候に左右されます。需要が社会的に必要でも、受注価格やコスト管理が悪ければ利益は出ません。安定テーマに見えても、採算リスクはあります。
株価シナリオ|見直される条件を考える
良いシナリオ
良いシナリオは、売上800億円台への回復と、営業利益率の改善が同時に進むことです。2027年3月期予想では売上高800億円、営業利益60億円が示されています。ここからさらに高機能材料や維持補修需要が伸び、営業利益率が戻れば、ROEも改善しやすくなります。
ROEが再び8%台、10%近くへ戻る道筋が見えれば、PBR0.75倍という評価は見直される余地があります。配当利回り4%台に加えて、資本効率の改善が確認できれば、低PBR株としての見方が変わります。
中立シナリオ
中立シナリオは、売上800億円前後、営業利益60億円前後で推移し、配当は維持されるものの、ROEは5%台から6%台にとどまる展開です。この場合、配当利回りは支えになりますが、PBR1倍を大きく超えるような再評価は起きにくいかもしれません。
このシナリオでは、株価は高配当・低PBR銘柄として見られやすくなります。大きな成長期待ではなく、安定配当と財務の厚さを確認する銘柄です。悪くはありませんが、資本効率の改善が弱ければ、評価の上限も見えやすくなります。
悪いシナリオ
悪いシナリオは、原材料費や人件費の上昇、工事採算の悪化、公共投資の鈍化によって、営業利益がさらに下がる展開です。売上が横ばいでも利益率が下がれば、ROEはさらに低下します。ROEが5%を下回るような状態が続けば、PBRが低いままでも「安い」とは言いにくくなります。
配当面でも、利益が下がれば配当維持の説明が必要になります。財務余力はありますが、利益の裏付けが弱まると、配当利回りだけでは株価を支えにくくなります。次の決算では、売上の進捗よりも、利益率と採算の確認が重要です。
全体まとめ|低PBRの理由を検討
次の決算で最初に確認したいのは、売上高の進捗です。ただし、ニチレキグループの場合、売上だけを見ても十分ではありません。2027年3月期の会社予想は売上高800億円です。2026年3月期の759億円から見ると増収計画ですが、営業利益予想は60億円で、2026年3月期の59.2億円から大きく増える計画ではありません。つまり、会社計画だけを見ると、短期的には売上を戻しながら利益を守る段階に見えます。
そのため、第1四半期で見たいのは、売上の増減よりも粗利や営業利益率の方向です。道路材料の販売量が伸びても、原材料価格や物流費、人件費が重ければ利益は残りません。工事売上が増えても、採算の低い案件が多ければ営業利益率は改善しません。道路舗装関連は、需要テーマが分かりやすい一方で、実際の利益は現場採算に強く左右されます。
次に見たいのは、自己資本の使い方です。自己資本比率64.9%は高い水準ですが、ROE5.39%という数字は物足りません。厚い財務は安心材料ですが、資本を寝かせたままではPBRの見直しにつながりにくいです。設備投資、研究開発、株主還元、M&A、海外展開、在庫や売掛金の管理など、資本をどこへ振り向けているのかを確認したいです。
配当についても、次の決算で確認したい点があります。予想配当85円は前期実績80円からの増配計画ですが、配当だけが先に伸びて利益が追いつかない状態が続くと、将来の増配余地は限られます。高配当株として見るなら、配当性向、営業キャッシュフロー、投資負担、自己株式取得の有無を合わせて見る必要があります。利回りが高いことは入口になりますが、持続性の確認が本題です。
最後に、会社がどの分野を伸ばしたいのかを確認したいです。道路維持補修、舗装材料の高機能化、調査診断、環境対応、海外展開のどこが利益を押し上げるのかが分かれば、株価シナリオも立てやすくなります。
逆に、売上は増えても利益率が横ばいで、ROEの改善が見えないなら、低PBRはそのまま続く可能性があります。次の決算で見るべき問いは、道路補修需要があるかではなく、その需要を資本効率の改善に変えられるかです。
こういう視点で見ると、ニチレキグループは単純なインフラ関連株ではないのかもしれません。財務は厚く、配当利回りも高く、事業テーマも分かりやすい一方で、ROEが下がっているため、資本市場からは慎重に見られています。
だからこそ、今後の決算では、売上800億円の達成だけでなく、利益率、ROE、資本政策がどのように変わるかを継続して確認したいです。今後も監視していくのであれば、材料と施工の組み合わせが利益率にどう効くかは、毎回確認の必要があります。
2026年3月期通期まとめ
決算ハイライト|2026年3月期通期
2026年7月18日時点の最新決算は、2026年5月12日に発表された2026年3月期通期決算です。6月19日に同年度の有価証券報告書が提出され、その後に四半期決算の発表はありません。ここでは通期実績と2027年3月期会社予想を分けて整理します。
| 項目 | 2026/03実績 (億円) |
前期比 | 2027/03予想 (億円) |
