素材から読むデータセンター投資 ─ 日本タングステン[6998]を深掘りの話

最近、世界中でデータセンターの新設というニュースをよく耳にしますが、いまいち「データセンターがなにかわかりません」という方も多いのではないでしょうか。私もふんわりとしかわからないものの、多くのお金が動いていそうという感想を持っていました。

今回の記事では、「データセンターとは?」という内容に簡単に触れたのち、日本タングステンについて書いていきます。

そもそも「なぜデータセンターから日本タングステンなのか」というと、近年、AI、クラウド、映像配信などビッグデータを扱うサービスが急増し、サーバー用HDD(ハードディスクドライブ)の需要が再び拡大しています。

実はこのHDD内部に欠かせないのが、「タングステン(W)」という金属です。
タングステンは非常に硬く、熱にも強く、HDDの磁気ヘッドなど精密部品に使われる素材。AI時代の「データの器」を支える縁の下の力持ちといえます。

少し調べてみると他にも、医療分野でもタングステンの活躍が広がっています。
X線透視下で使われるカテーテルのガイドワイヤーや放射線遮蔽材に利用され、タングステンの高密度によって体内での視認性を高めるなど、医療現場でも重要な役割を果たしています。

さらに、紙おむつなど衛生用品の製造機械では、タングステンカーバイド(超硬合金)製のカッターが採用され、高速生産ラインの効率化を支えています。

こうした「データセンター×医療×工場」という成長市場と既存市場の両方を背景に、注目を集めているのが日本タングステン株式会社です。では、まずデータセンターから見ていきましょう。

目次

データセンターとは?|なぜ「素材株」まで注目されるのか

AI、クラウド、動画配信…。
これらを動かす“裏側”にあるのが データセンター(Data Center) です。

一言でいうと、

「世界中のデータを保管・処理する巨大なサーバー施設」 です。

あなたがスマホで検索したり、SNSを使ったり、動画を見たりするたびに、その情報はどこかのデータセンターで保存・処理されています。

世界各地で多数のデータセンターが稼働しており、1施設あたり数千〜数万台規模のサーバーが並びます。これらのデータセンターは、常に膨大な電力と冷却設備が必要です。
つまり、IT企業だけでなく、電力会社・不動産・空調・素材メーカーなど、幅広い業界と関係しています。

区分 主な内容 関連企業の例
建物・設備 サーバー室・冷却システム・電源設備 NTT(NTT Global Data Centers)、三菱地所
サーバー・半導体 計算・保存を行う機器 エヌビディア、インテル、
キオクシア
電力・空調 常時稼働のための冷却・電源供給 ダイキン、富士電機
素材・部品 放熱部材、HDD部材、電磁波シールド材 日本タングステン、住友電工、
三井金属鉱業

注目される理由

  1. AI・クラウド需要の爆発的成長
     ChatGPTをはじめとする生成AIや、動画・5G通信の普及で、データ処理量は急増中。
     → その分だけサーバー台数・HDD容量・冷却需要も増える。
  2. 地政学リスクと“国内回帰”の動き
     米中摩擦や海外リスクを避け、AWS(Amazon)やGoogleも日本や東南アジアで新設を検討、施工。
     → 国内企業にも設備投資の波が波及する。
  3. 素材・部品メーカーにも恩恵
     データセンターは電子部品・熱対策・省エネ技術の集合体。
     → タングステンや銅など、高性能素材を扱うメーカーにも需要が広がっている。

会社概要(日本タングステン)

日本タングステン株式会社(本社:福岡市博多区、1931年創業)は、タングステンやモリブデンなどのレアメタル、そしてファインセラミックスの加工を手がける金属加工メーカーです。

創業以来、独自に磨き上げてきた粉末冶金技術(金属粉末を焼結して製品化する技術)をコアに、高純度かつ高密度な素材を製造し、幅広い産業に製品を供給しています。

主力製品はHDD磁気ヘッド用セラミック基板で、旧住友特殊金属(現プロテリアル)との共同開発により高いシェアを確立しています。

また、超硬合金を応用した「NTダイカッター®」は、紙おむつなどの衛生用品製造ラインで使われる代表的な製品であり、同社の高い技術力を象徴する存在です。

国内では福岡本社のほか、佐賀県基山などに生産拠点を持ち、海外でもタイ・中国・米国・イタリア・ブラジルに拠点を展開しています。

資本金は25億円、従業員数は430名(2025年3月期末、単体)で、東証スタンダード市場および福岡証券取引所に上場している老舗企業です。90年以上にわたり、日本のものづくりを支えてきた実績と技術力が強みです。

