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トランプ関税での重要テーマ自動車株、そのいぶし銀、小野測器[6858]の話

7月23日、テレビなどの一部報道で、朝からトランプ関税が15%に引き下げられるという見方が報じられました。自動車株が軒並み10%以上の上昇を見せ、いいなと見送ったあの日から今日まで関税については結局決まらない日が続いています。今回はそんな中から資産はしっかりあるけど低PBRという小野測器について見ていこうと思います。結論から言うと、トランプ関税のはっきりしていない今の状況では結局、今年の決算はいいか悪いかわかりません。そもそも決算がいいか悪いかなんて見てみないとわからないですけど、、小野測器の企業を調べて、将来性、成長性を検討していきたいと思います。

そもそもなぜこの会社が気になったかというと、トランプ関税がニュースに出た日に、今期の予想を黒字から赤字に修正したニュースを見たからです。果たして、この修正はトランプ関税の影響を27.5%で織り込んで赤字で出されたのか、そもそも検討違いであまり関係ないのか、関税の影響もないのか、そのあたりも含めて調べたいと思います。

小野測器とはどんな企業なのか(企業概要)

小野測器[6858]は、日本の計測機器メーカーで、主にトヨタや本田などの自動車や電子機器向けに回転・振動の計測装置や各種試験機を製造しています。1944年の創業以来、精密測定の技術を磨き、音や振動、回転、非接触での変位計測といった〈測る〉分野で専門性を発揮してきました。

市場規模は大きくありませんが、特定分野に強い「ニッチトップ企業」として存在感を持っています。近年は電気自動車の普及や騒音規制の強化によって計測需要が増加し、事業拡大のチャンスがうかがえます。一方で、業績の伸び悩みや海外展開の遅れといった課題も抱えているようです。

トランプ関税が小野測器に与える影響

今の現状をまとめると、トランプ政権は「相互主義関税」を進めており、4月2日には、一部メディアで国名と率が列挙された“Liberation Day”と呼ばれる発表があり世界に衝撃を与えました。ここから各国と交渉するとトランプ氏が語り7月、8月の交渉に突入します。国別に一律15%などの関税率を設定する大統領令を7月末〜8月初に相次いで出していました。

日本については、既存関税の上に15%を“二重に載せる”扱いになったとの解釈が生まれ混乱が生まれました。8月7日、日本側交渉団は米側が誤りを修正し過徴収は返金すると約束したと発表し、自動車関税は27.5%→15%へ引き下げ方向という報道も出でいますが、現時点ではまだ、正式な合意文章などは出されておらず、今後も確認が必要です。

小野測器への関税のインパクトは、米国に現地子会社(Ono Sokki Technology Inc.)があり、現地販売やサポートを通じて取引しているため、一定程度緩和されると考えられる。輸出比率は非開示だが、日本からの直接輸出に比べれば関税の影響は限定的です。

ただし、間接的な影響として、関税によって自動車や電子機器のサプライチェーン全体のコストが上昇すると、顧客である自動車メーカーや部品メーカーが投資や研究開発費を抑制し、その結果、最近力を入れている試験装置や計測機器の購入が後ろ倒しになるリスクがあります。為替変動や物流混乱などが重なると、見積価格や納期の調整も難しくなる可能性もありそうです。

そうなると小野測器は受注の計上時期が業績に効くため、タイミングのズレが短期的な数字に影響しやすく、今回の赤字修正に繋がっていったという所でしょうか。

業績、財務指標の推移

次に企業の指標を見ていきます。過去五年の個人的に主要と思う業績の推移です。

年度売上高 (百万円)経常利益 (百万円)自己資本比率 (%)ROE(会社開示, %)PBR(倍)
202011,841-52367.30.41
20219,852-68564.10.41
202210,92821162.01.90.31
202311,53920465.83.30.34
202411,80421273.39.90.38
2025予想13,8006503.570.38*

小野測器(6858)の業績推移を見ると、2020〜2021年は赤字が続き、売上も100億円を割り込む低迷期がありましたが、2022年以降は黒字転換し、2024年には自己資本比率73.3%、ROE9.9%まで改善していました。しかし、2024年の純利益急増は横浜本社ビルの売却益による一時的な特別利益が、通期ROE上昇の主因となりました。ただ、営業利益や経常利益の改善幅は限定的だったため、本業の収益力は依然として安定していません。PBRは0.3〜0.4倍台前後の低位で推移しており、資産価値に比べ株価は割安な水準が続いています。

2025年7月23日には、2025年12月期の中間(1〜6月)業績予想を下方修正されました。経常利益は当初4億2,000万円の黒字見通しから、3,800万円の赤字へ転落。営業利益も8,000万円の赤字に修正されました。売上高は63億4,300万円(前年同期比+24.8%)と大きく伸びたものの、前年同期の赤字(4億5,700万円)からの黒字化には至らず、当期純利益は1億2,100万円の赤字となりました。

