追記 決算まとめは一番したにあります。記事を最新にアップデートしました。
最近の東和銀行(8558)を調べていてみると大幅な赤字に転落していました。なぜ転落したのについてはこれから調べていくこととして、今一番知りたいのは「大幅赤字から黒字へ戻れるか」です。
また、もっと企業固有の考慮しなければならない点もあります。長期債を処理して生まれた資金を地域企業へ移したとき、貸出を増やしながら損失を抑え、資本に残る利益へ変えられるのかという問題です。
2026年3月期、東和銀行は金利上昇で含み損が膨らんだ長期債を大規模に処理しました。
翌2027年3月期第1四半期には、貸出金利息とコア業務純益が伸びています。ところが同じ四半期に、全東信向け債権の処理などで78.90億円の信用コストが発生しました。稼ぐ力の改善と、与信管理の弱さを疑わせる損失が同時に現れたのです。
会社概要
東和銀行は群馬県前橋市に本店を置き、群馬県・埼玉県を中心に東京都や栃木県へ営業基盤を広げる第二地方銀行です。預金で集めた資金を地域の中小企業、個人事業主、住宅ローン利用者、地方公共団体などへ貸し出し、利息を得る銀行業が収益の中心です。事業承継、M&A、販路開拓、人材紹介、経営改善、脱炭素などの法人支援、投資信託や保険などの個人向けサービス、有価証券運用も行います。
経営理念には「役に立つ銀行」「信頼される銀行」「発展する銀行」を掲げています。近年の軸は、営業店と本部が取引先の課題を共有する「TOWAお客様応援活動」です。単に資金を貸すのではなく、企業の課題解決を融資と手数料収益へつなげる考え方です。地域企業が成長すれば預金・融資・決済の取引も続きますが、地域景気や取引先の信用状態が悪化すれば損失も直接受けます。
銀行の安全性は一般企業の会計上の自己資本比率だけでは測れません。預金を負債として受け入れるため、総資産に対する比率は構造的に低くなります。本記事では、連結業績に加え、リスク量を反映する国内基準の自己資本比率、コア業務純益、信用コスト、不良債権、有価証券評価損益を見ます。地域密着という強みが、情報優位による良質な融資になるか、取引慣行による集中リスクになるかが東和銀行を読む核心です。
過去5年の業績推移
対象は2022年3月期から2026年3月期までの連結5年度で、金額単位は億円です。銀行は一般企業の売上高と営業利益を開示しないため、営業収益欄には経常収益、営業利益欄には非開示を示す「―」を置き、経常利益を比較します。自己資本比率とROEは有価証券報告書、PBRは各期末近辺の株価と1株純資産、PERは会社開示の連結株価収益率を基準とし、赤字年度は「―」です。
| 年度 | 営業収益(億円) | 営業利益(億円) | 経常利益(億円) | 自己資本比率(%) | ROE(%) | PBR(倍) | PER(倍) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年3月期 | 369.07 | ― | 37.12 | 4.84 | 1.34 | 0.16 | 12.82 |
| 2023年3月期 | 335.13 | ― | 39.87 | 4.89 | 3.39 | 0.17 | 5.15 |
| 2024年3月期 | 341.38 | ― | 43.35 | 4.89 | 3.00 | 0.23 | 7.99 |
| 2025年3月期 | 378.15 | ― | 63.89 | 3.79 | 4.34 | 0.25 | 5.03 |
| 2026年3月期 | 435.04 | ― | △298.37 | 3.71 | △27.20 | 0.39 | ― |
2025年3月期までは経常利益が37.12億円から63.89億円へ改善しました。2026年3月期は経常収益が435.04億円へ増えた一方、経常損失298.37億円、親会社株主に帰属する当期純損失244.99億円となりました。5年の流れは、緩やかな本業改善の後に、長期債処理の損失が一気に表面化した形です。
