防音壁とフェンスで暮らしを守る―低PBR銘柄の積水樹脂[4212]の実力の話

2026年3月期第2四半期(中間期:2025年4月1日〜9月30日)連結決算については一番下にあります。

ここ数年、クマの出没が相次ぎ、「人と自然の境界線をどう守るか」という課題が全国で注目されています。この課題を解決できる可能性がある会社を引き続き調べました。

害獣被害を防げる銘柄として、積水樹脂(4212)が気になったので今回注目しました。積水樹脂は道路や公園、河川、防音壁、フェンス、獣害柵、獣害ネットなど、“人の生活空間を守る素材”を全国に提供しています。

道路や公園のフェンス、防音壁、景観製品などを通じて、私たちの暮らしの安全と安心を支えてきたインフラメーカーです。害獣ネットやフェンスのような“自然との境界”から、都市の景観・環境を守る資材まで、派手さはないものの、「当たり前の日常」を支える積水樹脂の存在感は、インフラ更新や害獣防止、防災意識の高まりとともに、さらに大きくなりつつあります。

それでも株式市場では、まだ割安圏にとどまり低PBRであるこの企業。今回は、「安全」「共生」「再評価」という3つの視点から、積水樹脂の魅力と今後の可能性を見ていきます。

目次

会社概要|防音壁・フェンスから害獣ネットまで

積水樹脂株式会社は、大阪市北区に本社を構えるプラスチック加工の老舗メーカーです。
1954年の創業以来、積水化学工業グループの一員として、社会インフラや生活空間を支える資材の開発・製造・施工を手がけてきました。1973年には株式上場を果たし、現在は東証プライム市場に上場する安定企業です。

事業領域は幅広く、主力は公共インフラ関連製品
高速道路や都市部の防音壁・遮音壁をはじめ、ガードレールや反射鏡、道路標識、電子表示板などの交通安全資材、さらに歩道フェンスや街路灯、ベンチといった景観製品まで、私たちの暮らしのあらゆる場面に関わっています。

また、住宅や建築分野ではエクステリア製品(メッシュフェンス、目隠し塀、自転車置き場など)を展開しています。
さらに、物流や農業向けには梱包バンドや防獣ネット、園芸フィルムなども手がけ、公共から民間まで多様な分野をカバーしています。

連結従業員数は約1,609名、資本金は123.3億円。
企業理念として「複合技術による価値ある製品の創造とサービスを通じて、社会の安全・安心・環境に貢献する」ことを掲げ、
素材技術と施工ノウハウを融合させた独自の製品開発を続けています。

過去5年間の業績推移

表では、積水樹脂(4212)の過去5年間(2021〜2025年3月期)の主要経営指標をまとめています。
売上高・経常利益の推移に加え、収益性(ROE)や財務健全性(自己資本比率)、株価指標(PBR・PER)までを一覧化し、業績の流れと株式評価の両面を把握できる内容です。

表のポイント

  • 過去5年間で売上は横ばいから回復傾向に転じたものの、利益は減少基調で推移
  • 自己資本比率は7割前後と高水準を維持し、財務基盤の安定性が際立つ
決算期 売上高(億円) 経常利益(億円) 自己資本比率(%) ROE(%) PBR(倍) PER(倍)
2021年3月期647.4112.669.27.00.8412.0
2022年3月期659.0114.067.37.20.689.61
2023年3月期659.095.068.36.10.7612.7
2024年3月期627.969.770.44.80.8018.2
2025年3月期742.354.568.73.70.6217.8

<解説>積水樹脂の業績推移と背景

積水樹脂の業績は、この5年間で「売上は安定的、利益はやや減少傾向」という流れをたどっています。
特に、原材料高やエネルギーコストの上昇が利益を圧迫する構図が続いています。