予想増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 758.53 | +0.1 | 800.00 | +5.5 |
| 営業利益 | 59.20 | ▲5.5 | 60.00 | +1.3 |
| 経常利益 | 60.77 | ▲13.8 | 63.00 | +3.7 |
| 親会社株主利益 | 42.93 | ▲11.4 | 43.00 | +0.1 |
売上高は前期比0.1%増でしたが、営業利益は5.5%減、経常利益は13.8%減、純利益は11.4%減でした。道路舗装事業の売上は増えた一方、アスファルト応用加工製品事業の売上は減少しています。売上の安定だけでは利益の改善を説明できず、製品構成と採算を分けて見る必要があります。
通期予想と進捗
2027年3月期の会社予想は売上高800億円、営業利益60億円、経常利益63億円、純利益43億円です。売上は41.47億円の増加を見込むのに対し、営業利益の増加は0.80億円です。営業利益率は2026年3月期の7.8%から7.5%へわずかに下がる計算で、現時点の計画は増収と同時に大幅な採算改善を見込む内容ではありません。
新年度の四半期実績はまだ発表されていないため、進捗率は計算できません。最初の確認機会では、売上の進み方だけでなく、原材料価格の転嫁、道路舗装工事の採算、営業キャッシュフロー、セグメント利益を確認します。
配当・株主還元
2026年3月期の年間配当は80円で、前期75円から5円増配されました。連結配当性向は53.4%です。2027年3月期は85円を予想し、予想配当性向は56.7%となります。配当は増える計画ですが、利益予想はほぼ横ばいであるため、将来の増配余地は本業の利益成長と現金創出力に左右されます。
自己株式取得を含む総還元と成長投資の配分も確認点です。還元額だけでなく、還元後も高付加価値製品と施工効率へ十分に投資できるかを見ます。
業績背景
売上高は道路舗装事業が508.27億円へ2.5%増え、アスファルト応用加工製品事業は247.21億円へ4.3%減りました。道路維持補修の需要が全社売上を支えましたが、原材料高や事業構成の変化もあり、全社営業利益率は前期8.3%から7.8%へ低下しました。
営業キャッシュフローは前期48.95億円から24.16億円へ縮小しました。投資キャッシュフローは▲52.90億円、財務キャッシュフローは▲40.15億円で、現金及び現金同等物は247.52億円となりました。利益だけでなく、投資と還元を支える現金の動きを追う必要があります。
セグメント別動向
アスファルト応用加工製品事業は、長寿命化や環境対応の高付加価値製品が成長の柱です。道路舗装事業は公共投資と維持補修需要が下支えしますが、資材費、労務費、工期によって採算が動きます。二つの事業を持つことは需要の分散になりますが、利益率改善には材料の価格転嫁と工事採算の両方が必要です。
2027年3月期の焦点は、売上800億円の達成より、営業利益率とROEの下げ止まりです。材料と施工の相乗効果が数字に表れるかを確認します。
決算まとめ
2026年3月期は売上を維持した一方、営業利益、経常利益、純利益、営業キャッシュフローが減りました。財務の厚さと増配は支えですが、低PBRの見直しには本業の採算とROEの改善が必要です。次の決算では、増収計画の進捗よりも、利益率、原材料価格の転嫁、資本配分の実行を優先して確認します。
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この記事は、企業について調べた内容をまとめたものであり、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。株式投資には価格変動や業績悪化などのリスクがあります。最終的な投資判断は、ご自身で最新情報を確認したうえでお願いします。
参考資料
参考資料
- ニチレキグループ公式サイト: https://www.nichireki.co.jp/
- ニチレキグループIR情報: https://www.nichireki.co.jp/investors/
- IR BANK ニチレキグループ: https://irbank.net/5011
- IR BANK ニチレキグループ 決算まとめ: https://irbank.net/E01077/results
- IR BANK ニチレキグループ 安全性分析: https://irbank.net/E01077/safety
- IR BANK ニチレキグループ PBR: https://irbank.net/5011/pbr
- IR BANK ニチレキグループ PER: https://irbank.net/5011/per
- IR BANK ニチレキグループ 配当: https://irbank.net/E01077/dividend
- IR BANK 東亜道路工業: https://irbank.net/1882
- IR BANK 世紀東急工業: https://irbank.net/1898