過去5期の業績推移

直近5年間(2021年3月〜2025年3月)の連結業績推移を、売上高・利益や財務指標の観点でまとめます。以下の表は2021年3月期〜2025年3月期までの売上高および主要指標の推移です(単位:売上高・経常利益=億円、その他は%または倍)。

※売上高・経常利益・自己資本比率は同社の連結決算短信/有報、ROE・PBR・PERはIRBANK(2025年10月時点)を参照。期末時点の値で比較。

注目ポイント:PBRは0.5倍前後、自己資本比率は70%台で安定。2025年はHDD・医療回復で増益転換。

決算期 売上高
(億円)
経常利益
(億円)
自己資本比率
(%)
ROE
(%)
PBR
(倍)
PER
(倍)
2021年3月期 98.9 6.43 66.7 赤字 0.44 赤字
2022年3月期 120.4 12.39 65.2 8.12 0.49 6.07
2023年3月期 126.5 12.27 66.9 6.82 0.56 8.2
2024年3月期 114.6 7.86 70.6 4.35 0.51 11.81
2025年3月期 123.9 9.52 71.2 5.39 0.47 8.69

表の解説と背景

日本タングステンの業績は、ここ5年間で堅実に推移しています。
2021年3月期は当期純損失でROEがマイナスとなったものの、その後は2022年に経常利益12.3億円・ROE8.1%まで急回復。以降は安定成長を続け、2025年3月期には売上123.9億円・経常利益9.5億円と堅調な水準を維持しています。自己資本比率は一貫して70%前後と高水準で、財務体質の健全さが際立ちます。

2024年には一時的にHDD関連部品の需要調整や原材料高騰の影響で減益となりましたが、2025年はデータセンター向けHDD基板や医療用タングステン製品の回復で再び増益に転じました。PBRは0.5倍前後と依然として割安圏にあり、ROE5%超と資本効率も改善傾向。

全体として、同社は安定した財務基盤と独自技術による収益体質の改善が進んでおり、今後もデータセンター・医療・EV向け需要を背景に中長期的な成長が期待されます。

事業内容の詳細|セグメント別の動向と注目分野

日本タングステンの事業は、主に「機械部品事業」「電機部品事業」の2つに分かれています。
どちらもタングステンの特性と粉末冶金技術を活かした製品群で構成されており、成長分野にしっかりと根を下ろしています。

機械部品事業(売上構成比 約58%)

粉末冶金と超硬合金技術を組み合わせた、高耐久部品や金型の製造が中心です。
代表的な製品には、HDD用磁気ヘッド基板(ファインセラミックス製)、超硬製ロータリーカッター「NTダイカッター」、タングステンカーバイド製シールリング・切削工具などがあります。

2025年3月期は、データセンター向けHDD部材の在庫調整明けによる需要回復や、衛生用品向けロータリーカッターの海外販売好調が寄与し、
売上高は約71億円(前年比+12%)、営業利益は約8.8億円(+76%)と大幅な増益となりました。

今後の注力分野としては、EV用樹脂向けの「MAZELLOY」二軸混練押出機部品や、
AI・5G時代に向けた次世代HDD用高性能基板の開発が挙げられます。
この事業は同社の利益を支える「柱」であり、海外展開も含めさらなる成長が期待されています。

電機部品事業(売上構成比 約42%)

タングステンおよびその合金を用いた電気接点・電極・細線を製造・販売する部門です。
主要製品には、銅・銀タングステン合金による高圧開閉器用接点、抵抗溶接電極、
直径数十マイクロメートルの極細タングステンワイヤーなどがあります。

用途は自動車・産業機器・電子部品まで幅広く、特に近年はEV(電気自動車)向け高圧リレー接点が注目分野です。
EV1台あたり3〜4個搭載されるメインリレーに同社製接点材が採用されており、事故時の回路遮断など安全性を支える重要部品となっています。

2025年3月期は売上高約52億円(+3.2%)と微増でしたが、米国市場の低迷や原材料コスト上昇の影響で営業利益は約4億円(▲25%)に減少しました。
一方、医療向けカテーテル用タングステン細線が北米・東南アジアで拡販されており、今後の回復が見込まれています。