それでも通期の経常利益予想(6億5,000万円)は据え置かれており、売上高138億円、営業利益6億円、当期純利益5億5,000万円(EPS52.8円)を見込んでいます。中間期の赤字は受注案件の納入時期が後ろ倒しに加え、原材料価格の高騰が影響しています。この受注残は下期に計上予定ですが、納期遅延が長期化すれば業績未達成のリスクとなります。今後の焦点は、この受注残の年度内の計画通りの消化と、原材料費高騰への価格転嫁がどこまで進むがポイントとなりそうです。

企業内容と売上構成

小野測器[6858]は、資本金は約71億円、従業員数は連結で651人(2024年度時点)。本社は横浜市にあり、宇都宮に技術開発・生産拠点を保有しています。国内に2社の子会社、海外では米国・タイ・インド・中国に現地法人を展開し、販売・サービス体制をグローバルに整えています。

小野測器の事業は、大きく以下の2つの領域に分かれます。計測機器事業と特注試験装置・サービス事業です。計測機器事業では工場や研究施設で使用される汎用的な計測機器を製造・販売しており、高精度なセンシング技術(物の動きや音、振動などを、とても正確に計り取る技術)を必要とする分野で高い評価を得ており、国内外の研究機関や製造業で幅広く使われています。

特注試験装置・サービスセグメントでは顧客の要望に合わせた受注生産型の試験装置や関連サービスを提供しています。また、装置の保守・校正や、クラウド型音データ解析サービス「Sound One」、EVベンチマーキングレポート販売など、ハードとソフトを組み合わせた総合ソリューションも併せて展開しています。

(1)計測機器セグメント(標準製品)
・回転計測:デジタル回転計、回転数検出器

・トルク計測:トルクメータ、回転トルク計

・音響・振動計測:音響振動計、加速度センサー

・変位計測:寸法変位計、非接触変位センサー

・自動車計測機器:燃料消費計、シャシダイナモ

(2) 特注試験装置・サービスセグメント
・エンジン耐久試験装置

・EVモーター性能試験装置

・実車走行騒音測定システム

・データ解析ソフトウェア

事業のシェア割合については、2024年度の売上の約6割は自動車業界向けで、その内訳は四輪車メーカーが35%、二輪メーカーが16%、自動車部品メーカーが13%を占めています。製品別では標準計測機器が約38%、特注試験装置やサービスが約62%となっており、自動車産業の研究開発案件への依存度が高く、景気や業界の投資動向によって業績が左右されやすい構造です。

2024年度 売上構成(業界別)

四輪車メーカー:35%
二輪メーカー:16%
自動車部品メーカー:13%
その他:36%

※ 自動車業界合計は約60%。

2024年度 売上構成(製品別)

標準計測機器:38%
特注試験装置・サービス:62%
2024年度の売上構成:自動車業界向けは約60%(四輪35%、二輪16%、自動車部品13%、その他36%)。製品別では標準計測機器38%、特注試験装置・サービス62%。

研究開発とDXへの取り組み
小野測器は売上の約9〜10%を研究開発費に投資しています。その中には基盤となる音響・振動・回転検出の技術強化に加え、次世代の需要に向けて以下の施策を進めており、IoT対応の計測機器、ビッグデータ解析やクラウドサービスの提供などがあります。

具体的には、新製品では無線電圧計測モジュール「WV-1100」や角度軸信号計測ソフト「ExAngle」など、データサービス事業ではEV市場向けベンチマーキングレポートやクラウド解析サービスなどです。

同社は「計測機器メーカーからデータサービス企業への転換」を中期方針として掲げ、ハードの販売だけでなくデータ解析や情報提供までを含む付加価値の高いビジネスモデルを目指しています。

競合他社との比較と市場のポジション

国内外に規模の大きな企業が数多く存在する計測機器業界の中で、小野測器は小規模プレーヤーです。しかし、回転・振動計測などのニッチ分野で高い技術力を発揮しています。そんな小野測器ですが売上規模や利益率では競合他社に大きく劣ります。ここでは、堀場製作所、リオン、海外からHBK(Bruel&Kjaer)を比較して小野測器の企業感を見ていきます。

・堀場製作所は売上3,000億円を超え、自動車計測や半導体関連など5つの事業を展開する総合計測機器メーカーで、世界的にもトップクラスの地位を確立しています。

・HBKは騒音・振動計測の分野で世界標準ともいえるブランド力を持ち、自動車だけでなく航空宇宙や産業機械分野にも高性能機器を供給しています。製品性能・ブランド力・販売網の広さでは、小野測器をはるかに上回ります。

・リオンは補聴器や聴覚検査装置が主力で、安定した収益基盤を持っています。音響・振動計測機器も手がけていますが、小野測器と直接ぶつかる分野は一部に限られます。場合によっては、国内市場では顧客を取り合う場面も在りうるといった所でしょうか。

