東和銀行[8558] 決算で利益2倍超も株価は停滞中|安定後の評価に注目した話

日経平均が過去最高値を更新した日から数日たちました。いくつか決算を見ていたら目についたのが、東和銀行[8558]です。高進捗率というで気になった東和銀行。しかし、株価は決算後ほとんど反応はなく、なんでだろうと不思議に感じていました。もう少し詳しく内容を見てみないとわからないなと思い調べることに。

目次

東和銀行決算速報|利益“2倍超”の裏にある要因とは?

【決算速報】2026年3月期 第1四半期(2025年4~6月)
業績ハイライト(前年同期比)

項目数値前年同期比コメント
経常収益98億6,600万円+22.6%貸出収益など営業収入が大きく増加
経常利益14億5,300万円+105.8%(2.1倍)信用コスト抑制やコスト効率が奏功
四半期純利益(親会社株主)19億600万円+186.5%(約2.9倍)不動産売却益も寄与した

東和銀行は、2026年3月期第1四半期(2025年4~6月)の連結決算を発表しました。前年同期比で売上高(経常収益)は+22.6%、経常利益は+105.8%と約2.1倍増、さらに四半期純利益は+186.5%でほぼ3倍増という、非常に力強い内容です。主には金利環境改善と信用コストの抑制、さらには不動産売却益が寄与しました。

経常利益ベースで今季業績予想を30億円してるので、進捗率にすると約40%と高進捗率です。昨年度の約64億円をベースに見ても24%弱の進捗率を見せており、まずまずの決算だったことがうかがえます。

ただし、包括利益(銀行は有価証券を持っているのその損益)については今回の短信では未開示だったため、この点は引き続きチェックが必要です。

業績推移と財務指標から見る東和銀行の「改善度」

東和銀行:期末時点 財務指標の推移(2021〜2025年度および2026年Q1進捗)

決算期売上高(百万円)経常利益(百万円)自己資本比率(%)ROE(%)PBR(期末時点・倍)
2021年3月期36,4372,4955.6%1.9 %約0.19 倍
2022年3月期36,9073,7125.3%1.4%約0.16 倍
2023年3月期33,5133,9874.8 %3.4%約0.17 倍
2024年3月期34,1384,3354.9%3.0%約0.23 倍
2025年3月期37,8156,3893.8%4.3 %約0.25 倍
2026年3月期Q1約3.8 % (四半期)約3.3 %(年率換算)約0.33倍(予想)

*期末時点のROE・自己資本比率・PBRを振り返る

2021年度~2025年度にかけて、東和銀行は 売上高や経常利益が漸増しつつ、ROEは4.34 %まで改善しました。いずれも地域金融機関としての財務体質強化の成果と言えます。2026年Q1時点ではPBR(株価純資産倍率)は、2021年の約0.19倍から徐々に上昇し、2025年には約0.25倍となり、市場からの評価が少しずつ改善。その後、Q1進捗では約0.32倍とさらに上昇傾向にあります。

投資視点で注目すべき変化としては、ROEが銀行の収益効率を示す指標として、2.6 % → 4.34 %と改善しており、収益改善や費用抑制が効いている。PBRは依然割安圏(1倍未満)ではあるものの、着実な市場評価向上が読み取れます。

地域密着型ビジネスの全貌|東和銀行の事業内容を解剖

基本的な地方銀行ではあるので、事業内容としては、預金・融資・決済、資産運用や各種コンサルティングを提供しています。群馬・埼玉・東京・栃木の1都3県に店舗網を持つ地域密着型のリテール&コーポレートバンクです。店舗は計91(うち群馬36、埼玉41、東京8、栃木3、他にネット支店等)で、地場の中小企業・個人を中心に取引基盤を築いています。

公共・地域向け:公金関連の取扱や納付チャネルの提供など、地域の決済・収納インフラを担う機能も整備。

営業基盤は中小企業と個人顧客で、法人向けには事業性融資、ビジネスマッチング、事業承継・M&A、私募債(SDGs対応含む)、外為・貿易金融など資金調達と経営支援を一体化したサービスを提供しています。個人向けには預金(普通・定期・外貨)、NISAや投資信託、保険、住宅・教育・自動車ローンなど生活に密着した商品を揃えるています。貸出構成は特定の大口に依存せず、製造業・サービス業・建設・農業・観光など地場産業に広く分散しています。

