日経平均が下げトレンドの今日この頃ですが、高配当や優待は買い時なのでは?ということで4月の権利確定銘柄を探していました。そのときに、「あれ?」と手が止まった銘柄がありました。
ファースト住建 です。
ファースト住建は4月末と10月末が基準日で、4月末は株主優待と中間配当の基準月として意識される銘柄です。優待や配当を意識してスクリーニングしていると、ランキングサイトなどでも上位に挙がってきます。
目を引いたのはバリュエーションです。PBRは1倍割れ。それも“少しだけ”ではなく、明確に割り込んでいる水準にあります。それでいて配当利回りは比較的高め。数字だけを見れば、いかにも「割安高配当株」といった印象を受けます。
正直、「なぜここまで安いんだろう?」と興味がでました。
全然知らない会社でしたが、簡単に調べると同社は戸建分譲を主力とする住宅メーカーであることがわかりました。
住宅セクターは金利上昇、住宅ローン負担の増加、着工件数の鈍化など、逆風もあり、市場が慎重に評価する理由は確かにあるかと思います。
ただ、それらを踏まえたとしても、この水準は妥当なのか。それとも単に地味で目立たないだけなのか。低PBRは“割安”のサインなのか、それとも“構造的なリスク”を示しているのか。そして現在の配当は無理をして出しているものではないのか。
今回は、なぜここまでPBRが低いのか、配当は持続可能なのか、住宅市況の中でどのポジションにいるのか。このあたりを財務や業績、事業構造から具体的に探っていきたいと思います。
まずは、優待制度から整理していきます。
優待制度
ファースト住建 では、株主還元の一環として株主優待制度を実施しています。
優待の対象となるのは、毎年4月末日および10月末日の株主名簿に記載された株主で、さらに100株以上を1年以上継続保有していることが条件となります。
ここでいう継続保有とは、4月末と10月末の株主名簿に同一株主番号で3回以上連続して記載されることを意味します。つまり、短期保有では優待の対象にならず、一定期間の保有が必要な仕組みとなっています。

優待内容
| 保有株式数 | 優待内容 |
|---|---|
| 100株以上300株未満(1年以上継続保有) | QUOカード 500円分 |
| 300株以上(1年以上継続保有) | 手延素麺「揖保乃糸」食べくらべセット(上級品・夢双・縒つむぎ) |
QUOカードはコンビニや書店などで利用できるため使い勝手が良く、個人投資家にとって実用性の高い優待といえます。一方、300株以上では食品の優待となり、保有株数に応じて優待内容が変わる仕組みになっています。
優待の発送時期
| 対象株主 | 発送方法 | 発送時期 |
|---|---|---|
| 100株以上300株未満 | 配当関係書類・株主通信に同封 | 毎年7月中旬頃 |
| 300株以上 | 郵送(ポスト投函) | 毎年7月頃から順次 |
また、同社の事業年度は11月1日から翌年10月31日までで、配当金の基準日は中間配当が4月30日、期末配当が10月31日です。優待と配当はいずれも4月末・10月末が基準日ですが、優待には1年以上の継続保有条件があるため、その点には注意が必要です。
最新の優待内容や発送時期は、公式IRの「株主メモ・株主優待」をご確認ください。
https://www.f-juken.co.jp/ir/memo.html
会社概要|どんな会社なのか
ファースト住建は、戸建分譲住宅(いわゆる「建売住宅」:土地と建物をセットで販売する方式)を主力とする住宅・不動産系企業です。事業の中心は戸建分譲ですが、それに加えて請負工事(注文住宅)、マンション事業、賃貸事業なども展開しており、住宅関連を軸に幅広い事業を手掛けています。
東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、証券コードは8917です。
同社の設立は1999年7月6日。本社は兵庫県尼崎市に置かれており、資本金は約15億円です。会社の事業内容としては、建築工事や土木工事の設計・施工、不動産の売買や賃貸、管理業務、さらには保険代理業などが挙げられます。