大幅赤字の主因は、残存年数3年超の債券を中心とした有価証券ポートフォリオの再構築です。金利が上がると既発の低利回り債券価格は下がります。東和銀行は含み損を抱え続けるのではなく売却損を計上し、短期国債や貸出へ再投資できる状態を作りました。損失を出した事実は重いものの、その損失が将来収益を変える投資だったかは再投資後の数字で判断すべきです。
単体のコア業務純益は2024年3月期61.14億円、2025年3月期58.44億円、2026年3月期88.46億円でした。債券売却損を含む表面利益とは逆に、貸出金利息などの基礎収益は改善しています。ここから「赤字は一時的」と言いたくなりますが、2027年3月期1Qには別の信用損失が発生しました。債券損失を除けば大丈夫、という単純な正常化ストーリーは成立しません。
PBRが0.39倍まで上がった点も割安修正だけではありません。1株純資産が2025年3月期の2,458.71円から2026年3月期の2,532.72円へ動く一方、利益と資本への不安が残っています。低PBRは上昇余地を示す場合がありますが、将来のROEが低い、損失の振れが大きい、資本が薄いという市場評価も含みます。倍率の低さより、信用コスト後ROEを継続して上げられるかを優先します。
配当推移と株主優待
配当は各年度の普通株式の年間実績、配当性向は単体の会社開示値です。赤字の2026年3月期は配当性向を算出できないため「―」としています。
| 年度 | 年間1株配当(円) | 配当性向(%) |
|---|---|---|
| 2022年3月期 | 25 | 62.75 |
| 2023年3月期 | 25 | 23.82 |
| 2024年3月期 | 35 | 39.19 |
| 2025年3月期 | 35 | 28.72 |
| 2026年3月期 | 35 | ― |
2024年3月期に25円から35円へ増配し、大幅赤字となった2026年3月期も35円を維持しました。会社は2027年3月期に50円を予想しています。予想1株利益155.20円に対する配当性向は約32%で、通期純利益55億円の達成が前提です。増配は本業改善への自信を示す一方、資本を積み直す局面での50円が持続可能かは慎重に見ます。
株主優待は実施していません。したがって還元評価は現金配当が中心です。優待がないこと自体は弱点ではなく、全株主へ公平に還元しやすい利点があります。ただし2026年3月末の連結国内基準自己資本比率は6.72%まで低下しました。利益が戻ったら配当へ回すのか、資本へ残すのかという配分が重要です。高配当利回りだけを根拠にせず、規制資本と追加損失への耐性を合わせて確認します。
未来仮説にとって配当は結果指標です。地域融資の収益が増え、信用コストが平常化し、自己資本比率が回復したうえで50円を継続できれば、資産配分転換の成果が株主へ届いたと評価できます。反対に有価証券売却益で利益を整えながら配当を維持する状態が続くなら、通常利益の改善とは分けて考えます。次回は配当予想の有無だけでなく、利益剰余金と自己資本比率の増減を見ます。
決算内容とリスク
2027年3月期第1四半期の連結経常利益は48.50億円の損失、親会社株主に帰属する四半期純利益は30.17億円の損失でした。全東信に対する債権80億円のうち、担保・引当等で保全されていない58.86億円を全額償却し、一般貸倒引当金の実績率上昇も加わって単体信用コストは78.90億円へ膨らみました。
一方、単体資金利益は70.74億円と前年同期比7.61億円増、コア業務純益は20.12億円と6.19億円増でした。貸出金利息が10億円増え、貸出金利回りは2026年3月期の1.49%から1Qの1.63%へ上昇しています。本業は確かに良くなったが、一件の信用損失が四半期のコア業務純益の約3.9倍に達した、これが今回の決算を一番正確に表します。
仮説を支える材料