まず2021年3月期は、売上647億円・経常利益113億円と堅調な内容でした。
コロナ禍でも景観資材や住宅向けエクステリアの需要が底堅く、公共インフラ関連の受注も堅調。
防音壁やガードレールなど社会基盤を支える製品が好調で、営業利益率・ROE(7.0%)ともに良好でした。
この時点では、まだコスト上昇の影響は限定的でした。

続く翌2022年3月期は、売上659億円(+1.8%)・経常利益114億円(+0.4%)と微増。
一見堅調に見えますが、原材料費の上昇がじわりと利益を圧迫し、
ROEは7.2%、PBR0.68倍と市場評価は依然として控えめでした。
スポーツ施設やイベント関連は回復途上で、採算面ではやや重さが残りました。

2023年3月期は、売上658億円と横ばいながら、経常利益95億円(▲17%)と減益。
原材料(樹脂・金属)の価格上昇や物流費高騰が利益を圧迫し、
ROEは6.1%まで低下しました。
コロナ禍によるスポーツ施設工事の遅延も影響し、収益性の悪化が鮮明になった時期です。

2024年3月期は、売上627.9億円(▲4.7%)・経常利益69.7億円(▲26.7%)と減収減益。
景観・エクステリアなど利益率の高い製品群の比率が下がったことに加え、原材料やエネルギーコストが高止まりし、営業利益率・ROEともに4.8%まで低下しました。
一方で、自己資本比率は70.4%と高く、財務の健全性は維持。
短期的な利益は落ち込みましたが、研究開発や製品リニューアルなど、“次の成長に向けた先行投資”を継続した年度でもあります。

そして最新の2025年3月期では、売上742.3億円(前期比+18%)と増収。
2024年11月の子会社吸収合併や2024年12月の理研工業取得の寄与が反映し、
事業規模が一段と拡大しました。
しかし、原材料・電力コストの高止まりや販売構成の変化が響き、
経常利益54.5億円(▲21.8%)・ROE3.7%と低下
事業拡大フェーズにありながらも、利益面では課題を残す結果となりました。

一方、財務体質は非常に健全です。
自己資本比率は70%前後と高水準で、借入依存も低く、長期的な経営安定性に優れています。
一方で、ROEは7%→3%台へと低下傾向を示し、
資本効率の改善が今後の経営課題となっています。
PBR0.6倍台・PER17倍前後と、株式市場での評価は依然として割安圏にありますが、
それは“安定しているが伸び悩む企業”という投資家の見方を反映しているとも言えます。

積水樹脂の直近5年は「売上の底堅さに対し、コスト高が利益を圧迫した期間」と整理できます。
とはいえ、社会インフラや防災・景観関連の需要は今後も続く見通しであり、中期経営計画で掲げる収益構造の改善や新素材開発の成果が、今後の株価評価に大きく影響する局面となっています。

事業内容の解説|(分野・製品・注目領域)

積水樹脂の事業は非常に幅広く、大きく分けると公共分野民間分野の2本柱で構成されています。
どちらも「人と街の安全・快適な暮らしを支える」という点で一貫しており、同社の強みが生きる領域です。

公共分野(社会インフラを支える領域)

公共向けには、「都市環境事業」「交通・標識事業」「景観事業」「スポーツ施設事業」があります。

  • 都市環境事業:高速道路や鉄道沿線の防音壁・遮音壁、吸音パネルなど、騒音対策製品を展開。高度経済成長期に整備されたインフラの更新需要にも対応しています。
  • 交通・標識事業:道路標識や路面標示材(白線、道路鋲)、カーブミラー、LED式可変標識などを提供し、交通安全を支えています。
  • 景観事業:歩行者用防護柵(ガードパイプ)、車両用防護柵(ガードレール)、公園ベンチやシェルター、太陽光街路灯など、都市の景観と安全を両立する製品群を展開。
  • スポーツ施設事業:競技場や学校向けに、人工芝やグラウンド排水システム、フェンスなどを提供しています。

これらはいずれも「目立たないが、なくては困る」社会基盤を支える製品群であり、防災・安全の観点から安定した需要が続いています。

民間分野(暮らしと産業を支える領域)