成長分野は「データセンター×EV×医療」

日本タングステンは、

  • 「機械部品」=タングステン超硬製品
  • 「電機部品」=タングステン金属製品
    の2本柱で事業を展開しており、売上構成はおおよそ6:4。

特に利益貢献度の高い機械部品事業では、HDDや衛生用品、EV部材といった成長マーケット向け新製品が続々と登場しています。

同社は90年以上にわたり培ってきた粉末冶金と精密加工技術を武器に、世界初の「NTダイカッター」、高品質HDDヘッド基板、超極細タングステンワイヤーなど、ニッチ分野でオンリーワン技術を確立してきました。

現在、知的財産を継続的に積み上げており、特許出願も多数あります。これらの独自技術が競合他社との間に強固な「経済的な壁」を築いています。データセンター・EV・医療といった成長分野の拡大とともに、日本タングステンの事業も着実に進化を続けています。

タングステン業界の将来性|データセンター・EV・医療を支える戦略金属

タングステンは「ダイヤモンドに次ぐ硬さ」と「金属中で最も高い融点」を併せ持つ戦略的レアメタルです。
自動車・航空宇宙・電子機器・工作機械・医療機器など、あらゆる産業で欠かせない素材として位置づけられています。
特に超硬合金(タングステンカーバイド)分野は、世界需要の約6割、日本では約7割以上を占めるとも言われ、
まさに「ものづくりの根幹」を支える金属です。

EV・次世代モビリティ分野:電動化で広がる高機能部材の需要

EVやハイブリッド車の普及により、タングステン系の高電圧リレー接点材や放電加工電極の需要が急増しています。
車両の電動化に伴い、回路遮断など高電圧スイッチに高耐熱・高導電性の材料が求められており、
同社の電機部品(リレー接点・電極)がその需要を取り込んでいます。

また、車体軽量化に不可欠なCFRP(炭素繊維強化プラスチック)成形にも、耐摩耗性に優れたタングステン合金製押出機部品が使われており、自動車の素材変革を下支えする存在になっています。
EVシフトは日タングの機械部品・電機部品の両方に恩恵をもたらすテーマです。

データセンター・AI分野:高熱環境に強い“縁の下の素材”

AI・5G・クラウド化の進展で、世界的にデータセンター建設ラッシュが続いています。
特に大容量データを低コストで保存する「HDD(ハードディスクドライブ)」は、SSD(半導体メモリ)よりも容量単価が安く、コールドデータ用途では依然として主流です。

このHDD内部に使われる磁気ヘッド基板や部品は、日本タングステンの主力製品の一つ。
AIサーバーやクラウド機器の増設が進むほど、同社のHDD関連素材への需要は拡大しています。

さらに、AIサーバーは発熱量が非常に高いため、タングステンの高融点・耐熱性を活かした放熱部材やモリブデン複合材にも注目が集まっています。
データセンターの“熱との戦い”において、タングステンは不可欠な素材なのです。

医療・ヘルスケア分野:高齢化で広がる高密度素材の役割

世界的な高齢化を背景に、医療機器市場も拡大傾向にあります。
タングステンは放射線遮蔽用の防護材(鉛代替)として注目されており、CTやX線診断機器、粒子線治療装置の部材にも利用されています。

また、カテーテルやガイドワイヤーに使われるタングステン細線は、高密度ゆえにX線下での視認性が高く、医療現場での操作精度向上に貢献しています。
日タングはこの分野で極細線や精密加工技術を武器に、ニッチながら着実に存在感を高めている企業です。

タングステン業界の課題とリスク

・資源調達リスク

タングステン資源の約8割は中国に集中しており、輸出規制や関税政策による供給リスクが常に存在します。
日本はタングステンをほぼ全量輸入に依存しており、政府や業界団体はリサイクル技術の確立や代替材料開発を推進中です。

住友電工や三菱マテリアルなどは、使用済み工具スクラップからの回収・再精製体制を整備しており、国内需要の一定割合をリサイクルで賄うまでに発展しています。
一方、日タングは鉱山を保有しておらず、原料調達面では脆弱性があるため、価格高騰や地政学的リスクへの対応が今後の課題です。