預金は前年同期比441億円増の2兆2,070億円、貸出金は425億円増の1兆6,533億円です。残存年数3年超の一括処理対象債券2,244億円のうち2,024億円を売却し、対象債券の評価損益は2026年2月末のマイナス356億円から同年6月末のマイナス12億円、金利リスクはマイナス119億円からマイナス7億円へ縮小しました。低利回りの長期債に固定されていた資金を動かせる余地は大きく改善しています。
仮説への反対材料
全東信案件は、貸出を増やせば自動的に利益が安定するわけではないことを示しました。2026年6月末の連結自己資本比率は6.64%、有価証券評価損益は満期保有目的マイナス77億円とその他有価証券マイナス38億円を合わせてマイナス116億円です。金融再生法開示債権比率は2.48%でした。資本余力が厚くない状態で融資を急げば、別の大口損失が成長余地と配当余力を同時に削る可能性があります。
通期予想の読み方
会社は連結経常利益50億円、親会社株主に帰属する当期純利益55億円の通期予想を据え置きました。信用コストに対して有価証券売却益55億円を充当する計画です。通期利益を守れる可能性はありますが、売却益は毎年繰り返せる本業利益ではありません。55億円を達成したかと、55億円を継続して稼ぐ構造になったかは別です。売却益を除くコア業務純益と信用コストの差を見ます。
次回確認指標は、貸出金残高と貸出金利回り、資金利益、コア業務純益、信用コスト、連結自己資本比率、有価証券評価損益です。中でもコア業務純益から信用コストを引いた後にプラスが残るかを最優先します。貸出量と利回りが上がっても、損失がそれ以上なら資産配分の転換は完成していません。
もう一つ見落としやすいのが、貸出金増加と貸出先数の関係です。残高が増えても取引先数が減れば、一社当たりの平均与信が膨らみ、集中度が高まる可能性があります。新規実行額、既存先の返済、地方公共団体向け、住宅ローン、事業性融資の内訳を分けなければ、425億円増の質は判断できません。会社が大口与信管理の再発防止策を公表した場合は、規程の変更だけでなく、上限超過時の承認、担保評価の更新頻度、早期警戒先の移行実績まで確認します。
事業内容
預金・貸出という中核
中核事業は、地域から預金を集め、企業や個人へ貸し出すことです。2026年3月末の単体預金残高は2兆1,718億円、貸出金残高は1兆6,490億円でした。うち中小企業向けは8,638億円です。金利上昇局面では市場金利連動型融資の金利改定が貸出収益を押し上げますが、預金金利も上がります。貸出利回りと預金コストの差がどれだけ広がるかが収益の土台です。
法人ソリューション
地域企業へは融資だけでなく、経営改善、事業再生、ビジネスマッチング、人材、事業承継、M&A、補助金、脱炭素などを支援します。ここには二つの意味があります。顧客の課題解決が手数料収益になることと、企業の事業内容を深く把握して信用リスクを早く見つけられることです。伴走支援が営業スローガンではなく、融資単価と貸倒抑制の両方へつながるかを見ます。
市場運用と個人サービス
貸出に回らない資金は国債、地方債、社債、株式などで運用します。2026年3月末の有価証券残高は4,113億円で、前年同期から1,237億円減りました。有価証券利回りは0.76%から1.18%へ改善しています。個人向けには住宅ローン、投資信託、保険を提供します。市場運用は収益源ですが、今回のように金利変動が資本と利益を大きく揺らすため、残存期間と含み損益を管理した再投資が欠かせません。
未来仮説との接点は、事業間の資金移動です。会社は有価証券処理で得た資金を毎年200億円程度、地域の事業者への貸出へ移す方針を示しました。短期国債で待機させる資金と、融資で地域へ回す資金をどう配分するか。債券リスクを減らした後に、信用リスクを増やしすぎない設計が事業モデルの転換点になります。
地域融資が生む価値は、利息だけではありません。設備更新を支援した企業の生産性が上がれば、返済能力が改善し、給与振込、決済、外為、資産形成など周辺取引へ広がります。逆に資金供給だけで企業の課題が解決しなければ、残高は増えても貸倒リスクが残ります。融資実行を入口として、顧客の営業利益やキャッシュフローがどう変わったかを追える銀行になれるかが、伴走支援の実質です。