民間向けでは、「住建(住宅・建材)事業」と「総物(物流)・アグリ事業」を展開しています。

  • 住建事業:住宅や商業施設の外構を彩るエクステリア製品を展開。
    メッシュフェンス、目隠し塀、防音フェンス、自転車置き場、手すりなどを中心に、デザイン性と機能性を両立した製品を提供しています。
  • 総物・アグリ事業:物流向けの梱包バンドやストレッチフィルム、梱包機械などのほか、
    農業用資材(ビニールハウス用フィルム、緑化用ネット、害獣柵、害獣ネットなど)も取り扱っています。

公共分野が「社会を守る」事業だとすれば、民間分野は「生活を支える」領域。
どちらも積水樹脂の“安全・安心・快適”という企業理念を具体化した事業群です。

注目領域①:インフラ更新・防災関連

現在、同社で注目される分野のひとつがインフラの老朽化対策です。
高度経済成長期に整備された高速道路や鉄道の防音壁は更新期を迎えており、同社はより耐久性・景観性を高めた新世代防音壁を開発。

また、老朽化した橋梁やトンネルからの落下物を防ぐ剥落防止ネット・システムもグループ会社を通じて展開しており、公共施設の安全性向上に貢献しています。
今後も国や自治体によるメンテナンス投資が続くと見られ、この分野は同社の中核事業として成長が期待されています。

注目領域②:住生活・地域安全関連

もうひとつの注目分野は、住宅・地域の安心と快適さに関わる製品群です。
防音とプライバシーを両立した「防音目隠し塀」や、紫外線をカットするポリカーボネート屋根のカーポート、盗難防止機能を備えたサイクルポートなど、“暮らしの防災・防犯”に直結する製品を強化しています。

また、近年は鳥獣害対策にも注力しており、獣害柵や獣害ネット等など、農山村地域の課題に応える製品をトータルで提供。
自然との共生を意識した製品開発が進んでいます。

今後の展望

積水樹脂は、長年培ってきた樹脂加工技術に加え、IoTやデジタル要素を組み合わせた製品開発にも踏み出しています。スマート標識、通信連動型照明、省力化を意識した新梱包システムなど、「安全×快適×効率化」を融合した新サービス創出が今後のテーマです。

比較企業の業績|4社比較で見える積水樹脂の現在地

各社の売上高・経常利益は有価証券報告書・決算短信(2024年10月期、2025年3月期、6月期)に基づき、単位はいずれも億円換算で統一しています。その他、(%)、(倍)でそれぞれ記載してあります。
「PBR・PERは各社直近期末または掲載時点の市場データ(IRバンク/株探等)に基づく」

要約

  • 積水樹脂は規模・財務の安定性に強みがある一方で、利益率やROEで競合に劣る構図
  • 今後は高収益体質への転換が、株価評価(PBR0.6倍→1倍超)改善の鍵

※ 売上・経常は各社最新期、PBR・PERは各社直近期末または掲載時点の市場データに基づく(期末は異なる)

企業名売上高
(億円)
経常利益
(億円)
営業利益増減率(%) ROE(%)PBR(倍)PER(倍)
積水樹脂742.354.5-20.43.70.6217.8
萩原工業331.021.9-38.25.20.7013.3
タカノ240.25.3+4.81.60.3421.0
前田工繊641.1122.6+9.113.91.8613.6

各社解説

萩原工業(7856)

岡山県倉敷市に本社を置くプラスチックシートや土木資材のメーカーです。
主力の「ブルーシート」「土木シート」「産業用フィルム」に加え、リサイクル樹脂事業や防災関連製品も手がけています。

→ 土木・産業資材の需要は底堅いものの、原材料高と海外拠点の採算悪化で利益が大きく落ち込みました。

タカノ(7885)