主力の戸建分譲に加え、請負工事や賃貸なども手がけることで、住宅関連事業を幅広く展開しています。また、近年はM&Aによる事業領域の拡大も進めており、2024年10月にはKHCグループを子会社化しています。
企業理念として同社が掲げているのは、「住宅づくりを通じて社会に貢献する」という考え方です。具体的には、「より良いものを、より安く、より早く、より安全に提供する」「人材を育て、健全な経営を行いながら社会に貢献する」といった方針が示されています。
企業理念は抽象的になりやすいものですが、ファースト住建の場合は「価格」「スピード」「安全性」といった要素を重視している点が特徴です。これらは同社のビジネスモデルにも表れており、在庫回転を意識した経営や、比較的厚い自己資本を維持する財務方針とも一定の整合性があると考えられます。
業績推移|過去5年の数字を確認
ここでは、まず「過去5年(最新期末から遡る5期)」を、売上・利益・財務健全性・株式指標をまとめています。
売上高・経常利益(本業+金融収支などを含む利益)・自己資本比率(総資産のうち自己資本が占める割合)は有価証券報告書(EDINET 経由)掲載の主要指標から、ROE(自己資本利益率)/PBR(株価純資産倍率)/PER(株価収益率)は IRバンク の期末データから整理しています。
| 年度 | 売上高 (億円) |
経常利益 (億円) |
自己資本比率 (%) | ROE (%) | PBR (倍) | PER (倍) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021/10期 | 426.3 | 35.0 | 69.1 | 6.5 | 0.48 | 7.4 |
| 2022/10期 | 399.7 | 31.6 | 69.1 | 5.6 | 0.40 | 7.1 |
| 2023/10期 | 433.7 | 26.6 | 71.7 | 4.6 | 0.40 | 8.7 |
| 2024/10期 | 359.9 | 18.0 | 64.9 | 6.3 | 0.36 | 5.8 |
| 2025/10期 | 428.8 | 23.5 | 65.8 | 3.5 | 0.38 | 10.8 |
各年度の解説
2021年10月期は、売上高426.3億円、経常利益35億円となり、経常利益率(経常利益÷売上高)は約8%台と比較的高い水準でした。自己資本比率も69.1%と高く、住宅会社としては財務の安定性が際立つ状態でした。
この時期は住宅需要が底堅く、販売戸数の確保と利益率の維持が比較的うまく機能していた局面と考えられます。
2022年10月期は、売上高が399.7億円へやや減少し、経常利益も31.6億円へ低下しました。自己資本比率は69.1%と引き続き高い水準を維持していますが、ROEは5.6%まで低下しています。
これは利益水準の減少に対して自己資本が厚く保たれているため、資本効率の観点ではやや低下した状態といえます。住宅市場では建築コストや資材価格の上昇が意識され始めた時期であり、利益率に影響が出始めていた可能性があります。
2023年10月期になると、売上高は433.7億円まで回復しましたが、経常利益は26.6億円まで減少しています。売上が増加しているにもかかわらず利益が減少している点は、原材料価格や建築コストの上昇、販売環境の変化などによって利益率が圧迫された可能性を示しています。
一方で自己資本比率は71.7%まで上昇しており、利益の伸びが鈍化する中でも財務基盤をさらに強化した形となっています。
2024年10月期は、売上高359.9億円、経常利益18億円と業績が大きく落ち込む結果となりました。自己資本比率も64.9%へ低下しています。
なお、2024年10月期は負ののれん発生益が特別利益として計上されており、最終利益の見え方には一時的な押し上げ要因も含まれていました。そのため、本業の収益力を見るうえでは、経常利益や営業利益の推移を重視したいところです。
最新の2025年10月期では、売上高が428.8億円まで回復し、経常利益も23.5億円へ改善しています。売上規模としては再び400億円台に戻り、事業活動自体は一定の回復を見せています。