業界の将来性
業界環境
地域銀行は、長く続いた超低金利から「金利のある世界」へ移っています。貸出金利と有価証券利回りの上昇は追い風ですが、預金獲得競争、預金金利、人件費、システム費、サイバー対策費も増えます。人口減少、事業所数の減少、相続預金の都市部流出、後継者不足も続きます。市場金利の上昇だけで全ての銀行が同じように儲かる環境ではありません。
業界の将来性
将来性は、地域企業の設備投資や事業承継を資金と知見で支え、顧客の生産性向上を銀行の継続収益へ変えられるかにあります。金利上昇で利ざやが戻る間に、低採算融資の見直しと非金利サービスを進められる銀行には機会があります。一方、金利上昇が急なら債券含み損と借り手の返済負担が先に増えます。追い風を受ける力より、追い風の副作用を管理する力が長期の差になります。
その中での立ち位置
東和銀行は群馬・埼玉という製造業や物流、サービス業が集まる地域を基盤にし、首都圏にも接点があります。貸出金残高と利回りが同時に伸び始めた点は好位置です。しかし規模の大きい地銀グループより資本・システム投資の余力が小さく、2026年の債券損失と全東信案件でリスク管理への信頼が傷つきました。地域情報の深さで規模の差を補い、大口集中を抑えられるかが立ち位置を左右します。
競合比較
比較対象は営業地域が重なる群馬銀行、めぶきフィナンシャルグループ、栃木銀行です。数値は原則2026年3月期の連結実績で、銀行の営業収益等は経常収益、利益は経常利益を使います。赤字転落などで増減率に意味がない場合、会社資料だけで期末倍率を確認できない場合は「―」としました。
| 企業 | 営業収益等(億円) | 経常又は税引前利益(億円) | 利益増減率(%) | ROE(%) | PBR(倍) | PER(倍) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東和銀行 | 435.04 | △298.37 | ― | △27.20 | 0.39 | ― |
| 群馬銀行 | 2,649.65 | 848.86 | 36.8 | 10.0 | ― | ― |
| めぶきFG | 4,433.13 | 1,156.68 | 39.6 | 8.2 | 1.04 | 13.39 |
| 栃木銀行 | 545.51 | 100.19 | ― | 5.3 | ― | ― |
企業紹介
・東和銀行
群馬県と埼玉県を主要基盤とする第二地方銀行です。中小企業や個人事業主との距離を生かした伴走支援を掲げ、経営改善、販路、人材、事業承継まで扱います。長期債の処理後、短期国債への再投資と地域の事業性融資への資金移動を同時に進めており、資産構成そのものが変化する局面にあります。
・群馬銀行
群馬県を中心に国内外の幅広い拠点を持つ第一地方銀行です。県内の厚い顧客基盤に加え、法人ソリューション、海外支援、証券やリースなどグループ機能を展開します。地域で東和銀行と顧客接点が重なる一方、組織規模とサービスの幅が大きく、東和銀行にとって最も直接的な比較対象です。
・めぶきFG
常陽銀行と足利銀行を中核とする広域地域金融グループです。茨城県・栃木県を中心に北関東の大きな経済圏をカバーし、事業承継、デジタル化、地域商社機能などをグループで提供します。複数県をまたぐ顧客網と業務集約の効果を持ち、地域金融の規模拡大型モデルとして比較できます。
・栃木銀行
栃木県を主要基盤とする第二地方銀行で、埼玉県や東京都にも店舗を持ちます。中小企業・個人向け取引を中心に、地域密着の営業と経営支援を進めています。東和銀行とは銀行区分、営業地域、顧客規模が近く、規模の近い地域銀行が金利正常化と地域縮小へどう対応するかを見る比較対象です。
比較
