自動車業界の変化を需要にできる企業、小野測器[6858]の話

追記 最近の決算まとめは下にあります。

昨今はイラン情勢によるエネルギー問題の影響でEVシフトが意識されたり、アメリカではトランプ発言でハイブリッド車の需要が再び強まるなど、自動車業界は今、目まぐるしい変化の中にあるように思います。

ここ最近は自動車関連銘柄は軟調な動き続けており、開発負担の増加や需要の不安定化など、不確実性が高く、企業にとっては決して楽な環境ではありません。
そんな中で、今しっかりと増収増益を達成している企業があります。それが小野測器です。

同社は、エンジンやモーターの試験、振動・騒音の測定など、自動車開発の裏側を支える計測機器・試験装置メーカーです。完成車メーカーとは異なり、技術の変化そのものが需要につながる構造を持っているように思います。

業績を見ると、2021年12月期の営業赤字から回復し、2025年12月期は売上高136.29億円、営業利益5.88億円まで改善しました。さらに2026年12月期中間期は、売上高76.91億円、営業利益5.18億円と前年同期の赤字から黒字転換しています。
ただし、利益をけん引する特注試験装置は案件ごとの規模や検収時期で四半期業績が振れやすく、計測機器の採算改善も道半ばです。

公式開示をもとに、5年の業績、配当、受注残、中期計画、競合との差を整理し、受注を利益へ変える力と資本効率を中心に見ていきます。

目次

会社概要

株式会社小野測器は1954年設立、神奈川県横浜市に本社を置く電子計測機器メーカーです。東京証券取引所スタンダード市場に上場し、2025年12月末の連結従業員数は653人、資本金は71億3,420万円です。国内では横浜と宇都宮に技術・生産拠点を持ち、米国、タイ、インド、中国にも展開しています。

創業時に手がけたのは、国産初のジェットエンジン用回転計でした。
その後、自動車産業の成長とともに、回転・速度、寸法・変位、音響・振動、トルク、自動車性能などへ計測領域を広げてきました。センサーで物理量を捉え、表示・収録し、ソフトウェアで解析するまでを一貫して支援しています。

事業の柱は、標準製品を扱う「計測機器」と、顧客ごとに設計する「特注試験装置及びサービス」です。
特注試験装置では、エンジンやモーター、パワートレインの試験に必要な制御、データ収集、安全監視、解析を一つのシステムにまとめます。納入後も修理、改造、校正、受託試験、音響・振動コンサルティングを提供しており、製品販売だけで終わらない点が特徴です。

2025年の用途別売上は、四輪32%、二輪20%、自動車関連13%で、車両関連が全体の65%を占めました。自動車依存度は高いものの、農機・建機、産業機械、電気機器などにも顧客を持っています。

また、ISO 9001の認証に加え、ISO/IEC 17025に基づくJCSS登録事業者として、振動、速度、トルク、音響、回転数など幅広い校正に対応しています。正確な計測と校正能力を土台に、製品開発、品質保証、法規対応まで支えるBtoB企業です。

過去5年の業績推移

小野測器の各年12月期における連結決算を基準に作成しています。売上高、営業利益、経常利益、自己資本比率、ROEは、決算短信や有価証券報告書に記載された通期実績です。PBRとPERはIRBANKの期末の数字を参考にしています。単位は表に記載のとおりです。

年度売上高(億円)営業利益(億円)経常利益(億円)自己資本比率(%)ROE(%)PBR(倍)PER(倍)
2021年12月期98.52△8.59△6.8564.1△9.60.41赤字
2022年12月期109.280.552.1162.01.90.3116.33
2023年12月期115.391.392.0465.83.30.3410.73
2024年12月期118.041.442.1273.39.90.384.15
2025年12月期136.295.886.7974.52.50.4116.71

注目点は、2025年に売上高が前期比15.5%増え、営業利益が4倍超へ拡大したことです。受注高は156.59億円、期末受注残高は90.50億円となり、試験設備の更新、法規認証やデータガバナンス対応、シミュレーションベンチ、受託試験などが伸びました。売上総利益率は原材料高の影響を受けたものの、増収効果で固定費を吸収できています。