長野県岡谷市に本社を置くエクステリア製品やオフィス家具、精密機器などを手がけるメーカーです。カーポートやテラスなどの外構製品を主力とし、住宅関連市場で安定したシェアを持っています。

→ 住宅分野の堅調な需要とコスト管理の改善により、営業利益は前年を上回り小幅な増益を確保しました。

前田工繊(7821)

土木資材・防災インフラ分野に強みを持つメーカーで、法面保護材や河川護岸材、補強土壁など「国土強靭化」関連の需要を取り込んでいます。

全国の自治体・建設会社と連携し、災害対策・インフラ長寿命化を支える事業を展開しています。

公共投資の拡大を追い風に、防災・補修関連の受注が堅調で、インフラ更新需要が引き続き収益を下支え。

積水樹脂にとっての“競合と比べての課題とチャンス”

課題:利益率が低く、ROEも3〜4%台と他社と同様に“成熟産業らしい低収益性”の枠を出ていません。加えて原材料・エネルギーコストの上昇、構成製品の利益率低下(売上構成の変化)などが利益を圧迫している点が、昨今の決算で明らかになっています。

チャンス:インフラ更新ニーズ、防音壁・遮音壁・防獣フェンスなど安全・共生”をテーマにした需要が今後も続くという観点では、競合他社と同じ土俵に立ちながらも規模面で有利です。

また、前田工繊のように大型案件・補強材・景観材で優位性を示している企業をベンチマークとすることで、積水樹脂も“製品ミックスの改善”や“資本/利益効率の改善”を通じて差別化できる余地があります。

PBR1倍未満という現状の市場評価を変えるには、ROEを現状(約3.7%)から6〜8%台に引き上げることで“割安認識の是正”が期待できます。前田工繊のようにROE10%超を達成していれば、市場評価も向上しやすいからです。

中期経営計画と成長戦略|守りから攻め

積水樹脂は、2024年5月に発表した「中期経営計画2027」のもと、経営基盤の強化と収益力の底上げに取り組んでいます。計画の軸となるのは「人材育成」「事業成長」「サステナビリティ」「資本効率」の4つ。どれも“成熟産業からの脱却”を見据えた改革です。

人材・組織改革:人を育て、強い現場をつくる

まず注力しているのが人材戦略の再構築です。
2024年4月には、人事・総務・教育を統合した「人財本部」を新設。
現場のスキル向上やダイバーシティ推進、働き方改革を一体的に進め、生産性と技術力を底上げする体制を整えました。積水樹脂の製品群は現場での設計対応や施工技術に支えられており、“人材=競争力”という考えが根底にあります。

成長戦略:高付加価値化と地域強化へ

成長戦略では、「高付加価値製品への転換」と「地域密着型の展開」が柱です。
重点エリアに掲げる関東・北海道では、設計対応力や営業ネットワークを強化。
製品面では、景観・防音・エクステリアなどで新素材やデザイン性の高い製品を増やし、単価と利益率の向上を目指しています。

さらに、スポーツ施設のメンテナンスサービス化など、モノ売りからサービス収益への転換にも挑戦。
2022年にグループ化したアルミ樹脂複合板メーカー2社も順調に寄与しており、M&Aを活かした事業拡大も進行中です。

サステナビリティ経営:環境対応が次の成長軸

積水樹脂は、プラスチック加工メーカーとして環境対応の高度化を重視しています。
再生樹脂やリサイクル素材を使った製品、CO₂排出を抑えた脱炭素型フェンスや照明などを次々と展開。
また、太陽光発電機能付き街路灯など、再エネと景観を融合した商品も増えています。
こうした取り組みはESG評価にもつながり、自治体・企業からの採用拡大が期待されます。

資本効率と株主還元:株価にも目線を合わせた経営へ

経営陣は資本効率(ROE・PBR)の改善にも明確な意識を持っています。
増配方針(近年は連続増配)を続けるほか、自社株買いは2025年5月13日に自己株式の取得および消却を決定。以降、月次で取得状況を開示しました。「市場評価を高める」ことを明言しており、PBR0.6倍前後という低評価の是正を狙っています。