比較すると、東和銀行の低PBRは単純な割安さより、損失の大きさと資本回復への不確実性を映しています。群馬銀行やめぶきFGは規模と利益の厚みがあり、システム投資や一件の大口損失を吸収しやすい構造です。栃木銀行は規模が近く、地域密着の運営効率が比較ポイントになります。東和銀行が評価差を縮めるには、規模ではなく、地域情報を信用コストの低さへ変える証明が必要です。
仮説を支える比較材料は、貸出金利回りの改善余地と地域融資へ回せる資金です。反対材料は、2026年3月期の赤字と6%台の規制自己資本比率です。次回は競合と同じ金利環境で、東和銀行の資金利益の伸びが上回るか、信用コスト率が下回るかを確認します。金利の追い風を受けた増益ではなく、競合より質の高い増益かが再評価の条件です。
競合に対する独自性は、商品数や店舗数では作りにくいと考えます。東和銀行が勝ち筋を作るなら、群馬・埼玉の中小企業に対する対話の頻度と、審査・支援部門をつなぐ速度です。顧客の異変を大手より早くつかみ、追加融資、条件変更、事業承継、撤退支援を適切に選べれば、規模の小ささが意思決定の近さへ変わります。反対に関係性を優先して損失認識が遅れれば、同じ特徴が弱点になります。
中期経営計画と成長戦略
中期経営計画
公式計画は長期ビジョン「TOWA Future Plan」と、その第1期となる「TOWA Future Plan I」です。2027年3月期を第1期の目標年度、2033年3月期を長期ビジョンの到達年度とし、2026年5月に金利環境とポートフォリオ入れ替え効果を踏まえて財務KPIを見直しました。
- 2027年3月期:連結ROE 6.4%
- 2027年3月期:単体コア業務純益67億円、単体当期純利益55億円
- 2027年3月期:単体自己資本比率7.00%、コアOHR 77.0%
- 2033年3月期:連結ROE 8.0%、単体コア業務純益150億円
- 2033年3月期:単体当期純利益100億円、単体自己資本比率9.5%程度
見直し後の目標は、国内金利の上昇と運用資産の入れ替えで収益力が上がる前提です。1Qのコア業務純益20.12億円を単純に4倍すると80億円を超えますが、季節性があり、投資信託解約損益を除くコア業務純益は16.39億円です。さらに単体自己資本比率は1Qで6.55%でした。利益目標は射程に入っても、資本目標と同時達成できるかが計画の難所です。
2033年のコア業務純益150億円と純利益100億円は、2026年3月期の特殊損失から戻るだけでは届きません。貸出金利息、役務利益、経費効率を持続的に改善し、信用コストを管理する必要があります。自己資本比率9.5%程度を目指す以上、利益を配当だけでなく内部留保へ回す期間も必要です。目標同士の整合性は、配当・融資成長・資本蓄積の配分で検証します。
成長戦略
成長戦略の中心は、債券処理で得た資金を毎年200億円程度、地域の事業者への貸出へシフトすることです。貸出金利回り1.63%が維持され、預金コストの上昇を上回れば資金利益は増えます。これは東和銀行固有の資産配分転換であり、今回の未来仮説を支える最も直接的な材料です。
ただし貸出残高の増加を成果にしてはいけません。事業性貸出先数は2026年3月期に前年同期比124先減の15,158先でした。残高が増えて先数が減るなら、一先当たりの与信が大きくなる可能性があります。全東信案件を踏まえると、200億円を何社へ、どの業種へ、どの保全条件で配分したかが量以上に重要です。
伴走支援はこの質を高める手段です。商流、経営者、設備投資、後継者、資金繰りを理解できれば、融資後の変化を早く把握できます。反対に提案件数だけを追えば、手間と経費が増えても収益や貸倒抑制へつながりません。支援実績は活動量ではなく、貸出利回り、役務利益、債務者区分、信用コストへ最終的にどう表れたかを見ます。
当サイトの未来仮説は、毎年200億円の地域融資シフトが、信用コスト控除後でも利益を残す構造を作るというものです。支える材料は貸出金・利回り・資金利益の同時改善、反対材料は大口損失と資本の薄さです。次回確認指標は、事業性貸出の増加額、先数、資金利益、コア業務純益、信用コスト、自己資本比率とします。