年度ごとの回復過程にも違いがあります。
2022年は営業利益0.55億円に対して経常利益2.11億円で、営業外収益の寄与が相対的に大きい状態でした。2023年、2024年も営業利益率は1%台にとどまり、本業の採算が十分に戻ったとは言いにくい水準です。

2025年に営業利益率が4.3%へ上がったことで、ようやく売上拡大が営業段階の利益へつながる形が見えました。今後は、売上高150億円の達成そのものより、営業利益率7%前後を安定して確保できるかが重要です。

一方、2024年のROE9.9%とPER4.15倍は、そのまま本業の収益力を示す数値ではありません。2024年の親会社株主に帰属する当期純利益14.59億円には、旧本社ビル売却による固定資産売却益18.51億円が含まれます。2025年はこの一時利益がなくなったため純利益は3.95億円へ減りましたが、営業利益と経常利益は大幅に増えています

PBRは5年間を通じて0.31~0.41倍にとどまりました。
自己資本が厚い一方でROEが低く、市場は資産を効率よく利益へ変えられるかを慎重に見ています。2026年会社予想の純利益8.00億円を達成すれば、単純計算のROEは改善しますが、受注の波によって翌期に反落すれば評価は定着しません。営業利益とROEが複数期にわたり改善することが、低PBR修正の前提です。

自己資本比率は2021年の64.1%から2025年の74.5%へ上昇し、現金及び現金同等物は37.74億円です。一方、2025年の営業キャッシュ・フロー5.94億円に対し投資支出は5.84億円で、成長投資後の現金創出力が次の論点です。

配当推移と株主優待

小野測器は、連結配当性向30%を目安に、継続的かつ安定的な配当を行う方針です。業績回復に応じて2023年は10円、2024年は30円へ増配しました。2025年は純利益の減少を受けて22円となりましたが、2026年12月期は中間15円、期末15円の年間30円を予想しています。

年度年間1株配当(円)配当性向(%)
2021年12月期5
2022年12月期521.0
2023年12月期1023.8
2024年12月期3021.6
2025年12月期2257.9
2026年12月期
会社予想
3039.1

2025年の配当性向57.9%は目安の30%を上回ります。2026年予想EPS76.75円に対する年間30円の配当性向は約39.1%です。増配余地は利益成長次第であり、30円を最低保証する方針ではない点には注意が必要です。

配当を見るときは、2024年の30円と2025年の22円を単純な減配トレンドと捉えないほうがよいでしょう。2024年は不動産売却益で純利益が膨らみ、2025年は本業利益が改善する一方で一時利益が剥落しました。
会社は配当性向と安定性の両方を考慮しており、業績連動の要素があります。したがって、営業利益10億円規模と年間30円配当を同時に維持できるかが、還元の持続性を測る分かりやすい確認点です。

株主優待制度は公式開示で確認できません。会社は2026年に上限20万株、1.60億円の自己株式取得を実施しました。単年度の還元額より、投資後も営業キャッシュ・フローが積み上がるかが重要です。

決算内容とリスク

2025年12月期は、売上高136.29億円、営業利益5.88億円、経常利益6.79億円、当期純利益3.95億円でした。営業利益率は4.3%で、2024年の1.2%から改善しています。特注試験装置及びサービスの売上高が89.52億円、セグメント利益が6.43億円へ伸びた一方、計測機器は売上高46.65億円、セグメント損失0.49億円でした。

2026年12月期中間期は、特注試験装置及びサービスの売上高54.34億円、利益4.82億円が全社業績を押し上げました。計測機器も売上高22.49億円、利益0.33億円と前年同期の2.18億円の損失から黒字へ戻っています。通期営業利益11.00億円に対する中間進捗率は47.1%で、極端な遅れではありません。

最大の確認材料は受注残90億円台です。ただし、受注残は利益を保証しません。大型装置は納期変更、仕様追加、部材調達、検収時期のずれで、売上計上が四半期をまたぐ可能性があります。

コスト面では、原材料価格、人件費、展示会などの販売促進費、海外体制の強化費用が利益を圧迫します。計測機器は見込生産品を含むため、在庫管理や製品ミックスも重要です。特注試験装置に利益が偏る現状では、案件採算が悪化した場合の影響が大きくなります。