一方、ROEは3.5%と低く、PBRも0.38倍にとどまっています。PERは10.8倍で、利益水準が低い分だけ見かけ上やや高めに出ている面もあり、今後は利益成長と資本効率の改善が評価見直しの鍵になりそうです。
配当金と配当性向
配当は、1株当たり年間配当金と配当性向(当期純利益に対する配当の割合)を過去5年で並べます。なお、配当性向は有価証券報告書の提出会社ベースを用いているため、会社IRで示される連結ベースの数値とは異なる場合があります。
| 年度 | 1株当たり年間配当金 (円) | 配当性向 (%) |
|---|---|---|
| 2021/10期 | 43 | 27.8 |
| 2022/10期 | 43 | 30.9 |
| 2023/10期 | 43 | 35.5 |
| 2024/10期 | 43 | 54.9 |
| 2025/10期 | 43 | 53.6 |
ここでポイントになるのが、配当額は5期連続で43円で推移しているのに対して、配当性向が2024/10期・2025/10期で50%台へ跳ね上がっている点です。
これは、分母である利益(当期純利益)が下振れすると、同じ配当額でも配当性向が上がる、という構造が働きます。実際、2025/10期の連結当期純利益は1,435百万円で、2024/10期の2,496百万円から大きく減少しており(前年差△42.5%)、配当性向が高止まりしやすい局面でした。
事業内容と売上構成|事業別の収益構造を解説
戸建分譲住宅事業
ファースト住建の中心事業は、戸建分譲住宅です。公式サイトでも、同社の主力事業は新築一戸建ての分譲であり、関西を中心に、埼玉・千葉・愛知・広島・福岡などへエリアを広げていると説明されています。
この事業の特徴は、土地の仕入れから商品企画、設計、建築、販売までを一貫して行う点にあります。いわゆる「建売住宅」の形で供給するため、注文住宅のように一棟ごとの自由設計ではなく、一定の標準化を進めやすいビジネスモデルです。
標準化によって工期やコストをある程度コントロールしやすくなり、販売回転を意識した経営につながりやすい点が特徴です。会社の決算説明資料でも、戸建事業では用地仕入れの強化、在庫回転率の向上、収益性の改善が重点テーマとして示されています。
また、足元では戸建分譲の収益改善も重要なテーマになっています。2025年10月期の決算説明資料では、土地購入費や建築費の上昇により23/10期以降は売上総利益率が低下していたものの、25/10期下半期には戸建分譲の売上総利益率が上半期12.1%から下半期14.6%へ改善したことが示されています。
会社側は、継続的なVE(価値を維持しながらコストを見直す活動)や、間取り・デザイン・性能の強化によって商品力を高め、収益改善を図る方針を示しています。
請負工事(注文住宅)事業
戸建分譲に加えて、近年重要性が高まっているのが請負工事、つまり注文住宅事業です。公式サイトでも注文住宅事業が独立した事業として案内されており、株主通信では、建築条件付きだけでなく、建て替えや顧客所有地への建設など、顧客ニーズに応じた請負工事を受注できる体制を整えていることが説明されています。
この事業は、戸建分譲と比べると売上規模では小さいものの、利益率の面では重要な役割を持っています。
2025年10月期の決算説明資料では、請負工事の売上高は 6,248百万円で、全体売上高 42,883百万円に対して約15%を占めています。売上構成としては主力ではないものの、粗利率は 25.5%と戸建分譲より高く、利益面での支えになっていることが分かります。
さらに、この分野の存在感を高めているのがKHCグループの取り込みです。戸建分譲中心だった収益構造に、より利益率の高い注文住宅の比重を加える意味があり、この点は後ほど成長戦略の章で触れていきます。
マンション・賃貸・特建など周辺事業
同社は戸建分譲と請負工事だけでなく、マンション関連事業や不動産賃貸事業、さらに特建事業なども展開しています。公式サイトでもマンション事業が独立して紹介されており、会社として住宅・不動産関連の事業領域を広く持っていることが確認できます。