計画の実現性は、金利という外部要因と、審査・支援という内部能力を分けて評価します。金利上昇で貸出利息が増えた部分は環境が変われば反転しますが、顧客理解の深さ、案件選別、早期支援、経費効率は銀行自身が積み上げる能力です。2033年目標を信頼できるのは、金利前提が外れても一定の利益を残せると確認できたときです。次の中計開示では、貸出増加額だけでなく信用コスト率と資本配分方針が数値化されるかを見ます。
強みと弱み
強み
地域企業との接点
群馬・埼玉の中小企業と長く取引し、決算書だけでは見えにくい商流、設備、経営者、後継者の情報へ接しやすい点は強みです。情報を融資判断と早期支援へ使えれば、価格競争だけに頼らず適正な金利を設定できます。地域密着が価値を持つのは、親密さではなく情報の早さと深さが貸倒抑制へ変わるときです。全東信案件後、その実効性を改めて証明する必要があります。訪問記録や決算情報を本部と共有し、異変時の対応速度が上がれば強みは数字になります。
本業収益の改善
2027年3月期1Qは貸出金利息が前年同期比10億円増え、資金利益とコア業務純益も増えました。貸出残高と利回りが同時に上がっているため、単なる残高競争より質の良い兆候です。有価証券利回りも上がり、長期債処理後の再投資効果が表れ始めました。債券売却益を除く基礎収益が改善していることは、赤字決算の中でも見逃せない強みです。この増加が複数四半期続けば、一時的な金利効果から収益構造の変化へ評価を進められます。
資産を動かせる余地
一括処理対象債券の大半を売却し、対象部分の評価損と金利リスクを大幅に縮めました。過去の低利回り資産に縛られず、短期国債と地域融資へ資金を再配置できる状態です。処理には巨額損失を伴いましたが、将来の金利変化に対応する選択肢が増えた点は財務上の強みになります。この余地を高採算・低集中の資産へ配分できるかが次の課題です。満期を短く保てば、次の金利変化にも資金を動かしやすくなります。
弱み
大口与信と管理への不信
全東信向け債権80億円と非保全額58.86億円は、一社の問題が四半期利益を大きく超える規模でした。会社は検証と再発防止を進め、役員報酬も減額しますが、責任表明と管理改善は別です。与信上限、業種集中、保全、早期警戒、取締役会への報告が実際に変わったかを確認できるまで、貸出拡大は強みと同時に最大の弱みでもあります。開示が抽象的なら、不信の解消には時間がかかります。
資本余力の薄さ
連結国内基準自己資本比率は2026年3月末6.72%、2026年6月末6.64%です。最低水準は上回りますが、追加損失、地域融資の拡大、配当50円を同時に進める余裕は厚くありません。利益が出ても資本へ残らなければ成長余地は広がりません。2027年3月期の単体目標7.00%へ戻す道筋と、将来9.5%程度へ高める内部留保の速度が弱み解消の条件です。リスク資産の増加速度も同時に監視する必要があります。
規模とコストの制約
大手地銀グループに比べ、システム開発、サイバー対策、専門人材、商品開発へ投じられる絶対額は限られます。店舗と人材を維持しながら地域支援を深めると経費も増えます。コアOHR77.0%の目標は、収益改善と効率化を同時に求めます。提携や共同化で固定費を抑え、営業人員を企業支援へ移せるかが、規模の弱みを補う現実的な確認点です。経費削減が顧客接点を弱めない設計も欠かせません。
株価シナリオ
株価水準を一点で予想するのではなく、未来仮説がどの数字で強まり、どの数字で崩れるかを三つの条件付きシナリオにします。PBRが低いから上がるのではなく、信用コスト後ROEと資本余力が変われば評価倍率も変わる、という順序で考えます。
上昇シナリオ
毎年200億円程度の地域融資シフトが進み、貸出金利回りが1.6%前後を維持し、資金利益とコア業務純益が増えるケースです。信用コストが平常範囲へ戻り、売却益に頼らず純利益を残し、自己資本比率が7%台へ回復すれば仮説は強まります。量・単価・質がそろった貸出成長が確認されれば、低PBRに含まれる不信が薄れ、配当50円の持続性も高まります。