2026年中間期の営業キャッシュ・フロー32.11億円は力強く見えますが、その主因には売上債権の21.82億円減少があります。大型案件の代金回収が進んだ効果であり、毎期同じ規模で繰り返す性質ではありません。キャッシュ創出力を判断する際は、営業利益に加え、売上債権、棚卸資産、前受金の増減を分けて確認する必要があります。利益の黒字化と運転資金の改善を混同しないことが大切です。

自動車メーカーの研究開発費や設備投資の変動は主なリスクです。電動化はモーター、電力、熱、音・振動の計測需要を生みますが、顧客の開発方針次第で設備計画も変わります。更新需要と新規開発需要を分けて見る必要があります。

さらに、受注残の中身はすべて同じではありません。既存設備の更新は納入実績を生かしやすい一方、新しい燃料や電動パワートレイン向けの案件は設計難度が高く、追加工数が生じる可能性があります。修理・校正や受託試験は比較的継続性を期待できますが、大型装置は検収の集中で四半期利益が偏ります。次の決算では、受注高、売上高

事業内容

計測機器

計測機器セグメントは、回転・速度、寸法・変位、音響・振動、トルク、自動車性能などのセンサー、表示器、解析装置、ソフトウェアを扱います。標準化された製品を幅広い顧客へ販売できる一方、製品開発、人員、販売網の費用が先行すると採算が悪化します。2025年は海外拡販のための商品企画・販促人員を増やしたこともあり、0.49億円のセグメント損失でした。

2026年中間期は音響・振動検査機器、設備更新、法規対応などが寄与し黒字化しました。標準製品の販売量とソフトウェア・保守収入が増えれば、特注案件より再現性の高い収益源になり得ます。そのため、売上だけでなく計測機器のセグメント利益を毎回確認する価値があります。

計測機器には、比較的短い納期で販売する製品と、顧客設備へ組み込むシステムが混在します。新製品が売れても、開発費、販促費、海外対応人員が先行すれば利益は残りません。逆に、既存製品の更新、ソフトウェア追加、校正を同じ顧客へ継続販売できれば、顧客獲得費用を抑えられます。製品単価より顧客一社あたりの継続収益を伸ばせるかが採算改善の核心です。

特注試験装置及びサービス

特注試験装置及びサービスは、試験設備、計測制御システム、シミュレーションベンチ、受託試験、修理・校正などで構成されます。2025年の全社売上の約66%を占め、営業利益の中心です。

実機とモデルを組み合わせるVRSは、開発期間の短縮や試作回数の削減を支援します。ベンチマーキングレポートは、電動車を自社設備で測定し、顧客が比較・設計に使えるデータとして販売するサービスです。装置を一度納めて終わるのではなく、データ、試験、保守へ関係を広げることが収益の安定化につながります。

このセグメントでは、装置の設計から納入、検収までに時間がかかります。その後の保守、改造、法規対応、測定メニュー追加まで受注できれば、一つの設備から得られる収益期間を延ばせます。

ベンチマーキングレポートは装置販売とは異なり、同じ測定データを複数顧客へ提供できる可能性があります。個別受注の技術力を標準化可能なサービスへ移すことが、利益率向上の余地になります。ハードの販売だけでなくデータ解析や情報提供までを含む付加価値の高いビジネスモデルを目指しています。

業界の将来性

業界環境

計測機器業界は、製造業の研究開発投資や設備投資に支えられる一方、景気悪化や顧客の投資延期の影響を受けやすい業界です。ただし、測定器は製品の性能、安全性、耐久性、法規適合を確認するために欠かせません。導入後も校正、修理、更新が必要になるため、新規開発に伴う需要だけでなく、品質保証や保守による継続需要も見込めます。

最大市場である自動車分野では、ガソリン車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車が、地域ごとに異なる速度で普及しています。

IEAは、世界の電気自動車販売が2025年に2,000万台を超え、2026年には2,300万台新車販売の28%まで増えると予測しています。一方で、すべての地域が一斉にEVへ移行するわけではなく、自動車メーカーは複数の動力方式を並行して開発する必要があります。