現状の進捗と将来性

2025年3月期は、売上742億円と中計初年度としては好スタートを切りました。
もっとも、原材料費の高止まりなどで営業利益は減少しており、利益率面では依然課題を抱えています。
ただ、2026年3月期予想では増収増益・ROE4.5%への回復見通しが示されており、収益構造改革の成果が少しずつ現れ始めています。

最終年度の2027年3月期には売上800億円・営業利益率8%を目標に掲げています。しかし、直近FY2025はコスト高の影響で目標と乖離しているため、達成されると大きな飛躍となります。ROEも5〜6%台へと改善が期待され、低PBR脱却への道筋が見えてくるでしょう。

企業の強み・弱み

前章で紹介した「中期経営計画2027」によって、積水樹脂は収益性の改善と体質転換を本格的に進めています。
では、その背景にある同社の強みと弱み(課題)をもう少し深く見てみましょう。
同社は長い歴史の中で培った確かな技術力と社会的信頼を持つ一方で、構造的な収益課題を抱えており、まさに「安定と変革のはざま」に立つ企業といえます。

【強み】社会を支える多様な製品群と確かな技術・財務基盤

積水樹脂の最大の強みは、事業領域の広さと製品の社会的重要性にあります。
防音壁、防護柵、標識、人工芝、梱包材、農業資材など、
一社で“社会インフラと生活空間の両方”を支える製品群を展開しています。
この多様な事業ポートフォリオにより、景気や特定市場の変動リスクを分散できる点は安定経営に大きく寄与しています。

特に道路インフラ関連では、高速道路の防音壁や防護柵の分野で国内トップクラスの実績を持ち、
同社製品が標準採用される案件も多いほどのブランド力を築いています。
こうした実績は、長年にわたり培われた品質・施工ノウハウへの信頼の証といえるでしょう。

さらに、積水樹脂の強みは単なる製造力だけではありません。
プラスチックと金属を組み合わせた複合技術を軸に、軽量化・高耐久化・デザイン性を追求した製品開発を進めており、たとえば電子制御式の次世代標識や、環境対応型の高耐候フェンスなど、他社にはない独自製品を次々に生み出しています。
この“技術と現場力の融合”が、同社の競争優位を支える土台です。

また、財務体質の強さも特筆すべき点です。
自己資本比率は約70%と高く、借入依存度も低く、景気後退期にも耐えうる安定性を維持しています。
そのうえで、連続増配や自社株買いを継続できる資金的余裕があり、株主還元姿勢の強さも市場から評価されています。

さらに、全国に広がる販売・施工ネットワークも見逃せません。
自治体や企業からの要望に応じて、現場ごとに最適な提案・設計・施工まで一貫対応できる体制を整えており、
アフターサービスも含めた“きめ細かい顧客対応力”が信頼につながっています。
こうした地域密着の営業スタイルこそが、積水樹脂の長期的なブランド価値を支えているのです。

総じて、積水樹脂は「社会の安全・安心を幅広く支える企業」としての存在意義が明確であり、その強みは技術力・財務安定性・ブランド信頼・顧客対応力という4本柱で支えられています。
この安定基盤があるからこそ、将来的な成長戦略にも持続性が見込まれます。

【弱み】低収益構造と変革の遅れ、海外展開の課題

一方で、積水樹脂にはいくつかの課題も見られます。
もっとも顕著なのは、収益性の低さです。
近年の営業利益率はおおむね5~7%台、ROEも3~4%台と低水準にとどまっており、
この点は株式市場からも「構造的な弱点」として指摘されています。

主な要因は、売上の大半を占める公共インフラ分野の価格競争と原価上昇の転嫁難です。
公共工事は価格が厳しく抑えられる傾向が強く、自治体案件では利益率が薄くなりがち。
また、樹脂・金属など原材料価格の上昇や物流費増加を完全に販売価格に反映できず、利益を圧迫する構図が続いています。