・競争激化

タングステン加工品市場は、住友電工、三菱マテリアル、京セラなどの大手が参入する分野です。
その中で日タングは、「超極細線」「HDD基板」「NTダイカッター」などのニッチ分野に特化することで差別化を図っています。
大手が扱わない領域で高シェアを確保し、技術力と柔軟性で独自ポジションを築いています。

・需要構造の変化

HDD市場の一部はSSD化が進んでおり、長期的にはHDD需要が縮小するリスクがあります。
ただし、データセンター用途では容量単価の優位性からHDDが依然主流であり、少なくとも中期的には安定した需要が続くとみられます。

また、EVリレーの分野でも将来的にソリッドステートリレー(半導体式)が普及すれば、金属接点の一部は置き換えられる可能性があります。
こうした構造変化に備え、日タングは紫外LED部材や航空宇宙向け耐熱製品など、新用途の開拓を進めており、事業ポートフォリオの多角化を図っています。

業界内での日タングの立ち位置

日本タングステンは、タングステン業界の中でもニッチトップ技術を持つ開発型企業として知られています。
競合には住友電工グループのアライドマテリアルや、プロテリアル(旧日立金属)、冨士ダイスなどが挙げられますが、日タングは粉末から製品まで一貫加工体制を持つ数少ないメーカーです。

特にHDD磁気ヘッド基板や衛生用品向けロータリーカッターの分野では、世界的にも有数のメーカーとして認知されており、取引先からの技術的信頼も厚いです。
また、地元・福岡を拠点とした企業として、九州大学との産学連携や行政との共同研究にも積極的に取り組み、
新素材開発や次世代分野への布石を打っています。

競合比較(冨士ダイス・住友電工・三菱マテリアル)

冨士ダイス(6167)/住友電工(5802)/三菱マテリアル(5711)/日本タングステン(6998) の最新決算(2025年3月期ベース)をもとにした比較表です。期末データで作成しています。
売上高・経常利益・自己資本比率は各社の決算短信・有価証券報告書、ROE・PBR・PERはIRBANK(2025年10月時点) の公開指標を参照しています。

要約:日本タングステンは財務堅牢×割安、住友電工は高収益、三菱マテは規模×一貫体制が強み。

企業名 売上高
(億円)
経常利益
(億円)
自己資本比率
(%)
ROE
(%)
PBR
(倍)
PER
(倍)
日本タングステン(6998) 123.9 9.52 71.2 5.39 0.47 8.69
冨士ダイス(6167) 165.9 6.03 81.0 2.15 0.89 41.66
住友電工(5802) 4,679.8 309.5 56.9 10.4 1.71 20.1
三菱マテリアル(5711) 1,962.1 602.4 28.5 5.9 0.60 19.7

冨士ダイス(6167)
超硬合金製の金型・耐摩耗工具を専門とする中堅メーカーで、タングステンカーバイドを使った製品を一貫製造しています。粉末冶金や超精密研削技術に強みがあり、国内プレス金型分野で30%超のシェアを維持。
表でも自己資本比率81%と高水準で、堅実な財務基盤を持つのが特徴です。

住友電工(5802)
電線・ワイヤーハーネス大手ながら、超硬工具事業でも世界的な地位を確立。
タングステン・コバルトを使った切削工具を展開し、早くからリサイクル循環型の供給体制を構築しています。
表ではROE10%超と高収益で、資源効率経営を実現している企業です。

三菱マテリアル(5711)
非鉄金属・電子部品を扱う総合素材メーカーで、鉱石精製から超硬工具製造まで一貫体制を持つ数少ない企業です。
タングステンの精製・リサイクルを通じた資源循環型モデルを推進し、持続的な供給体制を確立。
表では売上・利益規模ともに業界上位で、供給チェーン全体を担う立ち位置です。

中期経営計画と成長戦略

日本タングステンは、創立100周年に向けた長期ビジョン「2030年ビジョン」を掲げ、その実現に向けて中期経営計画「2024中計」を推進してきました。2021年から始まったこの計画では、「収益体質の強化」と「成長事業の育成」を二本柱に掲げ、持続的な企業成長を目指しています。

まず、事業ポートフォリオの再編によって採算性を徹底分析し、利益創出力の高い分野に経営資源を集中。価格競争の激しい電極材などは効率化を進め、一方で高付加価値な超硬工具や新素材分野へ積極的に開発投資を行いました。