計測会社にとって重要なのは、EV化そのものよりも、動力方式の多様化によって試験対象や評価項目が増えることです。開発方法も変化しています。モデルベース開発やシミュレーションの活用が進んでいますが、仮想モデルが正しいかを確認するには、実際の車両や部品から得られる測定データが必要です。

そのため、シミュレーションの普及によって実測が不要になるのではなく、むしろ実測データの精度や信頼性に対する要求が高まる可能性があります。自動車以外では、工場設備の老朽化や人手不足を背景に、振動や音から異常を見つける状態監視・予知保全の需要が高まっています。

半導体製造装置、空調、モーター、産業機械、インフラでも、静音化、省エネルギー、安全性の評価が必要です。小野測器の2025年売上の35%は車両関連以外であり、設備保全向け製品や汎用計測器の育成は、自動車分野への依存を和らげるうえで重要です。競争面では、低価格センサーの普及、海外大手による統合計測システム、顧客による計測業務の内製化が逆風となります。

一方で、測定精度、過去データとの比較、校正の証明、既存設備との連携には長期的な信頼が必要です。そのため、一度採用されると他社製品へ切り替えにくい面もあります。

計測機器業界を評価する際は、市場の成長性だけでなく、受注高、受注残、案件の検収時期、計測機器の利益率、校正・保守による継続収入を確認する必要があります。

業界の将来性

電動化、ADAS、自動運転、ソフトウェア定義車両の普及で、測る対象はエンジン中心からモーター、電力、熱、音・振動、制御ソフトへ広がっています。

モデルベース開発では実機試験を完全になくすのではなく、シミュレーションと実測データの整合が重要になります。計測と解析を一体で提供できる企業には、開発効率化という新しい需要があります。

とくに電動車では、エンジン音が小さくなることで、モーターやギア、タイヤ、風切り音など別の音が目立ちます。航続距離を伸ばすにはエネルギー損失や熱の測定も必要です。
さらに、制御ソフトの更新後も実機で安全性や快適性を確かめなければなりません。測定対象の入れ替わりはありますが、開発の複雑化が計測項目と解析量を増やす方向は、小野測器にとって事業機会です。

予知保全、騒音規制、品質データ管理も需要になります。一方、センサーの低価格化や海外大手との競争は強まるため、計測ノウハウ、解析ソフト、試験設備、サービスを束ねる力が重要です。

その中での立ち位置

小野測器は、自動車開発現場で積み上げた回転、音・振動、トルクなどの計測技術と、特注システムをまとめるエンジニアリング力を持ちます。大手総合計測メーカーより規模は小さいものの、顧客の課題に合わせた装置とサービスを組み合わせられる点が特徴です。

課題は海外売上比率と収益性です。2025年の海外売上高は23.20億円で、全体の約17%にとどまります。会社は2027年に海外売上35億円、比率24.1%を目標としています。国内自動車顧客への深い対応力を保ちながら、標準製品を海外で再現性高く販売できるかが、中長期の立ち位置を左右します。

国内で顧客ごとの特注対応を積み上げた企業が海外へ広がる際には、言語、法規、保守部品、現地技術者の確保が壁になります。装置を輸出するだけでは、故障や仕様変更へ迅速に対応できません。

米国、タイ、インド、中国の拠点と代理店を使い、標準製品の販売から校正・技術支援へ広げられるかが重要です。海外売上だけでなく、海外事業の粗利とサービス体制も評価したいところです。

競合比較

振動試験で重なるIMV、音響・振動計測のリオン、自動車計測大手の堀場製作所と比較します。数値は各社の直近通期実績、PBR・PERは各決算期末の終値基準です。

企業対象期売上高(億円)営業利益(億円)営業利益増減率(%)ROE(%)PBR(倍)PER(倍)
小野測器2025年12月期136.295.88+307.42.50.4116.71
IMV2025年9月期179.4123.15+25.317.52.4915.31
リオン2026年3月期285.0143.61+8.110.41.009.99
堀場製作所2025年12月期3330.81530.40+9.710.71.9318.07

企業紹介

・小野測器
回転、音響・振動、トルクなどの計測機器と、自動車開発向けの特注試験装置を組み合わせる企業です。受託試験、校正、ベンチマーキングデータまで提供し、顧客の開発工程へ深く関与する点が特徴です。