次に挙げられるのが、事業領域の広さゆえの分散リスクです。
スポーツ施設や物流資材、エクステリアなど多岐にわたる分野に進出しているため、それぞれの分野での競争相手も異なり、経営資源が分散しやすい点が弱点となっています。
結果として、各分野で「専門特化型企業」に比べて突出した強みを発揮しづらい面があるのです。

また、組織面でも変革スピードの遅さが課題とされています。
長年にわたる安定経営の反面、企業文化はやや保守的で、大胆なイノベーションやリスクテイクに慎重な傾向があります。
最近は人事制度改革や中途採用の拡大など“攻めの人材戦略”を打ち出していますが、他の製造業に比べて変化のスピードはまだ過渡期にあります。

加えて、海外展開の遅れも今後の課題です。
親会社の積水化学グループ全体では海外売上比率が高い一方で、積水樹脂単体では国内市場への依存が強く、円安の恩恵を十分に享受できていません。
グローバル市場ではアジア諸国を中心にインフラ整備需要が拡大しており、同社の技術力を活かす余地は大きいものの、まだ十分に攻めきれていない状況です。

最後に、株式市場での評価の低迷も弱点の一つです。
PBR(株価純資産倍率)は長年1倍を下回り、投資家からは「眠れる優良企業」と見られてきました。
これは、低収益構造や成長期待の乏しさを反映したものであり、経営陣が中期経営計画で“株価を意識した経営”を掲げた背景でもあります。

まとめ|“静かな主役”の再評価は利益率とROEが決める

積水樹脂は、普段あまり目立たないけれど、私たちの生活の“安心と安全”を支えている企業です。
道路の防音壁、公園のフェンス、住宅の外構製品、そして農業用の防獣ネットなど、気づかないうちに全国の街や暮らしの中に溶け込んでいます。

近年の業績を振り返ると、売上は堅調に推移しながらも利益が伸び悩んでいる状況です。
原材料や電力コストの上昇に加え、利益率の高い製品比率が減ったことが響いています。
ROE(自己資本利益率)はかつて7%前後ありましたが、直近では3%台に低下。財務面では安定しているものの、収益性の回復が今後の最大の課題といえるでしょう。

一方で、同社の強みはやはり社会インフラを支える確かな実績と技術力にあります。
高速道路や公共施設の防音壁、防護柵といった社会に欠かせない製品を長年提供し、自治体からの信頼も厚い。さらに、環境対応製品や再生樹脂を使った新製品開発にも積極的で、「安全×環境×デザイン」を同時に追求できる稀有なメーカーでもあります。

個人的に感じるのは、積水樹脂は今まさに「次の段階」に差し掛かっているということ。
中期経営計画では“高付加価値化”や“資本効率の改善”を掲げ、これまでの安定型から“成長+還元型”の企業へ変わろうとしています。売上の拡大に加え、利益率やROEが再び上向けば、株価の見直しも十分にあり得るでしょう。

しかし、公共案件中心という性格上、価格競争やコスト転嫁の難しさが依然として残ります。
また、海外展開の遅れや事業領域の分散など、構造的な課題もあるため、改革のスピードが問われる局面にあるとも感じます。

「人と自然の境界を守り、安全な街をつくる」という同社の使命は、これからの社会にますます必要とされるテーマです。少しずつ形を変えながらも、積水樹脂は“静かに進化するインフラ企業”として、長期的に見れば大きな可能性を秘めているように思います。

個人的な注目KPI

  • 営業利益率/粗利率(原材料・電力の転嫁具合)
  • ROE・在庫回転・設備稼働(資本効率の進捗)
  • 高付加価値製品の売上構成比(単価・ミックス改善コメントなどがあれば確認)
  • 受注残/公共関連の更新案件進捗(決算説明会資料や補足資料が出た期のみ)