支える材料は1Qの貸出金425億円増、貸出金利回り1.63%、コア業務純益20.12億円です。次回は信用コストの急減、単体コア業務純益67億円目標への進捗、資本比率の回復を確認します。上昇シナリオでも、株価が上がった後のPBRと予想PERが利益成長に見合うかは別に判断します。
中立シナリオ
貸出金利息は増えるものの、預金金利、人件費、システム費も増え、利益の伸びが緩やかになるケースです。通期純利益55億円を達成しても、一部が有価証券売却益に依存し、自己資本比率の回復が小さければ、未来仮説は維持しつつ判断を保留します。決算上の黒字回復と通常利益の回復を分ける必要があります。
この場合の反対材料は、信用コストがコア業務純益の改善分を継続的に吸収することです。次回は売却益を除く利益、貸出先数、一先当たり残高、金融再生法開示債権比率を確認します。資産配分は前進していても、資本に残る利益が見えなければ株価評価が大きく変わる根拠は弱いままです。
下落シナリオ
別の大口先や特定業種で追加引当が発生し、信用コストが再びコア業務純益を上回るケースです。有価証券評価損が拡大し、自己資本比率が低下すれば、融資成長と配当の両方を見直す可能性があります。債券リスクを減らした代わりに信用リスクを増やしただけと判明すれば、未来仮説は修正または棄却します。
次回確認指標は、追加の大口与信損失、信用コスト、開示債権比率、自己資本比率、配当予想です。貸出残高が増えていても、審査・モニタリングが追いつかなければ成長とは評価しません。下落シナリオではPBRの低さが下値の保証にならず、分母となる純資産の減少にも注意します。
全体まとめ
東和銀行は、2026年3月期に長期債の含み損を大規模に処理し、資産を動かしやすい状態へ変えました。2027年3月期1Qでは、貸出金、貸出金利回り、資金利益、コア業務純益がそろって改善しています。債券から地域融資への転換効果は、基礎収益に表れ始めたと見ています。
一方、全東信向け債権では非保全58.86億円を全額処理し、信用コストは78.90億円まで膨らみました。本業が改善していても、一件の大口損失で利益が大きく吹き飛ぶ点は無視できません。
会社は通期純利益55億円、年間配当50円を維持していますが、有価証券売却益55億円を信用コストへ充当する計画です。そのため見るべきなのは最終利益だけではなく、売却益を除いた本業から信用コストを引いて、どれだけ利益が残るかです。利益の額と再現性は別だと考えています。
私が注目しているのは、毎年200億円程度の地域融資シフトが、信用コストを差し引いても利益を残せる構造になるかです。貸出残高と利回りの改善は追い風ですが、大口融資への集中と6%台まで低下した自己資本比率はリスクになります。
次回は、貸出金残高・利回り、コア業務純益、信用コスト、自己資本比率、有価証券評価損益を一緒に確認します。貸出の増加が利益となり、最終的に資本へ残る状態を作れるか。
ここまで確認できて初めて、東和銀行の収益構造が本当に変わったと判断したいと思います。現時点ではをまだうまく成長するかはわかりませんが成長ストーリーを維持してほしいですね。
最新決算|2027年3月期 第1四半期
決算ハイライト
| 項目 | 2027年3月期1Q | 前年同期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 経常収益 | 155.16億円 | 98.66億円 | +57.2% |
| 経常利益 | ▲48.50億円 | 14.53億円 | 赤字転落 |
| 純利益 | ▲30.17億円 | 19.06億円 | 赤字転落 |
| コア業務純益※ | 20.12億円 | 13.93億円 | +44.4% |
| 資金利益※ | 70.74億円 | 63.12億円 | +12.1% |
※単体
経常収益は大幅に増えましたが、経常利益・純利益は赤字となりました。一方、本業の稼ぐ力を見るコア業務純益は約44%増と好調です。
なぜ大幅赤字になった?