・IMV
振動試験装置、振動計測システム、受託試験を主力とし、製品の耐久性や信頼性評価を支援します。振動を「与える」「測る」「試験を請け負う」を一体で提供し、小野測器とは振動・試験サービスで接点があります。

・リオン
騒音計、振動計、地震計などの環境機器に加え、補聴器・医用検査機器、微粒子計測器を展開します。音響・振動計測では重なりますが、医療と半導体関連を持つため、需要源が小野測器より分散しています。

・堀場製作所
自動車、半導体、環境、科学、医用の各分野に分析・計測機器を供給する世界展開の大手です。自動車の排ガス、電動パワートレイン、試験自動化で競合し、製品群、海外網、研究開発規模に大きな差があります。

比較

小野測器の2025年営業利益率は4.3%です。IMVは12.9%、リオンは15.3%、堀場製作所は15.9%で、小野測器の収益性は比較4社の中で明確に低い状況です。売上規模の差だけでなく、標準製品の競争力、海外比率、事業分散、案件採算が利益率の差として表れています。

比較表の営業利益増減率には注意が必要です。小野測器の307.4%増は、前期利益が1.44億円と小さかった反動が大きく、利益額や利益率で競合を追い越したことを意味しません。IMVは23.15億円、リオンは43.61億円、堀場製作所は530.40億円の営業利益を確保しています。増益率、利益額、利益率を同時に見ることで、回復局面と高収益企業を区別できます。

一方、小野測器のPBR0.41倍は他社より大幅に低く、市場が純資産に対する収益力を慎重に見ていることを示します。低PBRだけを割安と判断するのではなく、ROE2.5%が資本コストを下回る状態を改善できるかが重要です。2026年会社予想どおり純利益8.00億円ならROEは上向く可能性がありますが、一度の好決算ではなく複数期の利益継続が再評価の条件になります。

IMVは振動試験への集中、リオンは事業分散、堀場製作所は世界規模の販売網が強みです。小野測器は規模ではなく、顧客密着型の試験・計測を継続収益へ変えることが課題です。

リオンは医療機器と微粒子計測器を持つため、自動車投資が鈍っても別の需要で補える可能性があります。堀場製作所は半導体、環境、科学、医用まで広く、海外売上と研究開発の規模も異なります。小野測器には、すべての分野を追うより、音・振動、回転、トルクと試験システムを深く組み合わせる戦略が合います。狭い市場で高い付加価値を取れるかが競合比較の結論です。

中期経営計画と成長戦略

中期経営計画

中期経営計画「Challenge Stage Ⅳ」の対象期間は2025年から2027年です。基本方針は「はかるを極め、わかるに挑み、世界につなげる」で、計測機器を売るだけでなく、顧客と課題を解くビジネスへの変革を掲げます。

  • 2027年売上高145億円
  • 営業利益10億円
  • ROE6%以上
  • 海外売上高35億円、海外売上比率24.1%
  • 3年間の開発投資35~40億円、設備投資40億円

2025年実績は売上高136.29億円、営業利益5.88億円で、売上目標まで8.71億円、営業利益目標まで4.12億円です。2026年会社予想は売上高150.00億円、営業利益11.00億円と、計画最終年度目標を一年前倒しで上回る水準です。焦点は売上達成より、営業利益10億円規模を継続できる収益構造になるかへ移っています。

2024年実績を起点にすると、計画は3年間で売上高を22.8%、営業利益を約7倍へ伸ばす設計です。売上の伸び以上に利益を増やすには、価格転嫁、製品構成、設計・生産の効率化、サービス比率の上昇が必要です。2026年に営業利益11億円を達成しても、特定の大型案件だけで押し上げられた場合は再現性が弱くなります。計測機器と特注試験装置の両方が黒字になることが、計画達成の質を高めます。

成長戦略

第一の柱はデジタル開発への対応です。
シミュレーションと実機試験を組み合わせるVRS、計測制御ソフト、データ解析を拡充し、顧客の試作回数と開発工数の削減を狙います。小野測器は実測に強みがあるため、モデルの妥当性確認に必要な高品質データを提供できるかが差別化になります。