2026年3月期第2四半期 連結決算 まとめ

要点:売上・利益ともに増収増益。特に利益の伸びが大きく、財務基盤も強化されていると評価できます。

決算ハイライト

指標数値前年同期比
売上高349.9億円 +5.9%
営業利益17.35億円 +26.4%
経常利益20.05億円 +26.2%
親会社株主に帰属する中間純利益11.18億円+39.2%
自己資本比率70.6% +1.9pt
配当(中間)36円/株 +1円

業績背景

国内・外ともに製造業・物流・インフラ向けの需要変化が業績に影響しています。決算短信では、「国内経済は雇用・所得環境改善等で緩やかに回復基調。ただし原材料・エネルギーコスト高止まり、為替変動・海外景況リスクが残存」 と記載されています。

物流倉庫・工場の拡張・省人化ニーズが高まる中で、外構・めかくし塀、ストレッチフィルム包装機、アグリ資材など一定の成長が見られました。加えて、都市環境関連防音壁材・交通安全関連製品など公共インフラ案件の受注も牽引要因となっています。

一方で、住宅着工数の減少・建設市場の停滞・民間戸建て外構需要の低迷などが重荷となっており、ある事業分野では利益が前年同期を下回っています。

コスト側では、為替の円高・エネルギー/資材コストの上昇・海外事業の稼働遅延・一時費用等が挙げられており、収益性維持のためには構造改善が求められている状況です。

決算のトピック

  • 利益拡大のインパクトが大きい
    • 売上+5.9%ながら営業利益+26.4%と利益の伸びが際立っています。収益性改善や高付加価値化の進展が数字に現れています。
  • 住宅外構/民間住建関連の分野に明暗
    • 物流・工場関連の製品が好調な一方で、住宅着工数の減少や外構市場の競争激化が一部でマイナス影響を与えています。今後の住宅市況回復が追い風となるか注目です。
  • 資材・施工・海外リスクが背景に
    • 猛暑による施工時間短縮・工場稼働低下、原材料価格上昇、為替変動、海外物流遅延などの影響を決算短信でも言及。こうしたコスト・リスク要因をどう制御するかがカギです。
  • 財務基盤の安定
    • 自己資本比率70.6%と高水準。キャッシュ・フローも営業CFが増収基調。収益と財務の両面で安心感があります。
  • 通期予想据え置き
    • 今回中間決算で通期業績予想の修正は無しとあり、会社側は下期での巻き返しを想定しています。
  • 株主還元継続の姿勢
    • 中間配当36円(+1円)、年間72円見通し。配当性向・継続性ともに市場へのプラス材料と評価できます。

まとめ

積水樹脂の2026年3月期第2四半期決算は、“売上微増+利益大幅増”という良好な内容で、特に利益率改善が際立ちます。物流・インフラ・アグリといった用途での拡大が成果を上げる一方、住宅外構市場の低迷など弱めの側面も残ります。

原材料・施工・海外環境といった外部リスクを抱える中、財務基盤の堅牢さと株主還元継続姿勢が安心材料となります。下期に向けた住宅市況の回復、物流施設需要の維持、海外展開の成果が鍵となるでしょう。

投資は自己責任でお願いします。

出典、参考資料

積水樹脂「長期ビジョン・経営戦略/中期経営計画2027」 積水樹脂
・積水樹脂「IRライブラリ/決算短信」 積水樹脂
・積水樹脂「2025年3月期 決算短信〔連結〕」PDF(2025/5/13) Yahoo!ファイナンス
・積水樹脂「統合報告書 2025(英語版)」PDF(2025年発行) 積水樹脂
・萩原工業「IR資料ライブラリ/決算短信・説明資料」 萩原工業株式会社+2
・前田工繊「2025年6月期 決算短信〔連結〕」PDF(2025/8/8) Yahoo!ファイナンス
・前田工繊「IRライブラリ/決算短信」 前田工繊株式会社
・タカノ「IRライブラリ/決算短信・IR情報」および関連開示タカノ

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