マンション関連事業には、新築マンションの分譲に加えて、中古マンションのリノベーション販売も含まれます。規模としては大きくありませんが、戸建住宅だけに依存しない事業基盤を持つという意味では一定の役割があります。2025年10月期の売上高は 842百万円で、全体の約2%です。
不動産賃貸事業も、同社の収益構造を考えるうえで見逃せない分野です。売上高は 801百万円で全体の約2%ですが、粗利率は 45.1%と非常に高く、販売市況に左右されやすい分譲事業に対して、比較的安定した利益源として機能していることが分かります。売上規模は小さくても、利益率の高さという点では存在感のある事業です。
このほか、木造集合住宅などを手掛ける特建事業やその他事業もあり、2025年10月期の売上高は特建事業が 260百万円、その他が 257百万円でした。割合としては小さいものの、事業ポートフォリオを広げ、将来の収益源を増やしていく意味を持っていると考えられます。
売上構成と利益構造の見方
2025年10月期の売上構成を整理すると、戸建分譲が 34,473百万円で全体の約80%、請負工事が 6,248百万円で約15%、マンション関連が 842百万円で約2%、不動産賃貸が 801百万円で約2%、特建事業とその他がそれぞれ1%未満という形です。つまり、売上の大部分は戸建分譲によって支えられている会社だといえます。
ただし、利益率まで見ると印象は少し変わります。戸建分譲の粗利率は 13.4%である一方、請負工事は 25.5%、不動産賃貸は 45.1%となっており、売上の中心と利益率の高い事業が一致していないことが分かります。これは住宅会社としてはよくある構造ですが、ファースト住建でもはっきり数字に表れています。
このため、同社を分析するときは「戸建分譲の販売戸数が増えるか」だけでなく、「請負工事や賃貸の比率がどう変わるか」「戸建分譲の利益率が改善するか」といった点も重要になります。売上の量を担う事業と、利益を厚くする事業の両方を持っていることが、この会社の事業構造の特徴だといえそうです。
業界の環境、将来性とリスク|今後の成長余地はある
業界環境
ファースト住建 が属する住宅業界は、広く見ると「住宅・不動産業」ですが、実務的には分譲戸建(建売住宅)を中心に、注文住宅や賃貸、不動産リノベーションなども扱う住宅供給ビジネスに近い業界です。
この業界にはいくつか特徴的な構造があります。まず大きいのは、土地仕入れが事業の出発点になるという点です。良い土地を確保できなければ住宅を建てること自体ができないため、用地取得の力が企業の成長を大きく左右します。
次に、原材料費や労務費の変動が利益に直結しやすいという点も重要です。住宅建設では木材や建材、職人の人件費などがコストの大きな割合を占めるため、資材価格や人件費の上昇はそのまま利益率を圧迫する要因になります。
さらに、住宅需要は金利や景気、個人所得の影響を受けやすいという特徴があります。住宅ローン金利の上昇や景気の悪化は、住宅購入を検討する層の意思決定に直接影響するため、需要の変動が比較的大きい業界です。
そしてもう一つ重要なのが、在庫を抱えるビジネスモデルであることです。住宅会社は土地や完成物件を棚卸資産として保有するため、在庫回転のスピードが資金効率や利益に大きく影響します。売れ残りが増えると資金が滞留しやすくなるため、販売力や在庫管理の巧拙が業績を左右する構造になっています。
業界の将来性
住宅市場の需要面を見ると、足元ではやや弱い状況が続いています。国の統計によると、2025年(令和7年)の新設住宅着工戸数は740,667戸(前年比▲6.5%)となり、持家・貸家・分譲住宅のいずれも前年を下回りました。住宅需要は人口動態や金利動向の影響を受けやすく、短期的には伸び悩む局面が続いています。
一方で、月次データでは2026年1月の時点では、着工戸数が前年同月比▲0.4%と小幅な減少にとどまっており、足元では一進一退の状況が続いています。住宅市場全体としては急激な回復というよりも、横ばいに近い推移が続く可能性が考えられます。
将来的な成長要因として注目されるのが、住宅性能の高度化です。2025年4月以降に着工する住宅では、省エネ基準への適合が義務化されることになっており、今後はさらに基準が引き上げられる可能性も指摘されています。