第二の柱はサービス収益です。
修理・校正、受託試験、技術コンサルティング、ベンチマーキングレポートを増やせば、設備納入の波を和らげられます。特にベンチマーキングは自社製品を使って車両を測り、得た知見を製品開発へ戻す循環があります。データ販売が継続契約へ発展するかを確認したいところです。

第三の柱は海外販売です。
2025年の海外売上23.20億円から、目標35億円へ11.80億円の上積みが必要です。代理店、現地サポート、標準製品を整え、計測機器とサービスを再現性高く売れるかが鍵です。

第四の柱は顧客接点への投資です。豊田市の中部リンケージコモンズは2027年9月の稼働予定で、試験、デモ、技術相談の拠点になります。設備投資と減価償却費が先行するため、稼働率と案件獲得への寄与が重要です。

これらの戦略が成功するには、計測機器の赤字定着を避け、特注試験装置の高い受注残を適正利益で消化し、サービスと海外売上を増やす必要があります。開発投資35~40億円と設備投資40億円は同社の規模に対して大きく、投資額だけでなく、投資後の営業利益率とROEで成果を測ることが重要です。

投資の回収には時間差があります。開発費は新製品の発売前から発生し、設備投資は稼働後に減価償却費となります。短期的には利益率を押し下げても、販売量、受託試験件数、顧客単価が増えれば中期では回収できます。確認したい指標は、研究開発費と設備投資に対する売上増加額、営業利益増加額です。投資を減らして一時的に利益を作るより、投資後も目標利益を確保できるほうが評価できます。

強みと弱み

強み

複数の物理量を扱う計測技術

回転・速度、寸法・変位、音響・振動、トルクを横断して扱えるため、単一センサーではなく試験全体を設計できます。自動車の電動化でも、モーター回転、トルク、効率、熱、NVHを同時に評価する必要があります。複数製品と解析ソフトを組み合わせる提案力は、顧客の開発工程へ深く入る土台です。

受注残と顧客基盤

2025年末の受注残90.50億円は年間売上の約66%、2026年中間期末も90.40億円を維持しました。法規対応、設備更新、電動化、シミュレーション開発など需要源が複数あります。顧客の研究開発・品質保証に組み込まれた案件基盤は、短期間で代替されにくい強みです。

受注残が年間売上の半分を超える規模にあることで、期初時点の売上可視性は高まります。また、既存設備の更新や法規対応は、過去の納入仕様を理解する企業が提案しやすい分野です。ただし、可視性と採算は別問題なので、受注残を予定どおり検収し粗利を確保する実行力まで含めて強みと評価する必要があります。

財務余力

2025年末の自己資本比率は74.5%、現金及び現金同等物は37.74億円です。中期計画で開発投資35~40億円、設備投資40億円を掲げても、資金調達の選択肢を持てます。財務の安定性は景気変動への耐久力になりますが、余剰資本を低収益のまま抱えず成長へ配分することも必要です。

弱み

低い利益率と資本効率

2025年の営業利益率4.3%、ROE2.5%は競合比較で低い水準です。2026年計画を達成すれば改善しますが、過去5年では営業赤字から低利益率まで振れています。PBR0.41倍は安さだけでなく、資本を十分な利益へ変えられていないという市場評価も映しています。

自己資本比率74.5%は安全性を高める一方、利益が小さいとROEの分母だけが大きくなります。現金や資産を持つこと自体では企業価値は増えず、開発、設備、海外展開、還元へ適切に配分して利益を生む必要があります。安全性の高さを資本効率の改善へつなげられていない点が、強い財務と低いPBRが同居する理由です。

特注案件への利益依存

2025年は特注試験装置及びサービスの利益6.43億円に対し、計測機器は0.49億円の損失でした。大型案件の検収がずれると、売上と利益が四半期をまたぎます。仕様変更、部材価格、工数超過も採算を左右するため、受注高だけでなく粗利を確保した案件管理が欠かせません。

自動車・国内市場への偏り

自動車産業との長い取引は強みですが、顧客の設備投資計画や開発方式の変化を受けやすくなります。2025年の海外売上比率は約17%で、堀場製作所のような世界展開企業と比べ販売網は限定的です。中期計画の海外売上35億円を達成し、地域と業種の分散を進められるかが課題です。