最大の要因は、決済代行会社「全東信」の破産です。
東和銀行は全東信に約80億円の債権を持っており、このうち担保や引当で保全されていなかった約58億円を全額償却しました。さらに一般貸倒引当金も増えたことで、1Qの信用コストは前年同期の1.49億円から78.90億円まで急増しています。
加えて、国債等債券損益も▲31.78億円となりました。そのため決算だけを見るとかなり悪く見えますが、通常の銀行業務そのものが赤字になったわけではありません。
本業はむしろ改善
ここは今回の決算で一番重要だと思います。
貸出金の増加や貸出金利回りの上昇、有価証券の入れ替えによる運用利回り改善によって、資金利益は63.12億円→70.74億円へ増加。
コア業務純益も、13.93億円 → 20.12億円と大きく伸びました。
貸出金も前年同期比425億円増の1兆6,533億円、預金は441億円増の2兆2,070億円となっています。金利上昇を銀行本来の収益につなげられている点は良い内容です。
通期予想は据え置き
会社側は今回の赤字を受けても、2027年3月期の業績予想を変更していません。
| 2Q累計予想 | 通期予想 | |
| 経常利益 | 25億円 | 50億円 |
| 純利益 | 25億円 | 55億円 |
年間配当予想も50円で据え置きです。前期の35円から15円の増配予定となっています。
赤字なのに予想を変えない理由は、全東信による損失に対して、今後約55億円の有価証券売却益を計上する予定だからです。本業の利益改善も合わせて、通期計画を維持できると会社は見ています。
気になるポイント
今回の決算は、単純に「48億円の赤字だから悪い」と見るのは少し違いそうです。
本業ではコア業務純益が大きく伸びており、前年まで期待していた金利上昇による銀行収益改善は実際に数字へ出始めています。
その一方で、1社に対する貸出で約58億円もの損失を出したことは無視できません。今後は利益以上に、信用リスク管理をどう立て直すかを確認したいところです。
また、連結自己資本比率は前年同期の9.99%から**6.64%へ低下しています。国内基準の最低水準は上回っていますが、以前より余裕が小さくなっている点には注意が必要です。金融再生法開示債権比率は2.54%から2.48%**へ改善しました。
まとめ
今回の東和銀行は、「決算の数字は悪いが、本業は悪くない」という少し特殊な決算でした。
全東信への貸出で大きな信用コストが発生し、1Qは30億円の最終赤字となりました。一方で、貸出金利回りの上昇などによって資金利益とコア業務純益はしっかり増えています。
次の決算では、本業の利益成長が続いているか、予定している55億円の有価証券売却益で通期計画をカバーできるか、そして信用リスク管理に新たな問題が出ていないか。この3点を中心に見たいと思います。
個人的には、今回の赤字額そのものよりも、一過性の損失を除いた東和銀行の収益力が本当に一段上がったのかを確認する決算だと感じました。
投資は自己責任でお願いします。


出典
出典元一覧(記事中の情報の裏取りに使用した主要な一次情報)
東和銀行公式サイト(IR・中計・決算短信)
https://www.towabank.co.jp/
- 東和銀行|決算短信・業績ハイライト(2026年3月期 第1四半期)
https://www.towabank.co.jp/investors/library/financial - 東和銀行 中期経営計画「TOWA Future Plan I」資料
https://www.towabank.co.jp/investors/plan/ - 東証・金融庁EDINET等の法定開示資料
https://www.release.tdnet.info/ (決算速報など) - 群馬銀行、めぶきFG(足利銀行)IR資料・決算短信
https://www.gunmabank.co.jp/
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