断熱性能や省エネ設備などの高性能住宅への対応が求められるため、設計力や施工力を持つ企業にとっては付加価値を高める機会にもなります。
ただし、この流れは同時にコスト要因にもなります。建設コストについては、国が公表する建設工事費デフレーターなどでも上昇傾向が確認されており、材料費や労務費を含めた建築コストは近年高止まりしています。また、日本銀行の企業物価指数を基にした分析では、建設用材料の価格は2021年以降急激に上昇し、現在も高水準で推移しているとされています。
さらに、建設業界では2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、働き方改革が進められています。これにより長時間労働に依存した現場運営は難しくなり、施工体制や協力会社ネットワークの強さがより重要になります。一方で、人手不足は業界全体の供給制約となり、コスト上昇要因になる可能性もあります。
加えて、住宅ローン金利の上昇も住宅需要に影響を与える要素です。特に長期固定金利の上昇は住宅購入の負担感を高めるため、需要が慎重化する可能性があります。
ファースト住建の立ち位置
こうした環境の中で、ファースト住建は戸建分譲住宅を中心とした住宅供給企業として事業を展開しています。会社の資料では、土地価格の上昇、原材料費の高騰、労働力不足などによって住宅価格が上昇し、需要がやや冷え込んでいることが指摘されています。
また、近畿圏では同業他社との競争が激しく、他地域から進出してくる住宅ビルダーとのシェア争いも起きているとされています。
一方で、同社は戸建分譲住宅の供給量という点では一定の規模を持っています。
個人投資家向け資料によると、2025年10月期の戸建分譲販売は年間1,120棟となっており、近畿圏ではパワービルダーの中でもトップクラスの供給量とされています。
つまり、住宅市場全体が大きく伸びない状況の中で、ファースト住建の経営のポイントは「販売戸数を維持しながら、粗利率や在庫回転率をどこまで維持できるか」という点にあります。需要環境が厳しい中でも供給量を確保しつつ、効率的な在庫管理と収益性をどのように両立するかが、今後の業績を左右する重要なテーマといえるでしょう。
競合他社|住宅株5社を徹底比較
ファースト住建と事業領域が近い上場企業を中心に、最新期末の業績(売上高・経常利益/税引前利益・営業利益前年差)と、IRバンク期末のROE/PBR/PERを並べたものです。
売上高・利益・営業利益の前年差は各社の決算短信から、ROE/PBR/PERはIRバンクの期末データ(決算日ベース)を使用しています。決算月はそれぞれ、ファースト住建(2025年10月期)、オープンハウスグループ(2025年9月期)、飯田グループHD(2025/3期)、ケイアイスター不動産(2025/3期)、AVANTIA(2025/8期)です。
| 企業 | 売上高 (億円) | 経常利益 / 税引前利益 (億円) | 営業利益上昇率 (%) | ROE (%) | PBR (倍) | PER (倍) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ファースト住建 | 428.8 | 23.5 | 36.2 | 3.53 | 0.38 | 10.8 |
| オープンハウスグループ | 13,364.7 | 1,394.9 | 22.5 | 18.72 | 1.6 | 8.75 |
| 飯田グループHD | 14,596.4 | 743.1 | 36.0 | 5.17 | 0.64 | 12.59 |
| ケイアイスター不動産 | 3,425.5 | 151.2 | 51.9 | 14.74 | 1.17 | 7.94 |
| AVANTIA | 692.7 | 11.5 | 38.7 | 2.28 | 0.44 | 19.0 |
各社概要
オープンハウスグループ:
戸建分譲を中心にマンション分譲や収益不動産事業など複数の事業セグメントを持つ総合不動産会社です。都市部の住宅供給に強みがあり、売上規模は1兆円を超えるなど住宅関連企業の中でもトップクラスの規模を誇ります。高い収益力を背景にROEも高水準で推移しており、成長性と収益性の両面で評価されやすい企業です。
飯田グループホールディングス:
分譲戸建住宅を主力とする住宅グループで、複数の住宅会社を傘下に持つ国内最大級の戸建供給企業です。年間の住宅供給戸数は業界でもトップクラスで、規模の大きさが特徴となっています。一方で近年は住宅市況の影響もあり、ROEは直近期で5%台と比較的落ち着いた水準となっています。
ケイアイスター不動産:
分譲住宅を中心に事業を拡大してきた住宅会社で、首都圏や北関東を中心に成長してきました。積極的な用地仕入れと販売体制を背景に、近年は業績の回復が目立ち、営業利益の前年差も大きく伸びています。ROEも10%台と同業の中では高く、資本効率の高さが特徴といえます。
AVANTIA:
戸建分譲住宅を主力としながら、不動産流通や土地開発など周辺事業にも展開している住宅会社です。売上規模は大手と比べると小さいものの、地域密着型の住宅供給を行っている点が特徴です。ROEは比較的低い水準にとどまっていますが、配当利回りの高さから配当株として注目されることもあります。
中期経営計画と成長戦略|決算資料から読み解く
中期経営計画の位置づけ
ファースト住建は、現在は数値目標を伴う明確な中期経営計画を公表していません。実際、2023年1月に公表した第1次中期経営計画は、戸建住宅市場の需給悪化などを背景に2024年に取り下げられています。
その後も住宅市場や建設コスト、金利環境などの変動が大きいことから、具体的な数値目標を伴う中期計画の開示は行われていないと説明されています。
そのため投資家が同社の成長戦略を考える際には、公開されている中期目標ではなく、決算説明資料や事業方針などから読み取れる「重点施策」をもとに判断する必要があります。
特に近年はM&Aによるグループ拡大が進んでいるため、連結範囲の変化や各事業の成長方向を確認することが重要になります。
決算資料から見える事業戦略
決算説明資料の「事業展開の基本方針」では、事業ごとに重点施策が整理されています。
主力の戸建分譲事業では、用地仕入れの強化、収益性の改善、在庫回転率の向上が重要なテーマとされています。
戸建分譲は土地の確保が事業の出発点になるため、優良な用地を安定して仕入れることが販売戸数の拡大につながります。また、販売スピードを高めて在庫回転率を向上させることで、資金効率の改善と利益率の維持を目指す方針です。
請負工事(注文住宅)については、安定した収益の確保が重視されています。注文住宅は分譲住宅と比べて利益率が高い傾向があり、グループ会社の強みを活用しながら事業の拡大を図ることで、グループ全体の収益力を高める狙いがあります。
また、マンション事業や特建事業では、賃貸収益の拡大やリノベーション販売の強化が掲げられています。新築分譲だけでなく、賃貸や中古物件の再生など複数の事業を組み合わせることで、景気変動に左右されにくい収益構造を構築しようとしています。
こうした方針は単なる計画にとどまらず、すでに実績にも表れ始めています。2025年10月期の売上構成を見ると、請負工事の売上高は前年の967百万円から6,248百万円へと大きく伸びており、前年比では500%以上の増加となっています。会社側も、この増収増益の背景として子会社KHCの業績寄与が大きいと説明しています。
M&A(KHC)の戦略的意味
近年の同社の成長戦略を語るうえで、KHCグループの取り込みは大きなポイントです。会社資料によると、KHCは注文住宅事業を得意とし、デザイン性の高い住宅やマルチブランド戦略に定評のある住宅会社です。2025年10月期には決算期変更の影響で13か月分の売上が計上され、売上高は約112億円となっています。
このM&Aの目的は単純な規模拡大だけではありません。むしろ、グループの事業構造を強化する「質の改善」に近い意味合いを持っています。
注文住宅事業を取り込むことで、利益率の高い事業の比率を高める狙いがあります。戸建分譲は販売戸数が多い一方で利益率はそれほど高くないため、注文住宅を組み合わせることでグループ全体の収益力を引き上げることが期待されています。