株価シナリオ

上昇シナリオ

2026年通期の売上高150億円、営業利益11億円を達成し、2027年も10億円規模の営業利益を維持するシナリオです。
計測機器の黒字が定着し、受注残90億円前後を適正利益で消化、海外売上とサービス収益も伸びれば、ROE6%以上が現実味を帯びます。低PBRの解消には、利益の水準より継続性の証明が効きます。

この場合、営業利益率は7%台へ上がり、一時利益に頼らないEPSの増加も期待できます。年間30円配当と自己株買いを続けても成長投資を賄えるキャッシュ・フローが確認されれば、資産株から利益成長株へ見方が変わる可能性があります。上昇を判断する材料は、通期上方修正より翌年度計画の利益水準です。

中立シナリオ

受注残を背景に売上は増えるものの、人件費、原材料、販促、設備投資負担で営業利益率が5~7%程度にとどまるシナリオです。案件の検収時期で四半期ごとの振れはあっても通期では黒字を維持し、年間配当30円前後が続きます。株価は純資産価値を意識しながら、ROE改善の確度を待つ展開が想定されます。

中立では、受注残は売上を支えるものの、計測機器の販促費やCLCの先行費用が利益を相殺します。ROEは改善しても目標6%の前後で伸び悩み、PBRは低位から緩やかに動くと考えられます。四半期の黒字・赤字に反応するより、12か月累計の営業利益率で進捗を見るのが適しています。

下落シナリオ

自動車顧客の設備投資延期、大型案件の検収ずれ、原価超過が重なり、営業利益が会社計画を下回るシナリオです。
計測機器が再び赤字となり、CLCなどの先行費用も増えると、利益と営業キャッシュ・フローが悪化します。配当性向30%の方針では利益減少時に減配余地があるため、資産価値だけを下値の根拠にするのは危険です。

とくに、受注高が売上高を下回る状態が続き受注残が減少する場合は、翌期以降の売上可視性も下がります。
棚卸資産や売上債権が増えながら営業キャッシュ・フローが悪化すれば、案件の進行と回収に注意が必要です。下落シナリオでは、業績下振れ、受注残減少、運転資金悪化が重なるかの確認が必要です。

全体まとめ|開発費をペイできるか

小野測器は、電子計測機器と自動車開発向け特注試験装置を組み合わせ、顧客の研究開発と品質保証を支える企業です。回転、音・振動、トルクなどの実測技術に、解析ソフト、受託試験、校正、データ販売を重ねています。

2021年の営業赤字から回復し、2025年は売上高136.29億円、営業利益5.88億円となりました。2026年中間期は売上高76.91億円、営業利益5.18億円で黒字転換しています。受注残90.40億円と特注試験装置の利益改善は、通期計画を考えるうえで大きな材料です。

ただし、2024年の純利益には旧本社売却益が含まれ、2025年の計測機器はセグメント赤字でした。過去の一時利益や低いPBRだけで判断せず、本業の営業利益率、計測機器の採算、営業キャッシュ・フローを追う必要があります。

中期計画は2027年売上145億円、営業利益10億円、ROE6%以上を掲げます。2026年会社予想は売上150億円、営業利益11億円で数値目標を上回りますが、一年前倒しの達成より、その利益を翌期以降も維持できるかが重要です。

成長余地は、VRS、ベンチマーキングレポート、受託試験・校正、海外販売にあります。装置販売の波をサービス収益でならし、海外売上35億円へ近づければ、評価は変わります。

比較企業より営業利益率とROEは低く、特注案件と国内自動車市場への依存も残ります。開発投資35~40億円、設備投資40億円が利益率へ結び付くかが課題です。

今後の確認点は、受注残の売上・利益化、計測機器の黒字定着、営業利益10億円規模の継続、年間配当30円の維持です。これらがそろえば低PBRの修正余地が生まれ、崩れれば資本効率の低さが改めて意識されるでしょう。

小野測器を評価するときは、「電動化関連」「低PBR」という短い言葉だけでは不十分です。電動化で増える計測需要を実際の受注へ変え、その受注を利益と現金へ変え、投資後もROEを高められるかという順番で確認する必要があります。技術力、受注、利益、キャッシュ、資本効率が一本につながるかが、この銘柄の中長期的な評価軸となりそうです。。