また、成長市場へのシフトとしてモビリティ(EV)や医療を新たなコア事業に設定。EVリレー接点やタングステン細線などの量産体制を強化し、将来のCASE・ヘルスケア需要を見据えた新製品開発を進めています。

さらに、グローバル展開では既存のタイ・ブラジル・米国拠点を活用し、非日系顧客や新興国市場の開拓を加速。特に主力製品「NTダイカッター」の海外需要拡大が顕著で、海外売上比率の上昇にもつながっています。

ただし、2024年3月期はEV市場の立ち上がり遅れやHDD市況悪化の影響で、目標には届きませんでした。この反省を踏まえ、同社は2025年度からの新中計で次の3点を重点方針に据えています。

  • ① コア技術の深化:粉末冶金・精密加工技術の高度化により、AIを活用した生産最適化・歩留まり向上を推進。
  • ② 新製品・新事業開発:EV・医療分野に加え、タングステンを活用した水素関連部材など新領域へ挑戦。
  • ③ DX推進による効率化:経営・生産管理のデジタル化でリソース配分を最適化し、全社的な機動力を強化。

2025年3月期の見通しでは売上高128億円・経常利益9.6億円と増収増益を予想しており、次期中計初年度として好発進を見せています。「2024中計の未達を糧に、2030年ビジョン達成への再加速を図る」と経営陣は語っており、粉末冶金技術×グローバル市場を軸とした新たな成長ステージが期待されています。

企業の強み・弱み

[強み]
日本タングステンの最大の強みは、オンリーワン製品と高シェア市場の存在です。超硬ロータリーカッター「NTダイカッター」やHDD磁気ヘッド基板などは、世界でも同社しか量産できない独自技術を持ち、顧客から高い信頼を得ています。

また、粉末冶金×精密加工技術の蓄積も突出しており、90年以上にわたる焼結・加工ノウハウで超高精度な製品を実現。髪の毛の1/1000レベルの微細加工技術は模倣困難な領域です。

さらに、自己資本比率70%超の健全な財務体質により、景気変動にも強く、研究・設備投資を継続できる体制があります。中小規模ながら顧客要望に迅速対応できる柔軟性も高く、小ロット・試作品への対応力は大手にはない強みです。

[弱み]
一方で、企業規模の小ささと経営資源の制約が課題です。研究開発費や人材確保の面で大手に劣り、グローバル展開では営業力不足が目立ちます。

また、HDDや紙おむつ関連など特定市場への依存度が高く、需要サイクルの変動が業績に直結するリスクがあります。他にも、タングステン原料の中国依存と価格変動リスクも避けられず、原価上昇局面では収益が圧迫されやすい構造です。知名度や販売網の面でも欧米大手に遅れを取っており、今後は海外展開の強化が成長の鍵となります。

まとめと今後注目すべきKPI

今回、日本タングステンを調べてみると、タングステンという戦略素材分野における独自技術と精密加工力を強みに、長年にわたり国内外で確かな地位を築いてきたことがわかります。

そして現在は、データセンターの拡張やEV化、医療機器市場の拡大といった成長テーマが追い風となり、業績は回復基調にあります。特に、HDD磁気ヘッド基板やNTダイカッターといった高シェア製品群は、景気変動に強い安定収益源として機能しています。

一方で、同社の持続的成長には、需要構造の変化や原料価格変動への対応力が欠かせません。HDD市場の縮小リスクやEV分野の競争激化を見据え、製品ポートフォリオの多角化と新用途開発が今後の焦点となっていくのではないでしょうか。 

今後、データセンターの拡張はまだまだ続くのか、中国の依存から脱却できるのか等の課題にどのように答えていくのかによって注目度も上がりそうですね。注視していきましょう。

今後、個人的に注目すべき主要KPIを付けるならばこのあたりかなということで書いておきます。といっても皆さん注目しそうな指標ですが、、

  • 売上高成長率:EV・医療・データセンター向け事業がどこまで全体を押し上げられるか。
  • 営業利益率/ROE:収益性改善と資本効率の両立が進んでいるか。(中期8~10%を目安)
  • 海外売上比率:グローバル展開が成果を上げ、依存市場を脱却できているか。(右肩上がり)
  • 研究開発費比率:新素材・新製品への投資が持続的に行われているか。

*投資は自己責任でお願いします。

出典、参考資料

業界データ・技術背景

医療・EV材料の根拠

サプライチェーン・地政学(最近の動向)

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