次に、商品企画やデザイン力の強化です。住宅市場では価格だけでなく、住宅性能やデザインなどの付加価値が重要になってきています。KHCのノウハウを取り込むことで、価格競争だけに依存しない商品力の強化を目指していると考えられます。
最後にグループ内での連携による効率化です。用地仕入れや建築、販売などの情報共有を進めることで、仕入れ力や施工力を高め、グループとしての総合力を強化することが狙いとされています。
ファースト住建の強み弱み|財務と事業構造に注目
強み
高い自己資本比率が示す財務の安定性
ファースト住建 の特徴の一つが、自己資本比率の高さです。過去5年間を見ると自己資本比率はおおむね 65〜72%台で推移しており、最新の2025年10月期でも 65.8%と高い水準を維持しています。
住宅会社は土地や完成物件などの在庫(販売用不動産)を多く抱えるビジネスであるため、景気後退時には資金繰りや評価損、金利負担などのリスクが同時に発生しやすいという特徴があります。その点で自己資本が厚い企業は、景気の変動に対して比較的耐久力があると考えられます。
具体的には、土地仕入れや建築コストの変動に対応しやすいこと、金利上昇局面でも財務リスクを抑えやすいこと、さらにM&A後の統合コストなどにも耐えやすいといったメリットがあります。こうした財務基盤の強さは、同社の大きな強みといえます。
事業ポートフォリオによる利益率の分散
同社の売上の大部分は戸建分譲住宅が占めていますが、利益構造を見ると複数の事業でバランスが取られています。
例えば2025年10月期の粗利率を見ると、戸建分譲は約13%台であるのに対し、請負工事(注文住宅)は 25%台、不動産賃貸は 45%台と、事業ごとに利益率が大きく異なります。
このように「売上の柱」と「利益率の柱」が必ずしも同じではない構造は、市場環境が厳しいときほど有効に働きます。戸建分譲で販売量を確保しながら、請負工事や賃貸事業が利益面を支える形になるためです。
特に近年は、子会社KHCの取り込みによって請負工事の売上が大きく伸びており、利益率の高い事業の比率が高まっている点は、同社の事業構造の強化につながっていると考えられます。
グループ化による施工力と商品力の強化
近年の同社の特徴として、グループ企業との連携による総合力の強化があります。決算資料では、KHCグループの子会社化によって、情報共有や共同仕入れを進め、グループ全体の事業効率を高める方針が示されています。
また、技能実習生の受け入れなどを通じて施工体制の強化も進めており、人手不足が続く建設業界の中で施工力を確保しようとしています。
さらにKHCはデザイン力やマルチブランド戦略に強みを持つ企業であり、そのノウハウを取り入れることで、グループ全体の商品企画力の向上も期待されています。住宅市場では価格競争だけでなく、住宅性能やデザインといった付加価値が重要になっているため、こうした「非価格競争力」の強化は合理的な戦略といえるでしょう。
弱み
主力事業が住宅市況に強く依存する構造
同社の売上の約8割は戸建分譲住宅が占めており、住宅市場の動向に大きく影響を受ける事業構造となっています。
住宅需要は金利や景気、所得環境などに左右されやすく、近年は新設住宅着工戸数も減少傾向にあります。こうした環境では住宅販売が伸びにくく、企業間の競争も激しくなります。
そのため今後は単純に販売戸数を増やすだけではなく、粗利率の維持や在庫回転率の向上、用地仕入れの精度など、経営の細かな部分での競争力が重要になります。住宅市場の成長が大きく見込みにくい中で、こうした要素の管理が業績を左右することになります。
資本効率(ROE)の低さ
もう一つの課題として挙げられるのが、資本効率の低さです。2025年10月期のROEは 3.53%であり、同業他社と比較するとやや低い水準となっています。
自己資本比率が高いことは財務の安定性という点では強みですが、その一方で、厚い自己資本に対して十分な利益が生み出されない場合、株主から見ると資本効率が低い企業と評価されやすくなります。