群馬県はSUBARUなどの自動車産業、食品会社では、カネコ種苗、サービス業では、草津、伊香保など色々な大手企業、開発地域があり、近年は山間部の道路整備も活発です。自治体(群馬県・前橋市・高崎市など)との取引も多く、地方債の引き受けや公金の取扱、学校・病院施設の整備資金、社会インフラ(道路、水道、ごみ処理施設など)で投資、融資を支援しています。

また、58か国・39機関のネットワークを活用し、地元企業の海外進出や輸出入取引もサポートしており、近年はインターネットバンキングやアプリ、電子契約などデジタルチャネルと対面営業を組み合わせたハイブリッド型営業を強化しています。

これら地域経済の活性化と顧客本業の成長を両輪で東和銀行は地域に根差した経営を行っています。

群馬銀行・めぶきFGと徹底比較!東和銀行の立ち位置は?

群馬県内の地方銀行 財務・成長性比較を調べていきます。第二銀行同士の比較よりも地銀は地域性もある産業なので、群馬を中心に事業を行っている群馬銀行、足利銀行を傘下に持つめぶきFGと比較していきます。令和7年8月

銀行名総資産(連結)当期純利益ROEPBR自己資本比率
東和銀行約2.38兆円45億円4.3%約0.35倍3.8%
群馬銀行約10.56兆円439億円7.7%約1.02倍5.3%
めぶきFG(足利銀行など傘下)約21.41兆円582億円5.9%約0.93倍4.5%

まず規模の面では、東和銀行の総資産は約2.4兆円で、群馬銀行(約10.6兆円)の約4分の1、めぶきFG(約21.4兆円)の1/9程度にとどまります。純利益でも、群馬銀行が439億円、めぶきFGが582億円を稼ぐのに対し、東和銀行は45億円と小ぶりな規模感です。

ただし収益性指標であるROE(自己資本利益率)を見ると、群馬銀行の7.7%には届かないものの、めぶきFG(5.9%)との差は限定的です。東和銀行は4.3%とまだ控えめではあるものの、増益を続けながら改善の兆しを見せています。

市場評価を示すPBR(株価純資産倍率)も注目すべきポイントです。

東和銀行は依然として1倍を下回る割安圏にありますが、直近は改善してきており、着実に評価を高めています。一方で群馬銀行やめぶきFGも1%前後まで見直されており、東和銀行の評価改善への期待感は今後も続くとポジティブに捉えられます。

自己資本比率に関しては、短信公表値ベースで、群馬銀行が5.3%台と余裕があるのに対し、東和銀行は3.8%とやや低水準です。

トータルすると、東和銀行は群馬県主要のトップ地銀と比べると規模・利益面では大きな差がありますが、堅実な経営姿勢で着実に利益を積み上げ、市場からの評価も改善傾向にあります。

他の第二地銀と比べれば平均的な立ち位置にあり、今後は「収益力の強化」と「株主価値の向上」が課題となっていくでしょう。

新中期計画「TOWA Future Plan I」で目指す未来像

東和銀行は、2024年4月から2027年にかけて、新しい中期経営計画「TOWA Future Plan I」をスタートしました。テーマは「ともに豊かな未来を創造する」です。地域のお客さまと銀行が、一緒に成長していくための出発点という位置づけで、大きく4つの柱を掲げています。

  • お客さま応援活動の強化
    • 中小企業の事業承継や経営改善の支援、資産形成のアドバイスなど、本業を直接サポートする取り組みをさらに充実させます。
  • ビジネスモデルを支える体制の強化
    • 効率的な店舗運営や人材戦略、デジタル化(DX)の推進、そしてSDGsへの取り組みが含まれます。
  • ローコスト・オペレーションの確立
    • 業務の効率化や、他業種・他行とのアライアンスでコストを抑えつつサービスを広げます。
  • 責任ある経営体制の確立
    • リスク管理やガバナンスの強化を通じて、健全で安定した経営を目指します。