このように、小野測器は売上規模・利益率ともに劣勢ですが、その代わりに高度なニッチ技術を武器に特定分野での存在感を発揮しています。大手が手を出しにくい細分化された市場や、顧客ごとにカスタマイズが必要な試験装置などでは、機動力と柔軟な対応力が評価されています。今後は、EVや自動運転の普及、工場の自動化・DX化といった成長分野への対応を強化できるかが競争力の鍵となりそうです。また、海外売上比率を引き上げることができれば、規模の小ささを補い、安定的な成長への道が開ける可能性もあります。

小野測器と主要競合の比較表 (8月10日調べ)

企業名主な事業売上高経常利益率時価総額予想PBR
小野測器 (6858)回転・振動・トルク計測機器、特注試験装置130.6億円3.48%約71.1億円0.38倍
リオン (6823)補聴器、騒音・振動計測器281.5億円約15.3%約302億円1.05倍
堀場製作所 (6856)自動車排ガス分析、半導体計測など3,189.9億円約15%約4,299億円1.5倍
HBK
(デンマーク/英国)
騒音・振動測定器、NVH試験装置約1,400億円 (推定)2桁台親会社Spectris:約45億ポンド

計測機器業界の将来性と小野測器の中期計画

今後の計測機器業界は、技術面で見るとEVや自動運転技術の進化、工場の自動化・DX化、また法律面で見ても騒音・振動規制の強化などを背景に需要が拡大するのではないかと考えられます。特にEV分野では、モーターやインバータの回転数・トルク特性の高精度評価、バッテリーの安全性確認、車内の騒音・振動低減など、新たな計測ニーズが次々と生まれています。

さらに、各国で法理面の環境規制が強化され、実車走行騒音(PMPD)試験や排ガス分析の重要性が高まり、試験装置の高度化が行われています。
また、IoTやクラウドの普及により、計測データを遠隔で監視・解析するサービス需要も拡大しており、メーカーは従来の装置販売からデータサービス提供へとビジネスモデルを転換する動きが加速しています。

そんな中、中期経営計画では「Challenge StageⅣ」(2025~2027年)を掲げており、単なる計測機器メーカーから「顧客と共に課題を解決するソリューション企業」への転換を目指しています。内容を見ると主な数値目標として、売上145億円、営業利益10億円、ROE6%以上としています。そのための主な施策として4つを成長戦略が書かれています。

1 EV・自動運転対応製品の強化

  • EVモーター試験装置や水素エンジン解析ソフト、実機と仮想環境を連携した試験システムを投入。
  • EV性能評価データの販売など、装置+情報ビジネスへ拡大。

2 DX推進

  • クラウド計測サービス「Sound One」、無線センサーなどを展開。
  • 装置売り切り型からサブスク型ビジネスへ移行。

3 海外展開の強化

  • 北米・アジア拠点を基盤に、海外売上比率のさらなる上昇。
  • 中国・インドなど成長市場向けに低価格モデルや現地サービスを整備。

4 収益構造の改善

  • 製品共通化によるコスト削減、生産効率向上、サービス収益拡大。
  • 旧本社売却資金を研究開発やDX投資に活用。

成長戦略をみても独自技術と財務基盤の強さを活かしてEV・DX分野に挑む一方で、規模の小ささと自動車依存、海外展開の遅れが課題です。この課題に取り組み、中期計画が達成できれば、利益率改善と株価再評価の可能性がありますが、トランプ関税の影響も大きい自動車業界、計測機器業界の競合や市場変動への対応力が成長の鍵となるでしょう。

投資をする上でのまとめ

小野測器は財務基盤は堅実で、高い自己資本比率とネットキャッシュを保有しており、研究開発投資を安定的に継続できる点は安心材料です。一方で、売上規模や利益率は競合に比べて小さく、景気変動や部品調達遅延、原材料価格の上昇といった外部要因によって業績が振れやすい弱点があります。実際に2025年中間期には赤字転落と業績予想の下方修正があり、市場は一時的に失望売りが加速しました。しかし、下落幅は現在5%程度となっており黒字予想から赤字予想に修正されたインパクトに比べると下落幅は規模の割に限定的でした。現状の時価総額は純資産の約0.4倍にとどまる点が原因としては大きいとは思いますが、資産価値から見た割安感は大きいと言える状況です。

今後は、EV、自動運転、DX分野への対応強化、海外市場でのシェア拡大、そしてデータサービス型ビジネスモデルへの転換が成長の鍵となります。中期経営計画「Challenge StageⅣ」で掲げる売上145億円・営業利益10億円・ROE6%以上の目標を達成できれば、株価の再評価の可能性は十分あるでしょう。

こうした観点からも小野測器は短期的な業績変動リスクはあるものの、中長期で技術力と成長性に期待したいバリュー株といえます。今後は自動車業界の動向や為替、部品調達リスク、競合の技術革新を注視しつつ、四半期ごとの受注・利益を丁寧に追うことで、期待どおりに推移するのか見守っていきます。

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