実際に同社のPBRは 0.38倍と低い水準にあり、市場が資産価値に対して収益力をやや低めに評価している可能性も考えられます。今後は利益成長や資本効率の改善が、株価評価の重要なポイントになるでしょう。
中期戦略の見えにくさ
同社は現在、数値目標を伴う中期経営計画を公表していません。過去には中期計画がありましたが、経営環境の不透明さを理由に取り下げられており、その後も具体的な中期目標は示されていない状況です。
このため株式市場では、企業の将来的な成長ストーリーがやや読みづらい面があります。中長期の売上目標や利益目標が示されていない場合、投資家が企業価値を評価する際の材料が少なくなり、株価評価が分かれやすくなる傾向があります。
もっとも、決算資料では用地仕入れの強化や収益性改善、在庫回転率の向上、賃貸収益の拡大などの具体的な施策は示されています。今後は、KHC統合による注文住宅事業の成長や利益率の改善などを連結ベースでどこまで示せるかが、企業評価を左右するポイントになりそうです。
まとめ|割安株か、それとも成長性に課題があるのか
ここまで ファースト住建 の事業内容や業界環境、業績推移、競合比較などを整理してきました。
まず印象的なのは、財務の安定性の高さです。自己資本比率は長年60〜70%台を維持しており、住宅会社としてはかなり保守的な財務体質といえます。住宅業界は景気や金利の影響を受けやすく、在庫を抱えるビジネスでもあるため、こうした財務の余力は大きな安心材料になります。
一方で、株式市場からの評価はやや厳しく、PBRは0.3倍台と低い水準にとどまっています。その背景として考えられるのが、資本効率(ROE)の低さです。自己資本が厚いことは強みですが、その資本に対して十分な利益が乗らない場合、株式市場では割安な評価が続きやすくなります。
また、事業構造を見ると売上の約8割を戸建分譲が占めており、住宅市況の影響を受けやすい点も特徴です。住宅市場は金利や景気の影響を受けやすく、近年は新設住宅着工戸数も減少傾向にあります。そのため、単純な販売戸数の拡大だけでなく、粗利率や在庫回転率、用地仕入れの精度といった経営の細かな部分が重要になります。
ただし、今後の注目点は、KHC統合による注文住宅事業の利益貢献がどこまで数字に表れてくるかです。
個人的な印象としては、「非常に安定した財務を持つ一方で、成長ストーリーがやや見えにくい企業」という印象です。中期経営計画が公表されていないこともあり、投資家としては今後の方向性を読み取りにくい部分があります。
ただ、PBRが低いということは、市場が企業の将来性や収益力を慎重に見ているとも言えます。今後、注文住宅事業の利益貢献や全体の利益率改善が数字として見えてくれば、評価が見直される余地もありそうです。
住宅市場自体は大きく成長する業界とは言いにくいですが、その中でも販売戸数の維持と収益性の改善をどこまで両立できるのか。今後の決算を見ながら、事業構造の変化や利益率の動きを引き続き確認していきたいところです。


投資判断は、最終的にはご自身でお願いいたします。
出典・参考資料
・ファースト住建 公式ホームページ
https://www.f-juken.co.jp/
・ファースト住建 IR情報
https://www.f-juken.co.jp/ir/
・決算説明資料(2025年10月期)
https://www.f-juken.co.jp/ir/pdf/kessan_siryou_R07.pdf
・株主メモ・株主優待
https://www.f-juken.co.jp/ir/memo.html
・有価証券報告書(EDINET)
https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/
・IR BANK
https://irbank.net/E03992
・国土交通省 住宅着工統計
https://www.mlit.go.jp/
・日本銀行 企業物価指数
https://www.boj.or.jp/
・日本建設業連合会 資料
https://www.nikkenren.com/

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