特に東和銀行は、自社のPBR(株価純資産倍率)が長く1倍を下回っていることを課題とし、「資本コストや株価を意識した経営」を明確に打ち出しました。

ROE(株主資本利益率)の向上を通じて企業価値を高めるため、収益力の強化・成長投資・株主還元・IR活動を総合的に進めていく方針です。

この新規計画では「地元密着で培った信頼」と「効率的で持続可能な経営」を両立させ、長期的な成長を目指す戦略であり、地域経済とともに歩みながら、より強い銀行へと進化する姿勢がうかがえます。

地銀再編の波とDX投資|東和銀行の将来性を探る

地方銀行は、地域経済に密着した金融サービスを提供し、地元企業や住民の生活を支える不可欠な存在です。人口減少や市場縮小という逆風はあるものの、金利正常化による収益環境の改善や、DXによるコスト削減・サービス向上の余地が大きいことは好材料です。

さらに、地域再生や脱炭素といった長期ビジョンの社会的テーマへの金融支援も拡大しており、新たなビジネス機会も生まれています。

一方、地方銀行業界は大きな構造転換期を迎えています。

愛知銀行と中京銀行の合併や、千葉銀行と千葉興業銀行の経営統合検討など、広域合併・統合の動きは加速しており、規模の小さい第二地銀は単独生き残りの難易度が増しています。

加えて、日銀のマイナス金利解除と政策金利引き上げにより、貸出金利上昇による利ザヤ拡大の追い風になっていますが、保有債券の含み損拡大というリスクも顕在化しています。

また、スマートフォンアプリ刷新や勘定系システムの共同化、AI・RPAによる業務効率化といったDX投資が競争力確保の重要テーマとなり、店舗網の再編やFinTech連携なども広がりを見せています。

このような環境下で東和銀行は、国内業務を主軸に据えつつ、海外ビジネス支援や近隣地銀との連携でサービス領域のを伸ばすことが急務です。

海外関連収益が全体の中で占める比率は大きくありませんが、会社としても地元企業のグローバル展開を支えることで地域経済との共存共栄を図る「顧客サービス強化の領域」としての位置付けを明確にしています。

さらに、公的資金を2022年に前倒しで完済した後も安定配当を維持するなど、株主や地域社会への責任を果たす経営姿勢も評価されています。将来的には、地域密着の強みを活かした独自経営を維持できるか、それとも再編の波に乗るかが大きな分岐点となるでしょう。

一方で、規模の制約は大きな課題です。

総資産・純利益ともに県内トップの群馬銀行や、足利銀行を傘下に持つめぶきフィナンシャルグループと比較すると数分の一の規模にとどまり、ROEやPBRといった収益性指標も相対的に低水準です。

また、海外拠点や大規模な非金利収益源は持たず、海外ビジネスは取引先支援が中心で、直接的な収益源にはなっていません。このため成長余地は地域内の顧客深耕やサービス多角化に依存しており、人口減少や市場縮小の影響を受けやすい構造です。

業界全体が「統合による体力強化」「金利正常化への対応」「デジタル技術の活用」という三方向から変革を求められる中、将来的に東和銀行は、地域密着の強みを活かした独自経営を維持できるか、それとも再編の波に乗るかが大きな分岐点となるでしょう。今後は持続性と柔軟性が試される局面になりそうです。


まとめ|東和銀行は“割安株”から再評価されるのか?

地方銀行株は依然として割安水準にありますが、業界再編やDX投資、海外投資等で評価の見直しが進む余地も広がっています。また、次回日銀の会合で利上げを行えば、貸出金利の改善による収益拡大も期待されますが、保有債券の含み損拡大というリスクも抱えている状況です。

一方で、利上げが見送られた場合には、貸出金利の改善効果は限定的となり、収益拡大は鈍化しやすくなるものの、保有債券の含み損拡大リスクは和らぐため、財務の安定性を保ちやすいという側面もあります。

この数年デフレからインフレに転換し、金利上昇局面の時代になりつつあります。

その中で、東和銀行は地域密着の強みを活かしつつ、経営効率化や収益多角化を進めることで、事業領域の拡張を図っています。この転換期を成長のチャンスに変えられるか期待していきたいですね。

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