今後は、最初に受注高と受注残で将来の仕事量を確認し、次に二つの主力セグメントの売上と利益で採算を確認していくと業績の温度感が取れそうです。大型案件で数字が振れやすい企業だからこそ、前年同期比だけでなく、通期計画への進捗と過去12か月の利益を併用してみていきたいですね。

最新決算|2026年12月期 第2四半期(中間期)累計

決算ハイライト

小野測器の2026年12月期中間期(2026年1月1日~6月30日)は、売上高が前年同期比21.2%増の76.91億円となり、営業利益5.18億円、経常利益5.73億円、親会社株主に帰属する中間純利益3.53億円と、前年同期の赤字から黒字へ転換しました。期首の受注残を売上へ結び付けたことに加え、特注試験装置及びサービスが伸びています。

指標2026年12月期
中間期
前年同期前年同期比
売上高(億円)76.9163.43+21.2%
営業利益(億円)5.18△0.80黒字転換
経常利益(億円)5.73△0.38黒字転換
親会社株主に帰属する
中間純利益(億円)
3.53△1.21黒字転換
EPS(円)33.98△11.75
自己資本比率(%)73.974.5
(前期末)
△0.6pt

通期予想と進捗

2026年12月期の通期予想は据え置かれ、売上高150.00億円、営業利益11.00億円、経常利益12.00億円、親会社株主に帰属する当期純利益8.00億円を見込みます。中間期の進捗率は売上高51.3%、営業利益47.1%、経常利益47.8%、当期純利益44.1%です。受注残高は90.40億円と前年同期比11.3%増ですが、原材料価格、人件費、販促費の増加を吸収できるかを確認したいところです。

配当・株主還元

中間配当は1株15円、期末配当予想も15円で、年間30円の予想を据え置きました。前期の年間22円から8円の増配予想です。中間期には自己株式取得による1.59億円の支出もありました。

業績背景

受注高は76.81億円と前年同期比3.2%増えました。音響・振動検査機器、既存試験設備の更新、法規認証・データガバナンス対応、新燃料関連の需要が売上を支えています。

営業キャッシュ・フローは32.11億円の収入で、売上債権が21.82億円減少したことが大きく寄与しました。一方、会社は原材料価格の上昇や販売促進費の増加を挙げており、通期予想は変更していません。

セグメント別動向

計測機器は売上高22.49億円(前年同期比9.1%増)、セグメント利益0.33億円(前年同期は2.18億円の損失)でした。特注試験装置及びサービスは売上高54.34億円(27.1%増)、セグメント利益4.82億円(239.4%増)となり、全社の黒字転換をけん引しました。試験装置の更新やシミュレーションベンチ、修理・校正、受託試験、ベンチマーキングレポートの需要が続いています。

決算まとめ

中間期は増収と黒字転換を達成し、特注試験装置及びサービスの利益改善が明確でした。

ただし、通期計画に対する利益進捗は5割弱で、原材料高や販管費増加も続いています。次回は、90.40億円の受注残を売上と利益へ変えられるか、計測機器の利益改善が続くか、通期予想と年間配当30円が維持されるかを確認します。

今回確認した公式資料

前回の決算:2026年12月期 第1四半期

第1四半期累計は売上高44.48億円(前年同期比19.4%増)、営業利益4.23億円(28.0%増)、経常利益4.16億円(27.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益2.67億円(13.1%増)でした。EPSは25.67円、自己資本比率は73.1%で、通期予想と年間配当30円の予想は据え置かれていました。公式決算短信

投資は自己責任でお願いします。

参考資料・出典

参考資料・出典

・株式会社小野測器「会社概要」

・株式会社小野測器「統合報告書2026」

・株式会社小野測器「2025年12月期 決算短信」

・株式会社小野測器「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信」

・株式会社小野測器「有価証券報告書」

・株式会社小野測器「中期経営計画 Challenge Stage Ⅳ」

・株式会社小野測器「決算関連情報・IR関連リリース」

・International Energy Agency「Global EV Outlook 2026」

・経済産業省「モビリティDX戦略2025」

・IMV株式会社、リオン株式会社、株式会社堀場製作所の決算資料

・IR BANK「小野測器(6858)」および各比較企業の株価指標

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